第8話 コテージ(女用)作り
ぶっ倒れたオーマイガは起きて身体に異常がないことを確かめたがネルに大事を取るよう言われ、コテージで一晩を過ごした。
――翌日。
オーマイガは起床してテーブルに用意されていた朝食を食べ終えると外に出た。男達は皆一緒のコテージで寝ていたはずなのに、いつの間にかもう働いていた。
「おはよう」
「あ、おはようございます、オーマイガさん!」
オーマイガを見つけ嬉しそうにかけよってくるネル。
「飯、旨かった、ありがとう」
「いえいえそんな! お得意様はだいじにしないと! なので!」
ネルが言うにはハンネスが炊事係なのだそうだ。なるほど。確かにあのくっころ喫茶にもよくいるしな、とオーマイガは納得しつつネルがいた場所の方を見つめる。
そこでは、クルトンとユートがおっさんの指示の元、大工仕事をしているようだった。大きな木材をひーこら言いながら汗水たらして運んでいる。
「手伝う」
「そんな! 悪いですよ!」
「助けてもらった礼がしたい」
オーマイガもネル共々加勢し大工仕事を皆でこなした。
◆
「いや~! さすがはオーマイガさん! ありがとうございます!」
「いや、指示がよかった。流石は――人間だな」
「――オーマイガさん。ジャック、ジャックね」
「う、うん。ジャックの指示がよかったからだ」
「そう言われると頑張ったかいがあるってもんです!」
オーマイガがおっさんの名前を知らず人間呼ばわりするとすかさずネルがフォローする。
実はこのジャック、初めてのくっころ女騎士アリシアを島に招いた時にここで働いてもらうよう土下座をした男四人衆の一人だった。そう言われてみればとオーマイガもようやく思い出せた。
「ところで、ここに家を建ててどうするんだ?」
コテージの大部屋にはベッドが左右5個ずつの計10個はあったはず。その他にも、オーマイガが目覚めた個室だってあった。
オーマイガは単に疑問に思い聞いただけなのだが、ネルをはじめ、クルトン、ユート、ジャックが急に泣き出した。
「な、なんだ!?」
「それがね……アリシア達が僕達と一緒のコテージで寝るのは嫌だってワガママを言うんだ!」
「別の場所で暮らすのを労働条件に加えられてしまいまして……」
「泣きたくなってくるよ。一緒に住みたいのに!」
「右に同じ」
こんな発情期のオス達と一緒にメスが寝泊まりしたらどうなるかくらいオーマイガにもわかる。なるほどとうなずく。
「なに納得してんだよオーマイガさん!」
ネルが泣きながら怒ってくる。ほんとに忙しい。
「い、いや……それでかと思ってな。今まであのメス達はどこで寝てたんだ?」
「くっころ喫茶だよもちろん。奥に従業員用の控え室があって、そこにベッドを運びこまされてね。けど、そこも手狭になってきたから、こうしてあの子達用のコテージを作ってるってわけ」
なるほど、理解した。随分大きなコテージを離れた場所に作るんだなと思ってたらそういうことだったのか。
「しかも! 個室を要求してきたんだぜ!? 僕達だって大部屋で寝泊まりしてるってのに!」
「むしろベッドを捨てて大部屋にでっかい布団をしいてあの子達と雑魚寝をしたかったよ僕は……!」
「いや、だが、コテージの個室なら逆に夜這いしやすいのでは……?」
クルトン、ユート、ジャックがそれぞれ思いの丈を吐き出す。ジャックに至っては人間社会の犯罪に該当するだろう。
(そうか……だからこその無人島か)
オーマイガは妙に納得してしまった。法やルールを無視して自由に生きられたらそりゃあ楽しいだろうと。オークの世界にも人間程面倒なものではないが、もめないようしきたりはあるのでその気持ちはよくわかった。
「じゃ! 早速アリシア達を呼んでくるよ!」
いつの間にか機嫌を取り戻したネルが会長でありながら真っ先にくっころ喫茶に向けて駆け出すのだった。
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