第35話 第1回くっころ会議 ③くっころ島の発展案の出し合い
――くっころ喫茶――
「それじゃ三つ目――最後だよ! がんばろ!」
疲れた様子の皆をネルがはげまし、最後の議題について会議は進行する。
◆
『議題③くっころ島の発展案の出し合い』
「
チョークを片手にネルがそう音頭を取る。やはりと言うべきか、真っ先に手が上がるのは男性陣からだ。
「島内を探索してどんな食材があるか調べたいな」
「くっころバー」
「プール!」
「混浴場」
ハンネス以外、趣味嗜好が反映されたものと言えるだろう。負けてはいられないと、女性陣からも声が上がった。
「日用品や雑貨を買えるお店!」
「お洋服とかのお店も欲しいです!」
「闘技場だろやっぱ!」
「一人落ち着ける場所。図書館みたいな」
「……ん~。――訓練所?」
アリシア、エミリーは島での暮らしやすさ重視なのだろう、お店導入の要望だ。カレンは勇ましく闘技場。サラは静かな場所を欲っしている。シルヴィアは地味に訓練所だった。
「私達もいいのかしら?」
「どぞどぞ!」
バイオレットにしては控え目だった。そうねぇとアゴに指を当てしばし考え込むと、手をポンと叩いた。
「エステね。これがいいわ!」
「流石はお姉様ですわ! 私は来たばかりでよくわからないけど、武器や防具の店ね、やっぱ。鍛治場でもいいけど」
以外と普通だった。エレナに至っては、一番騎士らしいと言えなくもない。
「オーマイガさんは?」
「オレもいいのか?」
「いいんだって。なんでもいいよ~?」
「じゃあ、そうだな……。うちの集落と行商をして欲しい」
「ほ?」
オーマイガからの意外な提案。ネルも予想外だったのだろう。目を丸くしている。真っ先に反応したのはエレナだった。
「ちょっと待って! えっと……なに? オークって魔族よね? 商売とかしてるの?」
「してる。八年くらい前に、とんでもない強さの人間のメスが現れて森で暴れたから、しばらく里の中に閉じこもるようになったんだ。狩りにも出れなくなって、生きていくためにどうするか里のみなで話し合った。その一つが他里との行商だ。最初は物々交換だったけど人間のように貨幣でのやり取りもするようになった」
オーマイガの説明に皆戸惑い顔だ。
「なんか変なオークだと思ってたけど、里単位で変なの?」
「アリシアさん失礼ですよ? でもまるで私達人間みたいですね」
「だなぁ。やたら強いしよ」
「いや、異常よ。魔族なんて、欲求のまま狩りをして暮らしているのが普通でしょ」
アリシア達の意見ももっともだろう。バイオレットが少し考え込む仕草を見せる。エレナも何かを思い付いたようだ。
「八年前って、お姉様、もしかして……」
「本人に聞くのが一番早いわ。――オーマイガ、森で暴れまわったメスっていうのは、頭から馬のしっぽみたいなのを後ろに足らした金髪の女騎士?」
バイオレットが手振りでポニーテールを再現して見せるとオーマイガはうなずく。
「とっても強かった?」
「強すぎて、遭遇した誰もが瞬時に倒された。里では“死の風”と呼ばれている」
「風の魔法は使ってた?」
「緑の風を操ってた。――知ってるのか?」
オーマイガとのやり取りで確証に至ったのだろう。バイオレットがめずらしく疲れたようにため息をついた。
「ここまで特徴が合致するならほぼ確定ね。時期も合う。――その女騎士こそ、あなた達魔族の長ブラックドラゴンをたった一人で倒した剣聖アストリア・ルイスよ」
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