第2話 とある高校生夫婦のテスト前夜の攻防②妻として

 その時、私は布団の中にいた。


 今日という一日はすべて終わって、そして寝床にはいったんだ。


 夫と一緒に、今私は眠りに意識は向かう。うとうとし始めてところだ。


 明日からいよいよテスト期間だ。


 準備は万全。


 今度こそトップ10入りしてやる。


 うちの学校って、テスト結果を上位25人まで張り出すんだよね。


 で、以前だと、22位。


 もっと上をとれるって思ってた。


 でも以外に上位は厚かった。


 今回はリベンジしてやるんだ。


 あとは、明日の体調しだいかなあ……


 と、横で、本来なら寝息を立ててる夫を見る。


 まだ起きてるなあ…。


 結婚してから、半年。


 私たちは、早期未成年婚をした夫婦だ。


 だからお互いに高校生、一年生。


 私達は、高校入学と同時に籍を入れた。


 迷いなんてなかった。


 私は、夫である一樹かずきと一日も早く『家族』になりたかった。


 友達とか恋人とか、そんなものではなく、絶対に揺るがないって、そう世間からもいわれるくらいの、たかが紙一枚の関係とは言え、誰からも認められる、法律にも定められる夫婦になりたかった。


 中学3年の終わりには、もうそう決めてた。


 もちろん両親は反対しなかった。


 きっと私と一樹の親よりも一樹の事を知る人達で、一樹を信頼し、信用していたから。


 全ての条件が整っていて、だから結婚に迷いなんてなかった。


 生活する場所は、幸い一樹の両親が残していってくれた。


 しかも私の家の隣という立地条件。


 友達も親友も、特に何も言う事は無かった。


 「いや、あんた達ならアリでしょ」


 っていうのがおおむねの意見だった。


 意外だったのは、教師からの反対意見が多かった事。


 両親の話しによると、もともと文科省がこの『早期未成年婚』には反対の意思を示していたらしい。あと、国交省の一部もだって。


 まあ、あれね、公共交通機関の無料とかも、私達早期婚姻者にはそんなメリットもあるからね。


 なんて考えてる私の体をもぞもぞと触って来る一樹の手。


 もう動きがイヤらしい。でも、そこ一樹の好きなおっぱいじゃないよ。残念。


 本当に一樹はおっぱいが好き。


 男子ってみんなそうだね。


 一樹、チェって顔してる。可愛い。


 あ、でも再三挑んで来る。


 だから私は言った。


 「テスト前、テスト中はエッチしないよ」


 ちょっと面白くなさそうな一樹の顔。


 ションボリまでいかないけど、ちょっと寂しそうな顔。可愛い。


 でも、むくれもせず、あおむけにもどって、ゆっくりと寝ようとしてる。


 『明日頑張ろう』


 とか言ってる。


 仕方ないなあ、私は行き場のなくなった一樹の手をそっと握って、一回だけギュってした。


 そしたらさ、一樹がね。


 ニパァって、笑うの。顔は天井に向かったまま、本当にうれしそうに笑って、ちょっと私の視線に気が付いて、顔まで布団をかけてしまう。その顔をもっと見たいのに、隠れてしまって。


 でね。


 こっちとしてもね。


 そんな顔見せられると、辛抱たまらん!


 って、もう可愛いかよ!


 ってなって、思わず私は一樹に襲いかかって行った。


 布団を引っ剥がして一樹に乗り込むの。


 「え? 何? だめじゃないの?」


 乙女か! ってなってる一樹の余った手を私の指で絡め一樹の唇も私の唇に結ぶ。


 布団に入る前に塗った薬用のリップクリームが、一樹の温度と私の温度で燃え立つ様に鼻先にオレンジの香りを揮発させる。


 仕方ないでしょ。


 世界の平和と人類の繁栄(繁殖)は明日のテストより大切なのだから。


 大丈夫、すぐに終わるから。


 いや、すぐに終わっちゃうのはなんか寂しい。


 さ、一樹、世界を救済するための崇高な行為。


 がんばろうね。


 

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