第39話 安心SEX 【一花】
結局、私の考えすぎだったかも……。
昨晩まで、警察に方々に警戒パトロールを強化してもらったけど、すべては私の杞憂に終わった。
もちろん、いい事だ。
おかげで、今夜はゆっくりと一樹を抱ける。
だって、心配ないから、緊張も無い。
だから、安心は人の性欲を上げるわ。
ほっとしたときに、一樹がとても魅力的に見えるのよ。
これって、もう動物よね。
ともかく、子孫を繁栄させるって本能は、どうしようもなく一樹を求めるの。でも動物のそれとは違って、私たち、貪欲で常に発情できる人間は、互いの体の味を、その旨味を貪欲に嘗め尽くすの。
キスは、キスじゃないのよ。
互いの唾液の交換。吸うのよ一樹を。だから私も吸われるの。
ホント、りっちゃんの言うとおりね。衛生概念なんて、頭から吹っ飛んで、もう一樹のすべてが愛しいのよね。
あ、でも、首とかはダメ。
学校で目立ってしまうから、脇腹とか吸い付くのよ。
一樹はずっとおっぱい。
私、対して豊かでもないのだけれども、でも、ホント、一樹に求められるのは嬉しい。くちゃくちゃって私の濡れる音に、一樹の優しい指先。
声が裏返ってしまう。
優の出会った樹里さんが何者だったのか?
その人物は何を目的にしてたのか?
今はそんな事、全部忘れてしまってる。
ついさっきまで、深刻に考えていたのに、もうお、そんなの今は必要ない。
欲しいのは手を伸ばして、力いっぱい抱きしめて、足も一樹の腰に絡めて、その体を引き寄せて、隙間をなくすくらい密着しても、一つになれない互いの体を愛おしむ。
ああ、とどかないから、求めて、わからないから求め合うのね。
私、一樹と、生まれた時からずっと一緒にいるけど、不思議なの。全然足りなくて、もっと欲しい、もっと、もっとって求めてしまう。
ああ、あ、全然足りないよ、一樹、もっと私のモノになって、私だけのモノになって、ああ、まだまだ、全然足りないよ。
まるで、底なしの欲望。
互いに頬をくっ付けていた一樹の、ちょっと髭がある、その頬が、でも一樹の髭ってやわらかいんだよ。くすぐったいの。
その密着していた頬が離れる。
首に回していた私の手を振りほどいて、少し高所から私の顔をじっと見てる。
その表情はね、セックスするための、私にだけ見せる表情。征服感とか、恋愛とか、意地悪くも優しげにも、どこか誇らしげに見える。かわいい。でも……、
離れちゃ、ヤダ。
またくっつきたくて、腕を伸ばす、その手から逃れる様に、そのまま私の胸に顔をうずめて、自分の体を片手でささえて、片方の手で乳房をつかんで、もんで、そのまま唇に乳首を、かみつくみたいに吸い付いて、優しく噛む。
体に電撃が走る。背中が反る。足の指が伸びに伸びてしまう。
ああ、この顔。乳首を唇に含んだ、一樹の顔。
気持ちいいってのもある。
でも、いつも思う。いつも頭の中でいっぱいになる達成感。
好きな男に乳首を座れるって、やっぱり格別な満足感があるの。
すごい、すごい、ってバカみたいに頭の中を駆け巡るの。
今の私、頭の中、セックスと一樹の事だけでいっぱいになってる。
もう、ほかの事って、全部、おまけ程度に考えている。
もういいや、謎の樹里さんとかさ、一樹と私がほかに及ぼす影響とかさ、人妻フェロモンが全部を惑わすとかさ、優がかなり本気で一樹を好きになってる事とかさ、直塚のプロポーズとかさ、本当にどうでもよくて、体の中の一樹だけ、この私を体を好き放題してるヤンチャな一樹が、こうして私の体に、行為に、声に反応して、喜んで私を喜ばしてくれるから、これだけで、もういいってなってる。
今の私、もう、一樹との快楽によって、本当にバカになってるなあ、ってわかるけど、きっとIQ10くらいになってるってわかってるけど、好き。一樹好き。もう、これだけで頭がいっぱいになってるわ。
だって、一樹も一緒だから。
今は一緒だから。
いつも、一緒だってかぎらないけど、この時、この瞬間、セックスしてるときは、もうほかのことなんてどうでもいいのよ。
だから、今は、
もっと
もっと
もっと!
もう、私、性器でものを考えてるの。
ああ、楽しいなあ、一樹とセックス。
このまま溶けてしまえばいいのに。
一樹が、私が、布団とか、この家とか、もう世界とか?
全部、溶けてしまえばいいの。
もう、悩むのやめた。
今は、このまま、穏やかで気持ちのいい波の様に二人で揺れて、ずっとこのままで。
光も影もない、全部見てる二人だけの世界だから。
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