第39話 オーマイガ VS エレナ
――くっころ島――
即席で設けられた訓練場。そこで赤髪女騎士とガタイのいいオーク――エレナとオーマイガが模擬戦をしていた。
「せいりゃあぁっ!!」
フェイントを混ぜながら凄まじい速度で跳んでくるエレナを横に飛びすさることで難なく回避するオーマイガ。
「チッ! ――ファイアボールッ!!」
「むぅ!?」
隙は逃さんとばかりに距離をつめようとするオーマイガだったが、エレナの左手から炎の玉が発射される。それをすんでのところで回避すると、すかさずエレナが距離をつめてきた。
ぶつかり合うこん棒と剣。幾度も応酬が繰り広げられる。
「やるわね! オークのくせに!!」
「お前こそ!!」
互いに一歩も譲らず火花を散らすが、徐々にオーマイガが押していく。ダテに幾度も女騎士をくだしてきたわけではない。見慣れない
ジレて舌打ちしたエレナが剣を両手持ちに跳躍する。己の体重を乗せた強烈な一撃で勝負を決めるためだ。剣に炎をまとわせた。火力を上乗せし、オーマイガごと焼き払いにかかる。
――だが、その動きを既にオーマイガは見切っていた。
「ふんぬっ!!」
「――キャッ!?」
オーマイガが思い切りこん棒を下からすくい上げるように振り抜くと、甲高い音を響かせエレナの手から直剣がはじきとばされた。エレナから女の子らしい可愛い悲鳴がもれる。
エレナ自身も勢いよく後方にとばされ地面に叩きつけられる。二回程リバウンドして転がると、体勢を建て直し片膝をつく。だが、顔を上げた瞬間、眼前にこん棒を突きつけられた。
エレナが悔しげに目の前のオーマイガを見上げる。その瞬間、ネル審判がジャッジをくだした。
「勝者! オーマイガさん!!」
わき起こる歓声。
「やっぱオーマイガさんはスゴいや!!」
「強すぎひん!? 強すぎひん!?」
ユートとジャックは大喜び。
「ふん。私達をバカにしたくせに自分も負けてるじゃない」
「ア、アリシア。可哀想だよ」
「いや、でも強かったよな!?」
「魔法をからめた多彩な攻撃。見習いたいわね」
「……お見事」
女性陣も称賛――アリシアはなぜか勝ち誇っていたが――。それを見たエレナの額に青筋が浮かぶ。
「ペ、チャ、パ、イがぁあっ!!」
「ほらほらジッとしてなさい。傷を癒すから。――あなたも来なさい、オーマイガ」
「いいのか?」
「ええ。模擬戦なのに無茶な勝負をさせて悪かったわね」
「お姉様! 次は負けません! 次こそはっ!!」
「はいはい。いいからジッとしてて」
傷付いたエレナとオーマイガをバイオレットが魔法で癒していく。手から黒いもやを出しており闇魔法のようだが、それによりみるみる傷や火傷が治癒していった。
「なんだその魔法は?」
「ふふ……秘密♪ 安心なさい、害はないから」
「わかった。治療、感謝する」
「さぁ傷も癒えたわ! 再戦よ!!」
同じく治療を受けたエレナが元気よく立ち上がったところ、砂浜の方から声がかかる。
「――あ! やっと見つけた! おい、エレナてめぇ! 抜け駆けしやがったなぁ!?」
「はん! お姉様を見つけちゃったんだもの、仕方無いでしょ!」
赤茶髪ボーイッシュの少女が走ってきてエレナに襲いかかる。当然のごとく応戦するエレナ。取っ組み合いが始まった。そうこうしているうちにメガネをかけた金髪オサゲの少女も現れた。
「ふぇえ!? 二人とも喧嘩はダメだよぉ!? ――あ! ヴィオーラ様っ!!」
金髪オサゲの少女はバイオレットの姿を見付けると嬉しそうに顔をほころばせ、飛び込むように抱き付いた。
「フローリカ! てめぇも抜け駆けか!?」
「寂しかったですお姉様ぁ!!」
「いらっしゃい、フローリカ、フェイ。これで三人そろったわね♪」
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