21話② 仲良くなれるおもちゃ

「どーどーこはるこちゃん。おちついて」

「ふぅー! ふぅー!」




 渚帆さんに膝枕をして欲しいと思っていないなんてどうかしてますよ!

 どうかしてますよ椛さん!(単行本発売中!)

 私は四六時中してほしいと思って生きています。正常なので。


「まぁまぁ。落ち着いてお前ももっかい手入れてみ?」

「そうだね! こはるこちゃんここにおてていれましょうね?」

「はーい」


 私は気が付くと真実の口に手を入れていました。




「今度はあたしが質問してやろーか」


 椛さんは面白いおもちゃを見つけた子どもの様な笑みを浮かべています。

 大丈夫。落ち着いて正直に答えるのよ小春子。


「今日のなぎのが気になっていますか?」

「はい」


 シーン。

 真実の口は反応を示しません。


 ふふん。ほらどうですか? 何も起こりませんね? だって私は正直に答えたのですから。

 え? 何をって? それは勿論、私は今日の渚帆さんのパンツの色が気になっていますか? と質問されたので正直にはいと…… 






「あ」


 私は全身から血の気が引いていくのを感じます。

 これ渚帆さんにナチュラルにセクハラ発言をしてしまっていますか? 

 パンツはまだセーフですか?


「うんうん。小春子は正直者だったな。偉いぞ」


 椛さんは腕を組み、うんうん頷いて何か納得しています。


「ほらなぎ。小春子さんはお前のパンツの色が気になっているみたいだぞ?」


 私の隣に座る渚帆さんに椛さんは話を振りました。

 そういえば先程から一言も言葉を発しておられないような……


「渚帆さん先程のは——」


 私は、先程の誤解を招く発言を弁明しようと横を向くと——






「……」


 渚帆さんは下を向いてスカートの裾をぎゅっと握っておられました。



 終わりました。執行猶予なし。実刑です。釧路川に沈められます。

 私は全身から血の気が引いていくのを感じました。

 もう血液はすっからかんです。誰か輸血してください。


「な、渚帆さん、先程のは誤解というか、パンツの色が気になるというのよこしまな心からくるものではなく、知的好奇心や乙女心からくるものでありまして、決して渚帆さんを辱めようとかではなくてですね、そもそも機械の誤作動という可能性も否めませんし、あの、その……」


 私がテンパってあれやこれや言い訳をしている時に、椛さんが座る、私の前の席が視界に入りました。


 あれ? 居ないですね?


 私は不思議に思いつつも、もう一度渚帆さんの方を向きます。






「よしよし。可哀そうにな。小春子にはあたしが言って聞かせるからな」


 椛さんは渚帆さんの横に立ち、頭を撫でながら慰めていました。

 このあまぁ!


「とりあえずごめんなさいしよ——」


 椛さんが私に謝罪を促そうとしたその時でした。


 ガバッ!


 俯いていたはずの渚帆さんが勢いよく立ち上がりました。






「なぎ決心がついたよ! なぎの今日のパンツの色は——」

「おい!」

「ぴもがっ!」


 両の拳を握りしめながら、フードコートで下着の色を口にしようとした女子高生の口を椛さんが止めに入りました。


「何言おうとしてんだ! あほか!」

「んー! んんー!」


 渚帆さんは椛さんに手で口を塞がれてもがいています。

 涙目顔赤渚帆さん……




「——ぷはぁ! ちょっとなにするの! もみじちゃん!」

「それはこっちのセリフだ!」

「やっとパンツの色をいう決心がついたところだったのに!」

「しなくてい! そんな決心!」


 何事にも真っ直ぐ取り組む渚帆さん。素敵です。


「へへ。今日ちょっと恥ずかしい色してるから言いだしにくくって」

「恥ずかしいお色……」

「小春子はもう何も考えるな。そしてなぎは人前で下着の色を答えないこと。肝に銘じろよ」











「ねぇねぇ。次こはるこちゃんともみじちゃん一緒に手をいれてみてくれる?」


 もう悪魔のおもちゃを片付けるかと思いましたが、渚帆さんは変な提案をされました。


「一緒に手を入れてお互いに質問をぶつけあうバトルですか?」

「血の気が多い奴だな」

「それもおもしろそー! ……だけど、今回はなぎが2人に同じ質問をどーじにするからこたえてほしいな」


 少し嫌がる素ぶりを見せた椛さんの手を握って私は真実の口に手を入れました。

 私よりも小さなてってですね。




「ではいきます!」


 ゴクッ。

 私と椛さんは唾を飲み込みました。


 そういえばこの機械が作動すると何が起こるか一度も見てませんのに、こんなイレギュラーな使い方をして大丈夫なのでしょうか?






「お互いのことをと思っていますか?」

「「!?!?」」


 笑顔で爆弾を投下する渚帆さん。


「「い、いいえ」」




 ぱくっ。

 真実の口が閉じて私と椛さんの手を食べてしまいました。


 そして次の瞬間——


「いっっっ!」

「っっっつ!」


 突然手に電流が流れたのか、痛みが走りました。

 これは……冬に不意に食らうと、とても痛い静電気3割増しの威力です(とっても痛い)






「んだよ! このおもちゃは!」

「嚙みつきからの電流攻めとは……恐ろしいです」

「もー。ちがうでしょ? おふたりさん?」


 渚帆さんは不満を漏らす私と椛さんに向かって、やれやれと言わんばかりに首を振りました。


「ふたりの発言にがあるから罰がくだったんだよ? ちゃんと正直に言おうね? じゃ、もっかいね」

「ちょっ!」

「まっ!」


 ちなみに私と椛さんの手は繋がれた状態で真実の口に嚙まれたままです。

 ……手汗かいてませんよね? 私……






「お互いのことを本当はと思っていますね?」

「「いいえ!」」


 ビリリッ!


「っっってぇな!!」

「っっっううっ!!」


 再び電流が流れてきました。

 うう。痛いぃ。どうしてこんな目にぃ。




「もー! どーしてふたりとも嘘ついちゃうの! めっ!」

「べ、別に嘘ついてねーよ!」

「そ、そうですよ! 私達は別に……」


 渚帆さんは無言で笑顔を見せると、また同じ質問を私達にしました。




「いつもお互いのことをと思ってはいるけど素直になれない。そうですね?」

「「いいえ!!!」」


 ビリリリリリッ!


「んむぅっっっ!」

「にうぅっっっ!」


 3回目の電流が走りました。


 ここから私と椛さんは意地になり、店員さんに怒られるまで、お互い可愛いと認めない合戦は続きました。


 渚帆さんのあの普段とは違う笑顔……ちょっと興奮…………ではなくて怖かったです。めでたしめでたし











「おねぇちゃんにお友達と仲良くなれるおもちゃだって借りたんだけどおかしいなぁ?」


 おもち





























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