第11話 くっころ喫茶 練習②カレン
――くっころ喫茶――
「次は私の番だな!」
長身――と言ってもオーマイガより低いが――のカレンが自ら進み出た。その顔は不敵な笑みをたたえ、自信に満ち満ちている。
「ご主人様、お食事はいかがなさいますか?」
「えっと……じゃあこの特製オムレツで」
接客態度も申し分ない。「かしこまりました、少々お待ちくださいませ♪」と答えると、いつの間にか復活しているハンネスに注文を伝える。やがて料理が出来上がり、カレンがトレイにのせて運んできた。そしてオーマイガに配膳し「どうぞごゆっくり」と言って席を外そうとする。
オーマイガには完璧な所作に思えた。だが、そうは問屋が――ネルが許さない。
「カレン。ケチャップいってみようか」
「ハート型だったか? かまわんぞ? ――ご主人様、少しお手元失礼しますね?」
カレンはトマトケチャップを上手にかけていく。見事なハート型だった。他のメイド達から感嘆の吐息がもれ聞こえてくる。
しかし、ネルの要求はさらに高度になる。
「じゃ、次は美味しくなるおまじないね?」
「――――は?」
ネルの言葉の意味がわからなかったのだろう。カレンが、鳩が豆鉄砲をくらったような唖然とした表情を見せる。オーマイガにだってよくわからない。――おまじない?
「わからないか……。じゃあ、仕方無い。お手本を見せよう」
こほんと咳払いし、ネルが前に出る。
「ご主人様!♪ 今からネルが~お料理が美味しくなるおまじないをかけちゃいます! ――『おいしくな~れ! モエモエきゅん!!♪』」
両手でハート型を作り、そこから片目を覗かせウィンク。そしてハート型を保ったまま手を動かし大きなハートを描いた。
それを見て顔を真っ赤にしたカレンが叫ぶ。
「そんなんできるか!!」
「大丈夫、慣れだって。カレン、君ならできる。――それともアレアレ? 口だけなのかなぁ?」
「――くっ! わ、わかった! だけど一度きりだからな!?」
ネルに挑発されたカレンがゴクリとのどを鳴らして前に出た。
震える両手でハート型を作る。オーマイガはなんとなく目が離せなくなりガン見する。
「う、ぅう~……っ! ――お、おいしくな~れ! モエモエきゅん! ――ダメだ、実家に帰りたい!」
なんとかネルの真似をしてこなしたカレンだったが、恥ずかし過ぎたようで真っ赤になった顔を両手でおおい逃げ出してしまった。
(いい……)
「ふふふ……オーマイガさんもだいぶわかってきたねぇ?」
自信に満ち満ちていたカレンが恥じらう姿を見てなんとなくゾクゾクしてしまったオーマイガだったが、ネルからの生暖かい視線を受けて気を取り直す。
(オ、オレは普通だ!)
そんなオーマイガにおかないなしに、次のメイドが前に出てきた。
「さっさと済ませる。邪魔はしないで」
メガネ金髪ボブカット巨乳メイドのサラだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます