2.1 話 イス取りゲーム_おまけ

「うーん。さすがにちょっと重いかも……」

「まさか本当に座るとはな」

「座っていいと言われたから座っただけです」





   

 さて。今の私達の状況を整理します。

 フードコートの4人掛けテーブル席に椅子が2脚。そのうちの1脚に、下から渚帆さん→椛さん→私の順番で積まれています。

 さながら鏡餅の様に。

 


 

「2人で100キロくらいあんじゃねーか?」

「まぁ……そのくらいはあるかもしれませんね」

「小春子。お前何キロだ?」

「40そこそこです」小声

「私もそんくらいだけど、それじゃわからんだろ」


 乙女に体重の話はしてはいけないと、恐竜の時代から決まっているんですよ、もう。

 椛さんはスマートですからご自身の体重を気にしたこともないでしょうがね……月で兎が餅つきをしていそうなお胸もお持ちですし。ぺったん


「2人ともかるいんだね〜。なぎはごじゅう……」

「わわ! ダメですよ渚帆さん! こんな場所で! 後、椛さんは耳を塞いでください」

「あいよ」

「私のではなく!」


 渚帆さんの体重を知っていいのは私だけですのに! まぁ、身体測定の時に見えてしまったので知っているのですが。見えてしまったので。


「えー。べつにだれかに聞かれても気にしないけどな〜。身長はちょっと気にしてたことあるけど……」

「昔の話だろ。小春子は何センチだっけ?」

「155センチです! 椛さんは140センチくらいですか?」

「147センチだよ!! そんでお前の身長も威張れるもんでもないぞ」


 まだまだ成長期ですからね。背はこれからまだまだ長く伸びていくでしょう。

 北海道の美唄市光珠内びばいしこうしゅないから滝川市新町たきかわししんまち間の日本最長の直線道路の国道12号線のように。

 免許を取ったら3人で行きたいです。




「もー。あんまり人の身長のこと言っちゃめっだよ」

「そうですね……ごめんなさい椛さん……気にしてるのに」

「いや別に気にしてねーけど。昔から小さいし」


 渚帆さんに怒られてしまいました。うれしい

 幼い我が子を叱るかの様に……子? 私は渚帆さんの子どもだった?






「あっ!! いすいっこあった! おねえちゃんたちこのいすもってってもいーい?」とちとち

「「!?!?」」


 突如襲来する女の子。


「どーぞ! 気をつけてもっていってね!」


 私と椛さんが驚いて固まっていると、渚帆さんが優しく答えました。


「ありがとー! ばいばい!」とちとち

「うん! ばいばい!」


 仲良く手を振る渚帆さん。

 なんて心温まる素敵な光景なんでしょうか。あの子は優しい大人に成長し

 育っていくことでしょう。




「どうすんだよ! 最後の椅子も無くなって! あたし達ずっとこのままか?」

「こまった時はおたがいさまだよ? もみじちゃん」

「さすが渚帆さんです」

「一番下のお前がそれでいいならいいけどさ……」


 確かにこのままでは私の下の椛さんはともかく、一番下の渚帆さんの負担が大きいかもしれません。一度降りて大勢を変えましょう。

 よいしょっと。


「同じ大勢だと身体に良くありませんので、一旦降りましょう椛さん」

「また乗る前提なのか……」

「なぎもいっかい降りよー」


 うーーーーーーんと伸びをする3人。

 再び渚帆さんは席に座りポンポンと太ももを叩きながら提案します。


「こんどはこはるこちゃんが真ん中にな——」

「はい!」

「うわ」


 遂にきましたこの時が。私と渚帆さんという鏡餅の蜜柑になってもらいますかね椛さんには。そうと決まれば……


「よいしょ——」

「あ。普通に座るんだな」


 渚帆さんの膝に腰を下ろそうとしたところで椛さんが不思議なことを言いました。


「普通も何もないでしょう」

「ちょっとどいてみ?」


 私は、首を傾げながらも腰を上げて横にずれました。

 椛さんは正面を向いたまま、渚帆さんの目の前まで行きゆっくりと右足を上げて——。


「よっと」

「わわっ! ちょ、ちょっともみじちゃん!?」




 なんということでしょう。椛さんは渚帆さんに太ももの上に座ってしまいました。

 こんな姿勢が許されていいはずがありません! だって、だってこの姿勢は完全に……もう!! 私の口から何を言わせる気ですか///


「そこから降りて下さい椛さん!!!!!!! は・な・れ・な・さ・いーーー!!!」

「えー。いいじゃんこのままでー。あったかくていい匂いするしやわこいし」

「もー。もみじちゃんはあまえんぼなんだからー」

「はーなーれーてー!」


 私はなんとか椛さんを引き剥がそうと、椛さんの制服のベストを掴んでおもいっきり引っ張ります。


「おい! 引っ張るなって! 伸びるだろ!」

「おーりーてー!」

「こはるこちゃんあぶないから1回おちついてっ!」ぐいっ


 渚帆さんが引っ張られる椛さんをご自身の方に引き寄せた瞬間——






「きゃっ!」

「おわっ!」


 もふっ。ぱすっ。

 渚帆さんに引っ張られた椛さんは、お祭りでたまに売ってるビニールで作られたダッコちゃん人形のように前から、より抱きつく形に。

 私は渚帆さんの膝に座り、椛さんの背中に抱きつく形になってしまいました。


「あ、あぶなかった……3人で倒れるところだったよ……」

「流石なぎ。いい踏ん張りだ」

「痛い。鼻を打ちました」






「「「ぷっ」」」

「「「あはははははは」」」


 気がつくと、私達は3人顔を見合わせ笑い合っていました。


 ふぅ。それにしても少し騒ぎすぎたかもしれませんね……そろそろいい時間ですし帰りましょうか。




「——すいませーん! 俺達ここのテーブルの椅子1脚使っちゃってまして……」

「——おなかすいちゃってもうおうちかえるから、おかえししに……」


 声のした方に3人顔を向けると、椅子を拝借していたらしい大学生の男女グループと、先程の女の子がご両親を連れて椅子を返しにきていました。


「おねえちゃんたちさっきよりなかよさそー!!!」


 おもち





























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