第42話 手作り餃子と不倫 【一花】

 みんなで餃子を作ってた。


 一樹はラー油買い忘れたって、コンビニまで走ってる。それに翔も一緒について言ってる。アイス買ってくるって。


 「なあ、一花?」


 不意に親友に呼ばれる、今、ちょっと手元に集中しているから話かけるのは遠慮して欲しい私なんだけど、でも、話題が、


 「なあに、優」


 って答える。聞くよ、話って態度。


 今、私と優はせっせと餃子を作っている。


 私の横には美子ちゃんもいて、この子、手先が器用なのよね、私と優の倍の速度でモリモリ作っていたくれる。


 「あたし、一樹と浮気してるんだよな?」


 って聞いてくるから、何を今更と思って、


 優が一樹に恋焦がれてるだけでしょ? って言いたかったけど、どうやら、そういう事を言いたいのじゃないらしい優は、唇を尖らせて、


 「あたし、気が付いたんだよ」


 ってグッと顔が近づいてくる。ドヤ顔かわいい。


 「何を?」


 私は尋ねる。そう尋ねて欲しそうだから。


 すると、優は言うんだよね。


 「これって、もしかして、『不倫』ってやつじゃないかってな?」


 いや、普通に優の片思いだよ、って言ったら話が終わっちゃうから、


 「そうなの?」


 って聞いてみる。


 あ、美子ちゃんの手が止まってる。興味あるんだね、この話題。


 そして、優は聞いてくる。


 「で、な、不倫ってどうやってやるんだ?」


 いや、それ正妻に聞く事じゃないでしょ?


 でも、まあ、優の為に一回は考える。


 「そうだね、私という妻がいる状態で、優と一樹が相思相愛になると不倫か?」


 すると、優は、


 「一樹って、私の事好きかな?」


 って、だからそれは正妻に聞くことじゃないよね?


 でも、まあ、いいか、優なら、ってなる。うん、だって嫉妬とか出てこないんだよね。ここまで明け透けだと、好きってなんだったっけ? くらい、感情というか、気持ちの持って行き方が行方不明になる。


 それに、一樹は優の事、ちゃんと大切にしてると思う。


 私の言いつけ守ってる。ちゃんと一人の女の子扱いをしているし、そういう風に意を使ってる。


 そして、私の一樹を、ここまで『好き好き』してる優を私はそんな、嫌な気持ちでもないんだよなあ。


 一樹が浮気するなんて思えないし……、ううん違うなあ。


 この感情のほとんどは優に向かってる気がする。


 きっと、これは私がちゃんと優の事が好きだからだ。


 じゃあ、一樹の共有を考えてるって事?


 優と?


 荒唐無稽な事を自分で考えてしまう。


 いやね、ありえないでしょ?


 って思う私は、ちょっと優に意地悪な事をする。


 「あとね、優、不倫って、法的には姦通しないといけないみたいよ」


 確か間違ってない筈。


 「かんつうって何だよ?」


 って聞かれる。


 だから、


 「優を一樹が貫通しちゃうって意味だよ」


 あ、美子ちゃん、せっかく包んだ餃子を落とした。でも、優は顔全体で?????って顔してる。かわいい。


 こうしてみると本当に美人な優がね、間抜けな顔してるのはかわいい。


 こういう時って、男性の言うところの『萌え』ってわかるのよね。


 「なあ、それはどう意味だ? 一花、もったいぶらずに教えろよ」


 って言ってるくから、


 「セックスだよ」


 って教えてあげた。


 すごい、優の顔が一瞬で真っ赤になった。湯気も出そう。


 こんな顔を見せる優をね、もっと困らせたい。いじりたい。そう思う私のこの感情は性的興奮だ。


 私、同性として優を好きなのかな?


 普通に一樹とセックスして、さんざん気持ち良くなって、男性を楽しんでる私は、この親友に対して、得体の知れない、でも確実に、小さいけど火傷しそうな火を、心の中に宿していることを自覚するの。


 いけない妻だわ私。


 形にならない欲が顔に出ていたのかしら、ふと気が付くと、私の顔を、その表情を凄い顔して見てる美子ちゃんがいるの。


 なあに? 美子ちゃん、こっちに混ざる?


 声にも出さない私は一体、どんな顔してるのだろう?


 この関係が、この先どうなるかなんてわからない。


 何事もなく、希釈されるか、それとももっと濃くなっていゆくのか?


 わからない。


 わからないけど、今は餃子を作ろうと思うの。


 集中しなきゃ。


 


 

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