第47話 回顧 バイオレットとクラウディア②
『ようやく見つけました、ヴィオーラ様!!』
満面の笑みで私に駆け寄ってくるかつての愛弟子を
クラウディアが冒険者になったことは、私が近衛騎士をやめて田舎町の酒場に入り浸っていた時に噂で知った。クラウディアは騎士をやめてから半年も経っていないのに、『スゴイ新人がいる』と田舎町にまで噂が広がったのだ。
そこからメキメキと頭角をあらわし、今やこの国で知らぬ者の方が少ないくらいの一線級にまで登り詰めている。
嬉しくて誇らしかった。近衛を辞めて冒険者になってもクラウディアは名を馳せている。むしろ、国の束縛を受けずに済む分、冒険者の方がいいとさえ思っていた。
私は陰ながら応援できたらそれでよかった。
――だが、運命のイタズラか、再会してしまった。見つかってしまった。
◆
『なによあんた! お姉様に何の用よ!?』
『お、おいおい! “銀氷”じゃねぇか!? なんでこんなとこに!?』
『ふぁあ~! スゴイ! 本物です!!』
クラウディアと初対面のエレナ、フェイ、フローリカ。エレナはクラウディアを知らなかったようだ。フェイとフローリカは表向き冒険者をしているので知っていたようだ。
エレナがズイッと私とクラウディアの間に入り大の字に立ちはだかる。それを見たクラウディアの笑みが消えた。値踏みするようにエレナを見下ろす。そして、私にジロリと目を向けてくる。
『ヴィオーラ様、なんですかこのおてんば娘は』
『おてんば!?』
エレナがショックを受けている。ガーンというように。
元より歯に衣着せぬ物言いをするクラウディア。私にだって面と向かってどんなことでも言うのだ。これでもだいぶ抑えている方だろう。
クラウディアの変わらぬ様子が嬉しくて、思わずクスリと笑ってしまう。
『笑うなんてお姉様ヒドイ!』
『お姉様!? ――ヴィオーラ様! いったいこ奴はなんなのですか!?』
騒ぎが大きくなりそうなので、宿屋の個室に場所を移した。
◆
『なるほど……。いや、私という弟子を差し置いて三人も新たな弟子を設けていたことには
私からの説明を聞いたクラウディアはウンウンとうなずいて――いや、ウ~ンウ~ンとうなっていた。
――わからせて恋人にしたなんて言えなかった。
クラウディアの知っている私はもういない。今の私は、剣聖に憧れるイタイケな少女達を狩って手込めにする通り魔的存在だ。
クラウディアの中の私は堕ちる前の私。自分で言うものでもないが、彼女の理想像の私だろう。多分に美化されているはずだ。あえてその理想を打ち砕く必要はない。
この時はそう考え、本当の所を言わずに隠した。
――それが過ちだったとわかるのは半月後のことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます