第51話 メルキドに ③
「こんな豪雨の中にいたら風邪を引く。――さ、早く」
クラウディアの伸ばした手をリーンが取る。クラウディアは勢いよく引き上げると自分の後ろに座らせた。
「うわわ! これってユニコーン!? はじめて見た!!」
「北方の国に生息するフロストユニコーンだが、話は後にしよう。――さ、君も」
「は、はい!」
テッドにも手がのばされた。クラウディアの柔らかな笑みにドギマギしながらもその手を取ろうとするテッドだったが、
――フロストユニコーン、フューリアの後ろ蹴りが繰り出された。
「うひゃあ!?」
「フューリア! 緊急事態だと言っただろう!! 処女以外乗せたくないなどワガママを言うな!!」
クラウディアが叱るとフューリアはぶるると悲しげに鼻を鳴らし、大人しくなった。
「すまなかったな。どうも気性が荒くてな」
「い、いえいえ!」
クラウディアの手を取り引き上げられるテッド。今度はフューリアからの拒絶は無かった。リーンの後ろに座らされる。
「なんで嬉しそうなのよ? ――あ、この人にデレてんの?」
「ち、違うって!」
肩越しに振り向きムスッとするリーン。少しはそれもあるかもしれないが、自分が嬉しいのはそんなことじゃない。
先程クラウディアが言ったことが本当なら――
(はぁ~よかったぁ! リーンがまだ誰のモノにもなってなくて!!)
田舎では大人気で男子からもモテモテだったリーン。心のどこかで、誰かとデキてたりしないか心配だったのだ。それを直接リーンに聞けないのがなんとも情けないが。
処女好きのユニコーンが何の抵抗もなくリーンを乗せた。つまりはそういうことなのだ! テッドは処女厨ではないが、ことリーンのことに関しては独占欲を持っていた。恋する少年なのだ。
「君達はどこを目指していた?」
「メルキドの町です」
「なんだ、ならそれ程距離もない。私も向かっていたところだ、ちょうどいい」
テッドをよそにクラウディアとリーンが話を進める。
「振り落とされないよう、しっかりつかまっていろ!!」
「ちょ!?」
「うわぁ!?」
クラウディアが手綱を操るとフューリアが凄まじい速度で駆け出した。三人乗せているとは思えない速度だ。リーンはクラウディアに、テッドはリーンに必死にしがみついた。
「ちょ! どこ触ってんのよ!?」
「し、仕方無いだろ!? お腹なんだからいいじゃん!!」
そんな騒がしさなど気にもとめず、フューリアは一行を乗せ、風切る速さでメルキドの町に向け駆け出した。
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