第53話 じゃあ一緒にメシ行く? 【翔】
先生が一人亡くなって。
先生が一人逮捕された。
すぐに新しい先生が4人やって来て、当たり前の様に普通に馴染んだ。
一樹と優の担任は新しう女の先生。
体育教師は直塚の代わりに二人赴任してきた。
残り一人は二人目の俺たちの学年の副学年主任になった。
学校はいつの間にか平穏を取り戻して、変わらない日が流れる様になっていた。
しばらく一花は変だったけど、そこは一樹がちゃんと見ていたわけで、別に一花の所為てわけでもないのに、あの直塚の野郎の体育館での告白事件を関連付けられて、心無い奴らからは一花の所為で直塚が白井を殺すことになったなんて無責任な事を言い出す奴までいる。
本当に大迷惑だよ。
俺も一花を元気付けたいけど、それは一樹の役目だからな。
余計な事をしないようにしたい。
そして、俺は今晩も一樹の家に行くけどな。呼ばれてるわけでもないけど、まあ、普通に行くんだ。
この前のイワシもうまかったなあ。
今回はそのお礼で比内鶏を家から届けてるから、今日は一樹の『鳥尽くし』が食えるのが楽しみっだ。
卵も30個ほど、届けてもらってる。
普通に焼いてもうまいけど、一樹の事だから、きっとまたうまい飯を作ってくれるだろうと思ってる。
そんな思っている俺は今は、部活の中でクールダウンをしているところ、軽く走って、ストレッチ。
足の指先まで上して、リラックスしているところ。
ちなみに、俺は槍投げの選手なんだけどさ、自分がどういう経緯を辿って、この槍投げにたどり着いたのか、今ひとつわからないんだよな。気が付いたらやってた感じ。
まあ、つまらなくは無いよ。
こうして毎日やってて飽きないしな。
なんか、こう、ビュッと投げ飛ばすと、本当に気持ちいいんだよな。
特に飛距離とか気にしたことはないけど、これでも一応、強化選手なんだよな。
だから、槍はけっこ上手いし好きだな。
割と、一樹も一花も本気で応援してくれるのは嬉しいしな。
さて、体も落ち着いたところで、発汗後の体の手入れでもして帰るか……。
なんて思っていると。
「ご苦労様」
って声がかかる。
三枝先輩だった。
「お疲れです」
俺もそういうんだ。
三枝先輩、なんか俺をじっと見てる。
何か言いたいのか?
「あの」
という俺と、
「翔くん」
って言う三枝先輩の言葉は同時だった。
どうぞ、って意味で、手のひらを彼女に向ける。すると、
「今日、翔君、時価あるかしら?」
とか言う。
いや、俺はすぐに帰って、一花の家で一樹の鳥尽くしを食べ仲ればと思っていたから、
「いえ、今日はすぐに帰りたいので」
って言うと、
「一花さんの家?」
この辺も最近知ったけど、俺と優とその他の特定の人間が、一花の家に入り浸ってるって言うまことしやかな噂が広がっているらしい。
噂でもないけどな、事実だけどな。
だから、普通に、
「ええ、本日は鳥の日なんです」
って真面目に答えた。
すると、三枝先輩は、
「今日は私に付き合わない?」
って言ってから、
「そんなに、一花さんの造るご飯は美味しいの?」
とか聞いてくる。
本当に、人ってなにもわかってない。わかってないのに、変な感情に走ったり、怒ったり、思い込みだけで、割とギリギリのところまで行ってしまえる。
「二人っきりにしてあげなよ」
ともいわれる。いや、ちょっと夕食くらいは賑やかな方がいいってのは、あいつらの希望なんだが。
そして、三枝先輩は、
「それに一花さんは人妻だよ、他の人にしなよ」
とか言う。言いながら手に持ってるバインダーで顔を隠してしまう、何を照れてるんだ?
その四角四面の紙を挟み込むだけの板からはみ出した耳は真っ赤たった。
この先輩って、なんで俺にそんな事を言ってくるのか皆目見当がつかいないでいる。
そして、まるで消え入りそうな声で、
「私ともご飯を食べてよ」
とか、とても小さい声で言った。これ、俺の耳じゃなきゃあ聞き取れなかったよ、よかったな三枝先輩。
そっか、先輩も腹減ってるんだな。
ってそう思ったら、急にさ親近感ってのかな? そんな感情が沸いたんだよ。
だから、俺は言ったんだ。
「じゃあ、先輩、今日、これから一緒に飯でも食いますか?」
その時の三枝先輩の笑顔ったらなかったな。本物の笑顔って、輝くんだよな。
「ええ、いいの? 一緒に? うれしい」
今にも飛び跳ねそうな、そんな三枝先輩。
「すぐに準備するから、今日は部活棟の掃除とかいいや、着替えたら校門前ね!」
と言ってその場から駆けて行ってしまう。
じゃあ俺も着替えるか。
と、その前に、俺は芝の上に無造作に置いてあるタオルと一緒に置いていたスマホを手に取り、メッセージをお送る。相手は一樹だ。
内容な、「今日の夕食、一名追加でお願いします」
きっと、三枝先輩も、一樹のご飯に舌鼓を打ってくれる事だろ会う。
やっぱり、飯って沢山で食べた方がおいしいからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます