第5話 オーマイガの好きなタイプ
――キンッ!
――ガンッ!
ここは森の奥地。剣とこん棒がぶつかり合い火花を散らす。
女騎士は小柄な身体を屈め、縦横無尽に走り回り華麗に剣を振るう。対する大柄なオークは、既に幾つもの斬り傷を負いつつも、次第に女騎士の動きを見切りつつあった。
女騎士が距離を取り剣を横に構える。あの構えは――
オークは、今までに何人もの女騎士と交戦し、そのすべてを制してきた。あの構えにも見覚えがある。記憶が正しければ――
少女が地を蹴り一気に距離を詰めてくる。やっぱり思った通りの軌道だ。なら――!
オークは女騎士の移動予測をした先にこん棒を振り下ろした。確かな手応えがある。
「――っ! どう、し、て……」
背に重い一撃を受けた女騎士は、うつ伏せに倒れ伏した。
オークの戦士オーマイガは、また一人女騎士を下し、安堵の吐息を漏らすのだった。
◆
「……私の敗け。好きにするといい」
銀髪セミロングの小柄な少女だった。今までの女騎士と雰囲気が違う。今までは、「――くっ! 私の敗けだ! 好きにしろ!」という風に――そう。勝ち気だったが、この少女は逆に大人しい。
少女は仰向けに地面の上に横たわっている。身体を大の字にして。目をぎゅっと閉じて、そっぽを向いている。
オーマイガは今までとの違いに戸惑いながらも、女騎士の拘束に入る。
女騎士の上にまたがり、まずは猿ぐつわをかませる。
「…………んっ」
少女の口から艶かしい声が漏れた。心なしか、少女の息は荒く、頬は紅潮している。
それを間近で見たオーマイガは――
――むくっ
(? ――!?!?!?)
自身の下腹部に熱がこもるのを感じた。少女が怪訝な表情でこちらを見上げてくる。
(オレ、おかしくなったのか? 今までこんなことなかった。ネルみたいになるのか? オレも……)
オーマイガは内心の混乱を抑えつけながら少女を拘束していった。少女は一切抵抗せず、されるがままだった。
◆
――隠し入り江――
「――あ。オーマイガさん! また“くっころ”じゃないですか!?」
「あ、あぁ。査定を頼む」
縛った女騎士を抱えて引渡し場所の隠し入り江に行くと、いつものようにクルトンに出迎えられる。
女騎士を下ろしてクルトンに見せると、査定が始まった。
「銀髪寡黙系美少女くっころ!? は、初めて見た! オ、オーマイガさん!! 文句無しの“くっころ度”Sですよ!!」
「そ、そうか……」
興奮するクルトンがオーマイガを讃えるも、オーマイガは心ここにあらずだった。Sランクの報酬を渡されても素直に喜べない。
「オーマイガさん?」
「クルトン。ネルに会わせてくれないか?」
オーマイガは自身に起きている変化が分からず、“くっころ”マイスターのネルに相談してみようと考えたのだ。
「いいですよ。じゃあ、乗って下さい!」
クルトンは、舟に女騎士とオーマイガを乗せて漕ぎ出した。
◆
――くっころ島・コテージ――
「ようやく入り口に至ったか。我が友よ」
「変なしゃべり方をするな。マジメに相談してるんだ」
“くっころ島”に着くと、女騎士をクルトンに預け、オーマイガはコテージへと向かった。
そこでオーマイガはネルに自分の悩みを打ち明けた。その結果がこれである。
「ごめんて! でも、いやぁ~! そうか~! ついに“目覚め”たか~!♪」
「ネル、教えてくれ。オレはおかしくなってしまったのか?」
オーマイガは真剣な表情で聞くが、ネルはニヤニヤしたままだ。
「オーマイガさんは何もおかしくないよ。オーマイガさんが感じたのは“性的欲求”。つまりは、“彼女に欲情した”ってことさ!!」
「!!!? あの感情がそうなのか!?」
オークでありつつ保守的なオーマイガは他のオーク達のようにガツガツしていなかった。
他のオークはメスを見ると、やれ子作りだの何だの騒ぐが、オーマイガはあまりそっちの方に関心が無かったのだ。
「でもそうか~。オーマイガさんは、そういう系が好みなんだ~?♪」
「オ、オレばかり不公平だぞ! お前の好きなメスのタイプも教えろ!!」
「オッケ~♪ ならちょうどいい。 “くっころ喫茶”に行こうか!」
顔を赤くして照れるオーマイガを連れ、ネルは“くっころ喫茶”へと向かうのだった。
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