くっころから始まる夢の島
黄昏のy
第1話 くっころから始まる夢の島
「――くっ、殺せ!」
戦い追い詰めた人間の女騎士は皆、いつもこんなことを言う。
『生き恥を
オークの戦士オーマイガは、いつもの様に困り果て
(とりあえず、金になるものをもらっとくか)
オーマイガは、命の代わりにお金になる物をもらうことにした。地べたで座り込む女騎士ににじりよる。
◆
「や、やめろぉ! そんな
女騎士は何を勘違いしているのか、
まず、剣や盾を回収する。次に鎧だ。立派な銀鎧だから高値で売れるだろう。オーマイガは
「わ、私を手ごめにする気だな!? そ、そうはさせんぞ!」
(うるさいメスだなぁ)
ギャアギャア
「ダ、ダメだ! こんなところで! せめて部屋の中で――」
女騎士の顔が真っ赤だ。部屋の中でなら大人しく渡してくれるのだろうか。別にこのまま奪うだけだけど。
だが、そんな時――
◆
――がさっ
近くの草むらで
「「「あ……」」」
三者三様の
新たに現れたのは、人間の少年だった。オーマイガと女騎士を見つめて戸惑っている。
(あ~……。面倒なことになった)
ひ弱そうな少年だ。すぐに倒してしまおうか? オーマイガは、腰に
◆
「ま、待ってください! 僕はあなたの“味方”です!!」
少年が両手を
(ミカタ? ミカタってオレの“味方”ってことか? 意味がわからん……)
オーマイガは考えるのが面倒になり、こん棒を振りかぶった。そして勢いよく振り下ろす。
「待ってください! このとーりです!!」
少年の頭を狙ったこん棒は空を切る。少年が急に土下座したせいでかわされたのだ。その動きは、オーマイガには修練を積んだ達人の動きに見えた。
(こいつ……できるっ!)
オーマイガはこの少年に対する警戒レベルを引き上げた。ジリジリと油断無くにじり寄る。
「待ってくださいって! 取り引きっ! 取り引きがあるんですっ!!」
少年は土下座しながら拝みだした。しかも涙目だ。その必死さから、とても演技とは思えなかった。
油断ならない相手と戦わなくていいならそうしたい。保守的なオーマイガは、少年の言う取り引きとやらを聞いてみることにした。
◆
「――んん~っ!!」
「はいはい。静かにね」
少年は手慣れた手つきで女騎士をヒモで縛る。口には猿ぐつわをかませている。女騎士は信じられないものを見る目で少年を
オーマイガは二人の近くに座り込み、黙ってその様子を見張っていた。
「これでよし……っと! ――お待たせしました!」
少年は女騎士を縛り終えると
「自己紹介が遅れました。僕は“くっころ商会”の会長、ネルです。どうぞお見知りおきを」
「オーマイガ」
オーマイガは
「オーマイガさん。どうぞよろしくお願いしますね。――さて、取り引きの内容についてお話しますね? 実は我が商会では新しい事業として――」
ネルは取引内容について
◆
ネルの話をまとめるとこうだ。
①女騎士を集めている。
②ただの女騎士じゃダメ。「くっ、殺せ!」と言う女騎士限定。意味が合ってれば、別の言葉でも可。
③女騎士は、少年が最近購入した無人島に送る。
④女騎士にはそこで働いてもらう。――そこは夢の島だ!
⑤女騎士を捕らえて送ってくれたら報酬を渡す。“くっころ度”が高い程、報酬は高くなる。
(…………)
――つまり、人身売買の片棒をかつげと?
オーマイガは
人間は同族で商売をする奇妙な生き物だ。“奴隷商”という、オークには無い商売がまかり通っているのだ。
それが奴隷じゃなく特殊な女騎士になっただけなのだろう。オーマイガはそう考え納得することにした。
――それにしても、“くっころ度”って何だ?
「どうでしょう? 取引を受けてくださいますか?」
オーマイガは、とりあえず少年の手を取るのだった。
後世にまで伝わる“くっころ島”は、こうして誕生するのだった。
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