第19話 開店!

――くっころ喫茶――



「「「「「いらっしゃいませ~!♪」」」」」


 メイド達の元気のいいあいさつが来客を歓迎する。


 ネルが連れてきた客は全部で6人だった。予定よりも2人多い。いや、そんなことよりも――


(なんであの女が!?)


 ハンネスもバイオレットのことは知っている。いや、この国では有名過ぎるのだ。異常とも言える事態にネルの方をうかがうが、ネルは笑顔で客をテーブルに2人ずつ通していく。


 バイオレットと眼光鋭い男は最奥に、他の4人は出入口近くに2人、中央付近に2人だ。どのテーブルも作りは変わらない。


 メイド達は直ぐ様お冷やをテーブルに持っていった。メニュー表は各テーブルに備え付けてある。


 ネルがカウンターの方にくるのを見るとハンネスは急ぎ足で近寄り耳打ちした。


(ネル! なんであの女が!?)

(どこからか情報を仕入れたらしい。断って敵対行動を取られる方がマズイ。なんとかやり過ごすしかない)


 ネルが真顔でそう答えるのを見てハンネスも悟った。どうやら乗り切るしかないのだと。気になるのはもう一点ある。


(あの女の向かいの男は?)

(ああ、ハンネスは初めてか。商人のホセだよ)

(あの豪商の!? ヤバいことに手を出してるとも――)

(バイオレットと同じさ。どこからか話を聞き付けてきた。こっちも怒らせたらヤバいからそのつもりで)


 ハンネスの手がふるえる。どうやら、知らぬ間に難易度が爆上げされていたようだ。ネルが気遣わしげにハンネスの肩に手を置いた。


(僕も全力でフォローする。だから頑張ろう)


 そうこうしている間に、早速トラブルのようだ。バイオレット達の席で注文を受け付けているアリシアが何やら謝っている。


「も、申し訳ございません。当店はお酒は――」

「でも私飲みたいの。ネル、ちょっと来て」


 バイオレットの手招きにネルは心中で特大のため息をつきながら、急ぎ足でテーブルに向かった。

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