第41話 俺、最低ゲス野郎だからな 【淳】

 あいつに言われた通り、指定されて女子生徒に接触してみた。


 蝶よ花よと甘やかされた典型的な生徒だったな。近づきなオーラ全開だったぜ。


 なんで、俺がこんな真似を……。


 まあ、今は下手に出るさ。


 前の学校で色々あった俺は、あいつのおかげで、この学校に着任できたんだからな、その恩の分くらいは働いてやるよ。


 俺は、高根たかね あつし、チンピラみたいな下品な顔して笑っちゃいるが、これでも数学の教師だ。


 問題は多いが、なんとか首の皮一枚くらいで繋がってる、ちょっとおしゃま先生ってわけだ。


 あいつとは、大学の時から競い合っていた。


 それが今では同じ学校で教鞭を奮ってる。


 ライバル関係???


 ちがうちがう、そんなたいそうなモノじゃない。


 ただ見下してやりたいんだよ。


 お前は俺以下だってな。


 常に、お前ごときが俺に敵うかよ、って身の程をわきまえな、って、そう言ってやりたかったんだよ。


 つまらない事だ?


 人と張り合事とか?


 ばっかじゃねえ?


 人は人の社会の中で、それは最高な遊びなんだよ。


 モノや環境でなく、俺は人を使って遊ぶんだ。だから、周りにいる人間なんてみんな玩具だね。


 俺を楽しませてくれる、遊具みたいなもんさ、男も、女もな。


 で、今度はあいつの為に、ここにある玩具で遊んでみようって思ってたんだ。


 中でも、あいつが意識してる女がいてさ、珍しく夢中になってやがんの。


 いくら人妻って言っても、一高校生じゃねーか。


 あれだけ、女泣かせてきた鬼畜がさ、えらく用心しながら、徐々にそのエリアを狭めているのには笑える。


 この制度、つまり早期未成年婚を利用すれば、俺たちは『淫行罪』だって回避できるんだ。


 難しいが、不可能じゃない。


 第一、この教師って立場もさ、立ち回り方次第で、女を食い物にする俺たちみたいな男にとってはかなり、有利に働くんだぜ。


 あの、直塚って言ったか? 脳まで筋肉な体育教師。


 ほんと、バカだよなあ。


 なんでプロポーズなんてしてるんだよって話だよ。


 自分のエリアに引き込んだら、とっとと押し倒せって話だ。


 あとはどうとでもできるだろ?


 みんな複雑に考えすぎなんだよ。


 年齢とかさ、立場とかさ、生徒だの教師だのって言っても結局は男と女なんだよ。


 あいつが夢中になってる女子。


 一花っての。


 あの年で、なかなかいい女だ。


 人妻ってのか、妙に色っぽいよな。俺の場合は先生とはいえ、あんまり近くには行けない立場だけどな。そもそも進学クラスだからな。


 それにしてもだ。


 その旦那。


 あの数藤一樹ってやつの、どこがいいのかわからん。


 男性としての魅力皆無だろ?


 よなよなしてやがるし、部活とかも入ってねーしな。一発、俺が指導してやりたいくらいだ。


 なのに、あいつ、モテるんだよな。


 一樹って生徒。


 あいつの話によると、他にも言い寄られてるっていうじゃねーか。


 あんなののどこがいいんだよ?


 聞けば、女子ボクシングのホープ、モデルみたいな女子にも言い寄られてるって話だし、気が付くと、あの財閥、綾小路の娘とも縁が深いみたいだ。


 それと、学校外じゃあ、政治家の娘もいる。確かまだ中学生くらいの女子だ。


 なんにしてもモテモテだ。


 俺の学生時代なら考えられなかった。


 スポーツが得意って訳でもなく、担任やってるあいつの話なら成績も悪いって、だからって喧嘩とかできるタイプでもないしな。


 一応、得意なジャンルがあるみたいだけど、確か『家事全般』って女子かよ? 下らねえ。


 ああいう奴は、ガッツんとやってやるとすぐにおとなしくなる、まずは旦那の動きを止める方が簡単だな。そのあと、じっくりと奥さんに手を出すってのが定石だ。


 俺も、以前の事があるから最近、女日照りだったからな、しばらくは人妻女子高生で遊んでやるさ。


 あんな高校生夫婦なんて、どっからでも崩してやれるんだよ。

 

 それに担任が協力してくれるんだ。


 今度は直接行ってみるか?


 いやいや、もっと周りから楽しまないと勿体ないっぜ。


 本当に、いい学校だよ。


 あの幸せが張り付いた顔が絶望に変わるときこそ、俺の最大の喜びなんだ。


 ホント、笑いが止まらねーな。


 ま、俺は最低のゲス野郎だからな。


 自覚あるぜ。


 だから周りのことなんか知ったことかよ。

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