16話 土曜日のストロベリーマンデー
夏休みに入り数日。
私達はみんな大好きお馴染みのフードコートに来ています。
釧路の学校が一斉に夏休み期間に入り、フードコート内も連日込んでいるような印象を受けます。
私達プロフードコーターに混じって、にわかフードコーターが見受けられますね。
「今日もあちぃな、釧路のくせに」
「ねー。ストロベリーマンデーおいしー!」
「さすが渚帆さんです。常に時代の一歩先を歩くお方」
ストロベリーが日曜日の時代はもう終わりましたね。
これからは月曜日です。
「おいなぎ。小春子に小馬鹿にされてんぞ」
「え”!?」
「ちょ! 小馬鹿になんてしていませんよ!」
もう! 人聞きの悪い事を言わないでほしいですね!
……人聞きというか渚帆聞きですかね? なぎ聞き? なぎきき?
渚帆さんのきが沢山並んでいます。これは縁起が良いです
「お前の食ってるそれはストロベリーサンデーだ」
「そうだっけ?」
「そうだよ。つか、それ注文するとき名前読んだんじゃねーの?」
「……いちごのこのおいしそーなやつくださいって言ったかも?」
いちごのこのおいしそーなやつ! やっぱりストロベリーサンデーは名前を改めて、こっちの名前にしましょう!
「今度からちゃんと正式名称で呼んであげてな」
「りょーかいです!」
「一つ賢くなりましたね。偉いです」
えらいえらい。と私は隣りに座る渚帆さんの頭を撫でてあげます。
いえ、撫でさせて頂いております。
「えへへ。ありがとぉ」
「きゅん」
思わずきゅんが声に出てしまいそうになりました。
「声に出てんぞ」
「えへへ」
「えへへじゃない」
「あ! そーいえば」
私がえへへにクレームを入れられていると、渚帆さんが何かを思い出したのか、ご自身の身体を見ながら言いました。
「はいてくるの忘れちゃった」
「は、ははははは穿いてくるのを忘れたんですか?
「なんで苗字呼びになってんだ?」
「うん。はいてくるの忘れちゃったみたい」
いっいいいいいいい一旦落ち着きましょう。
い、いくら小指の先ほど天然でいらして、のんびりしてらっしやる渚帆さんといえど、公共の場に遊びに来る際に、穿いてくるのを忘れるなんてことがあるでしょうか?
「い、今その……し、その、穿いてないのでしょうか?」
「え? うん。はいてないっていうか……みてみる?」
「んえ”!?」
見てみる? ってその渚帆さんの無邪気さの中に大人っぽさを演出している、長めのキュロットスカートの下をってコト!?
「いえいえいえいえ! ダメですよ! ここここここんな人目の多い場所じゃ!」
「は? 何言ってんだ? ……そいえば昨日あたしに写真送ってくれたやつか?」
「うん! もみじちゃんにきのーの夜おくったやつ!」
「オクッタ!?」
え? 穿いてない状態で写真を撮って、それを椛さんに送ったってことですか?
私の知らないところで夜な夜なそんなやりとりしてたんですか!?
「椛さん」
「ん?」
「見たんですか?」
「え?」
「見たんですかと聞いているんです!」
「そ、そりゃ送られてきたから見たけども」
はい。言質取りました。
7月30日(土)午後2時37分 私の知らないところで夜な夜なえっちなやりとりをしてた罪で逮捕です。
「行きましょう」
私は席を立ちました。
「どこにだよ」
「……とりあえず交番ですか?」
「とりあえずもくそも意味わかんねーだけど!?」
「も、もみじちゃん遂にやっちゃったの!?」
席を立った私は、はす向かいに座る椛さんの方に歩み寄ります。
「ほら! 行きますよ! 自首しましょう!」
「自首!? あたしなんにもしてねーよ!」
「話は署で聞きますから! 署でまず私と一緒に証拠を確認しましょう!」
「お前さっきからおかしーぞ! 言ってることが何一つ理解できん!」
「はわわわわわわわ」
ぐいぐいと腕を引っ張って椛さんを席から立たせようとする私。
それを見て口元に手を当てて、あわあわしている渚帆さん。
「あんなく——」
抵抗を見せていた椛さんが動きを止めました。
観念したようですね。
「そういうことか……なぎ。ちょっと耳貸せ」
「は、はい!」
渚帆さんは真向かいに座る椛さんの方に、身体ごと耳元を寄せました。
「——」
「!?!?」
椛さんに何かを言われた渚帆さんは、ぽすっと席に座りなおしました。
そして、みるみるうちに顔が真っ赤に染め上げられていきます。
「はいてないわけないじゃん!!」
渚帆さんは私に涙目で訴えかけてきます。
「え! だって穿いてないって言いましたよね!?」
「だから履いてくるの忘れちゃったの! あたらしく! かった! 靴下を!」
パンツを
靴下を
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! 私はなんてはしたない勘違いを!!!!
ちなみに北海道や一部都府県では手袋も
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
「もう! なぎはそんなへんたいさんじゃないからね!」
「さすが脳内桜餅の小春子さん」
うぅ。私が自首するべきだったかもしれません。
「そーいや、なんであたしだけに送ったんだ? 3人のグループに送れば良かったんじゃないのか?」
椛さんがふと疑問に思ったことを口にしました。
た、確かに。
「それはね……」
いつの間にか渚帆さんはいつもの渚帆さんに戻っています。
「こはるこちゃんの好きないちご柄だからだよ!」
渚帆さんは少しスカートをたくし上げ、靴下が見えるように足元を見せてくれています。
「あ。とってもかわいい」
「ふふん! そうでしょう!」
渚帆さんが履いている靴下は、真っ白な色の中に一部ポイントで小さな苺があしらわれているデザインでした。
「こはるこちゃんいちご好きだもんね!」
「はい! 苺大福が好きなので苺も大好きです!」
「やっぱり餅を中心に生きてるな」
ふー。これにて事件解決ですね。
「あ! そいえばねー」
気をよくした渚帆さんが何の気なし言いました。
「きょーはぱんつもいちご柄だよ!」
私の脳内では苺狩りの思い出が駆け巡りました。
おもち
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