第40話・家族の力
「りょうがー!!」
「おぬわぁっと!?」
空から降ってきた長女を慌てて受け止める。
腕に力が入らないせいでどちらかと言えばクッションになった形になり、おかげで二人して倒れこんでしまった。
「えへへ、ありがとう」
胸の上でフレアが微笑む。
「どうしてフレアがここに……?」
と、ゼファー。
彼女は傷付いた手のひらを擦りながら信じられないといった表情をしていた。
「そんなの決まってるのです」
今度は後ろから声がした。
こちらもまた全裸だった。
「飛び出したバカ妹と身勝手なアホ保護者を助けに来たのですよ」
「ストゥー……」
えっへんと胸を張る次女。
「いや、裸の奴に言われてもなー」
「助けられたくせにその言い草ァ! これだから人間は!」
「そうだよ。ドラゴンになったらふくやぶれちゃうもん。しかたないよ!」
龍雅の上から
大体龍雅もまたセレスの力で見た目を誤魔化しているだけに、別段突っ込める立場でもない。
「はい。
起き上がると、唐突にストゥーリアが後ろ手に持っていた服を渡して来る。
ご丁寧にパンツまであった。
「え、でも――」
竜の姿になったら服が破れてしまう。
そんなことは次女も理解しているようで、三女の言葉を遮るように告げた。
「私達は人間なのです。人間は服を着るのです」
「この体じゃあいつには」
「かてるよ! みんないっしょなら!」
にこやかに長女が
(はっ。まったくこいつらは。本当さぁ)
全く動かせる気がしなかった途端に体が軽くなった。
同時に、まとわりついていた激痛も何処かに吹き飛んでしまっていることに龍雅は気付いた。
「怖いのです。服の上から服を着ている変人がいるのです」
「本当だ。これだから人間は変」
「あははは! りょうがへんなのー!」
「うるさいうるさい! 黙って着なさい!」
まるで緊張感の無い。
すっかり調子を崩される。
まだ戦いの最中だというのに雰囲気が
「貴様ら! 我に歯向かうとは……許さん、許さんぞ!」
全員服を着たところでようやくニーグが体勢を元に戻していた。
「フレアに蹴られてこけた奴に言われてもなのです」
「もう
「にらんだってこわくないもん!」
子供達が思い思いの感情を吐く。
頼もしい。
まだまだ小さい子供だというのに、確実に龍雅よりも前を向いていた。
(こりゃ負けてられないな)
背筋を伸ばし敵を正面に
家族の温かさに甘えるのは一旦終わり。
ここからは親として成すべきことを成す。
(力が欲しい。ニーグを打ち倒すための力が。家族を守れるだけの力が!)
深呼吸を挟み、心の中に呼び掛ける。
刹那──、
足が、
手が、
腹が、
胸が、
心が、
微かにざわめいた。
(セレス! 俺に力を貸せ!)
全力で体内で
物体であるうちはダメ。
意識出来るようでは馴染んだとは言えない。
(もっともっともっと。もっと、もっとだ!!)
あやふやな塊をはっきりと形にする。
完全にセレスの能力を己のものとするために、彼女から貰ったもの全てを認知させる。
更にそこから溶け込ませる。
頭から足先まで。
血液を巡らせるように。
(俺は、俺はっ!!)
はっきりと頭の中でセレスを描く。
そして誓う。
(お前の代わりに
瞬間、胸の中にあった固形物が完全になくなった気がした。
同時に想像のセレスから笑みが零れ、
霧散した。
(さよなら、セレス)
一度瞬きを挟む。
すると再び世界を目にした時には、何もかもが鮮明に映った。
倒すべき相手も。
護るべき子供達も。
全てだ。
「行くぞ、ドラゴン」
「来い、
第二ラウンドの掛け声をかわした途端、地面が爆発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます