第52話 メルキドの町で ①
メルキドの町に着いたクラウディア、リーン、テッド。門番に怪しまれ呼び止められるもクラウディアがフードを取るだけで解決。
『銀氷!?』『じゃあ、これが噂のユニコーン……』など、説明する手間すら省かれた。リーンとテッドもクラウディアが連れだと説明すると、それだけでスルーパスだ。
そして、門番から宿の場所を聞き、雨で人通りの無い町中をフューリアで駆けて行った。
宿に着くとクラウディアはフューリアを厩に連れていき――この時も厩番を驚かせた――、濡れたままでは風邪を引くと、リーンとテッドを連れて宿にチェックインした。
――ここまではよかったのだが。
そして時は現在に。
「二人部屋と一人部屋を一つずつ頼む」
「かしこまりました! 雨の中大変だったでしょう、すぐ部屋までご案内します!!」
宿にチェックインするクラウディア達。クラウディアが代表して宿の受付にそう依頼するも、リーンは嫌な予感を感じた。とりあえず、黙って受付嬢とクラウディアにテッド共々ついていく。
「二人部屋はこちらです! 暖炉に火を入れますね」
「頼む。――君達はこの部屋を使うといい。費用は私が持つから気にするな。風呂は外で共同らしいな。濡れた服を着替えて――」
「ちょお!? ちょ! ちょ!!」
自分の知らないうちにどんどん話がまとまってしまう。リーンが顔を赤くしてクラウディアと受付嬢に手で待ったをかけると、二人は顔を見合せ戸惑い顔だ。
「どうした? 何か問題が?」
「わ、私達、そういう関係じゃ……」
リーンがそこまで言うと、クラウディアと受付嬢はようやく気付いた。リーンの斜め後ろを歩くテッドを見ると、頬をかきながら苦笑いだ。
クラウディアが気まずそうに咳払いする。
「すまない。男女ペアのパーティは、その……だいたいデキてるからな。私の早とちりだ」
「う、ぅう~……っ!!」
「いやぁ、僕は一緒でもかまわな――」
「テッドは黙ってて!!」
顔を赤くして涙目のリーンと、二人部屋ウェルカムのテッド。そんな初々しい年頃の男女ペアを見てクラウディアと受付嬢はなんともほほえましいものを見ている気分になる。
だが、いつまでもこうしてはいられない。
「一人部屋3つでもいいが、これも何かの縁だ。二人部屋は私と君で使って、少年は一人部屋を使うか?」
「ぜひそれで!」
「あ、はい……」
リーンが嬉しそうに、対してテッドは残念そうに答える。それがおかしくて笑うクラウディアと受付嬢だったが、これで部屋割りは決まった。
受付嬢は暖炉に火を入れるとテッドを連れて一人部屋に向かって行った。
二人部屋に入ったリーンとクラウディア。
「あ~、あったか~い……」
リーンは暖炉の前でさっそく暖を取る。目がトロンとしており、そのまま寝てしまいそうだ。クラウディアがローブを脱ぎ、暖炉の近くの椅子にかけつつリーンに声をかける。
「着替えはあるか? 無ければ私の予備を貸すが」
「あ、大丈夫です! 何から何まですみません、お礼もキチンとできてなくて……」
「気にするな。あの場にたまたま居合わせただけだ。これも何かの縁だろう」
リーンは改めてクラウディアを見つめる。キレイなだけじゃなく凛々しくてカッコいい。視線に気付いたのだろう、クラウディアが首をかしげた。
「どうした?」
「いえ、クラウディアさんってカッコいいなぁ~って」
「普通だと思うがな」
「またまたご謙遜を」
「そんなことより風呂に行かないか? ――混浴でなくてよければ」
「もう! 違うって言ってるのに!!」
「ははっ! 冗談だ。寝るのは身体を温めてからの方がいい。風呂と飯に行こう」
風呂支度をするとクラウディアはリーンを連れて部屋を出る。そのまま共同浴場へと向かった。
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