第5話 オーマイガの好きなタイプ


――キンッ!

――ガンッ!


 ここは森の奥地。剣とこん棒がぶつかり合い火花を散らす。


 女騎士は小柄な身体を屈め、縦横無尽に走り回り華麗に剣を振るう。対する大柄なオークは、既に幾つもの斬り傷を負いつつも、次第に女騎士の動きを見切りつつあった。


 女騎士が距離を取り剣を横に構える。あの構えは――


 オークは、今までに何人もの女騎士と交戦し、そのすべてを制してきた。あの構えにも見覚えがある。記憶が正しければ――


 少女が地を蹴り一気に距離を詰めてくる。やっぱり思った通りの軌道だ。なら――!


 オークは女騎士の移動予測をした先にこん棒を振り下ろした。確かな手応えがある。


「――っ! どう、し、て……」


 背に重い一撃を受けた女騎士は、うつ伏せに倒れ伏した。


 オークの戦士オーマイガは、また一人女騎士を下し、安堵の吐息を漏らすのだった。



「……私の敗け。好きにするといい」


 銀髪セミロングの小柄な少女だった。今までの女騎士と雰囲気が違う。今までは、「――くっ! 私の敗けだ! 好きにしろ!」という風に――そう。勝ち気だったが、この少女は逆に大人しい。


 少女は仰向けに地面の上に横たわっている。身体を大の字にして。目をぎゅっと閉じて、そっぽを向いている。


 オーマイガは今までとの違いに戸惑いながらも、女騎士の拘束に入る。


 女騎士の上にまたがり、まずは猿ぐつわをかませる。


「…………んっ」


 少女の口から艶かしい声が漏れた。心なしか、少女の息は荒く、頬は紅潮している。


 それを間近で見たオーマイガは――


――むくっ


(? ――!?!?!?)


 自身の下腹部に熱がこもるのを感じた。少女が怪訝な表情でこちらを見上げてくる。


(オレ、おかしくなったのか? 今までこんなことなかった。ネルみたいになるのか? オレも……)


 オーマイガは内心の混乱を抑えつけながら少女を拘束していった。少女は一切抵抗せず、されるがままだった。


――隠し入り江――



「――あ。オーマイガさん! また“くっころ”じゃないですか!?」

「あ、あぁ。査定を頼む」


 縛った女騎士を抱えて引渡し場所の隠し入り江に行くと、いつものようにクルトンに出迎えられる。


 女騎士を下ろしてクルトンに見せると、査定が始まった。


「銀髪寡黙系美少女くっころ!? は、初めて見た! オ、オーマイガさん!! 文句無しの“くっころ度”Sですよ!!」

「そ、そうか……」


 興奮するクルトンがオーマイガを讃えるも、オーマイガは心ここにあらずだった。Sランクの報酬を渡されても素直に喜べない。


「オーマイガさん?」

「クルトン。ネルに会わせてくれないか?」


 オーマイガは自身に起きている変化が分からず、“くっころ”マイスターのネルに相談してみようと考えたのだ。


「いいですよ。じゃあ、乗って下さい!」


 クルトンは、舟に女騎士とオーマイガを乗せて漕ぎ出した。


――くっころ島・コテージ――



「ようやく入り口に至ったか。我が友よ」

「変なしゃべり方をするな。マジメに相談してるんだ」


 “くっころ島”に着くと、女騎士をクルトンに預け、オーマイガはコテージへと向かった。


 そこでオーマイガはネルに自分の悩みを打ち明けた。その結果がこれである。


「ごめんて! でも、いやぁ~! そうか~! ついに“目覚め”たか~!♪」

「ネル、教えてくれ。オレはおかしくなってしまったのか?」


 オーマイガは真剣な表情で聞くが、ネルはニヤニヤしたままだ。


「オーマイガさんは何もおかしくないよ。オーマイガさんが感じたのは“性的欲求”。つまりは、“彼女に欲情した”ってことさ!!」

「!!!? あの感情がそうなのか!?」


 オークでありつつ保守的なオーマイガは他のオーク達のようにガツガツしていなかった。


 他のオークはメスを見ると、やれ子作りだの何だの騒ぐが、オーマイガはあまりそっちの方に関心が無かったのだ。


「でもそうか~。オーマイガさんは、そういう系が好みなんだ~?♪」

「オ、オレばかり不公平だぞ! お前の好きなメスのタイプも教えろ!!」

「オッケ~♪ ならちょうどいい。 “くっころ喫茶”に行こうか!」



 顔を赤くして照れるオーマイガを連れ、ネルは“くっころ喫茶”へと向かうのだった。


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