本編お餅
1話① 今日も私はモチを焼く
ぷくー
今日も私はモチを焼く。
目の前で繰り返される光景に、怒りに心震わせて、頬を赤く染めながら、私は今日もモチを焼いてしまうのです。
梅雨入り前の6月上旬、まだまだ真夏には遠い気温ですが、放課後に私達はいつものメンツで、いつもの場所で、冷たいシェイクをちゅーちゅーしつつお喋りしていました。
梅雨入り前といっても北海道に梅雨はなく、ここ釧路では7月8月であっても、30度を超える真夏日はほとんどありません。
「おい、小春子……おいってば! あたしの話ちゃんと聞いてたか?」
「はい、勿論聞いていましたよ椛さん、ザンギとは
「そんな話してねーよ……前半デタラメだし……ったく、なぎは聞いてたよな?」
「んむ……む、むぅ、ムササビとモモンガを仕分けるなんてなぎには無理だよ〜」
「はぁ……2人とも聞いてないし……」
今日も溜息をつき、ぷりぷりぷりん怒っているのは、
短めに切られた髪の毛、男の子のような強めの口調に私はいつも怯えていま……せんね、背も3人の中で一番低いですし、男の娘くらいの迫力しかありません。かわいらしいこと
打って変わって、私の左隣に座っておられるぷりてぃー天使様は、
寝ぼけ眼を擦りながら、左右にゆーらゆら、頭の大きなお団子も合わせてゆーらゆら……かわいい/// すき/// いいにおい! 背が高いのも手足が長くスタイルも良くて抱き心地も抱かれ心地も良いのもおっぱいが大きいのも勉強が絶望的なのも好き! なまら好き! わやです。
そして私は
黒髪ロングのサラサラヘアーに、前髪はぱっつんよろしく真っ直ぐ切り揃えたマジメさんです。背は2人の間です。後は……家がちょっとお金持ちです。
と、まぁそんな私達3人は放課後にポ○フール(……地元民しかもうそう呼んでいませんが)もといAE○Nのフードコートに居るわけです。
「んむんむ、無限に食べちゃう……恐ろしいたこ焼き……まさに悪魔、流石金だご……あーん、んむんむ」
「お前はなんでもたくさん食べるだろーが……あっ」
はす向かいに座る私をニヤリと一瞥する椛さん……嫌な予感がします。
「おい、小春子、たこ焼きお前も食いたいか?」
「い、いえ、せっかくですが……というか椛さんはたこ焼き買ってないでしょう?」
「そっかそっか、いらないんならいいんだ、なぎ、その最後のたこ焼きあたしにくれ」
「!?」
しまった!! そう思ってお2人を見た時には時既に遅し……
「え〜、もぅしょうがないなぁ、特別だよぉ、ほらもみじちゃん、あ〜ん」
「あーん……もむもむ、なぎにあーんしてもらったたこ焼きは美味しいなー、なー? 小春子なー?」
(ぐぬぬ、またやられた……渚帆さんの龍の玉にも等しい価値のたこ焼きを頂くだけでなく、あまつさえあーんなど……あーんなど!!!!!! んもうっ!! もう!!!)
(…………かわええええええええええ!!!!!! 渚帆が好きすぎてたこ焼きあーんであたしに嫉妬する小春子が愛おしすぎる、無限に推せる、背中がゾクゾクする……)
「あ、あれ? やっぱりこはるこちゃんも食べたかったの? ごめんね…………あ!! この1本残ってるポテトなら」
最後のポテトをつまみあげる椛さん。
「あむ」
「あっ! めっ!! だよ! もみじちゃん! もう、食い意地はっちゃって」
(いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!! 私の渚帆さんの塩味の指がぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」
(いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!! 落ち込んだ小春子の表情がぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!! そそる」
絶望と歓喜の渦に飲み込まれるテーブル。
「そ、そんなにポテト食べたかったの!? ごめんねこはるこちゃん! もみじちゃんもごめん! 2人ともお腹空いてたんだね! 待ってて! 今なにか買ってくるっ!!!」
渚帆が席を離れ静寂が訪れるテーブル。
「——はっ! あ、渚帆さん私は別にお腹が空いていたわけじゃあ……ってもうとっくの前に居ませんでしたね……」
「ごめんな、大好きなたこ焼きもポテトもあたしが食べちまって」
茹でた花咲がにのように頬を赤く染めた椛さんが、ニヤニヤしながら私を見ながらほざいてます。
「私が好きなのはたこ焼きでもポテトでもなくてっ——むう……」
「そう、ぷりぷりするなって、まーた怒ったら愛らし……おっと」
今日も私はモチを焼く。
ぷくーとほっぺを左右に大きく膨らませ、だって私は餅屋の娘ですので仕方ありません。餅屋の娘は皆こうなのです。
おもち
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