コドモドラゴンの育て方
エプソン
プロローグ①・ボーイミーツドラゴン
これでようやく楽になれる。
あとは踏み台を蹴り飛ばすだけ。
そうすればあっという間にあの世に逝けることだろう。
後悔はない。
それどころかやっと死ねることに喜びすら感じている。
生きることは辛いことの連続だ。
こんなにもしんどい思いをして生き長らえるくらいなら、死んだ方がマシ。
それが龍雅が導き出した答えだった。
まだ18歳という若さでありながら、
人生に、
世界に、
そして運命に絶望していた。
(母さんには怒られるだろうけど、仕方無いよな。あの世で再会したら謝ろう)
先日他界した最愛の母の顔を浮かべながら、龍雅は体重を支えていた踏み台を思い切り蹴り飛ばした。
稲妻のような衝撃が頭に走り、龍雅の意識は刈り取られた。
……。
…………。
………………。
……………………。
(んっ)
意識が一瞬途切れた後、視界に飛び込んできたのは草原だった。
周囲を囲む木々を除けば何も無い。
サッカーが出来そうなほどの無駄にだだっ広い平原があるだけだ。
「意外と現世と変わらないな」
月明かりを頼りに辺りを見渡してみるものの、人工物は一切確認出来ない。
しかし死を祝福するような綺麗な花畑があるわけでも、天使が降りてきそうな神秘的な祭壇も無い。
想像していた死後の世界に比べ、ここは少々簡素だった。
「本当にここは死後の世界なのか?」
「違いますけど」
「うわぁ!?」
独り言に対して思わぬ角度からレスポンスが入り、体が大きく跳ねる。
反射的に胸を抑え声がした方向に目をやると、視線の先には巨大な闇がそびえ立っていた。
「悪魔っ!?」
「悪魔とは失礼な」
何者かが言い放った瞬間、強い風が吹く。
するとスポットライトが点灯したかのように、空から柔らかな光が草原に差し込んできた。
徐々に正体が明るみに出ていく闇。
内容が半分ほど判明出来た頃には、龍雅の目は大きく見開いていた。
「ドラゴンです」
龍雅の正面。
月明かりの祝福に照らされた光の中、巨大で優美な竜が鎮座していた。
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