第28話 え? どういうこと? 【一花】
ああ、なんかため息でちゃう……
「はあ……」
思わず、安堵からため息が。
強力な味方がいるの。
そして、ここは私のエリアなの。
だから安心してるのよ、で、ほっとしたため息なのね。
今日はちょっと、相談に乗ってた。
今は市役所の、例の二階の相談室にいる。特に問題がなければ1~2か月に一回のこの、早期未成年婚者、若年妻相談も、特に問題がある場合はこうして相談に乗ってもらえるのよ。
そして、目の前にはりっちゃん事、桜川律子先生、精神医なのね、で、特に男女の深層心理とか得意分野なの。
そんなりっちゃんが、真剣な面持ちで、私の話を聞いてくれている。
なんか、もう、それだけで、心が軽くなってる気がするのよね。
ちょっと湿った胸の内が晴れていくのがわかるの。
さすが、りっちゃんだわ、本当に名医。
よくわからないけど、私の感情もバグってる感じがするのよね。、
もう、泣いていいのか笑っていいのか怒っていいのかわからない。
昨日、学校でね、あまり話したことない女子がいてね、まあ、私のクラスなんてあまり仲間意識とかないから、友達ってのもあんましいないから、それが普通って割り切ってて、みんな自分の事に忙しいから、決められたことや、先生に頼まれたこと、日直とかはきちんとするんだけど、それ以外で生徒同士が仲良くしているところなんてほとんど見ない、そんなクラスなのよ。
で、そんなクラスの女子の中に、家柄も、姿も、態度も、どっからどう見ても、お嬢様っていう3Dモデルかよ、って言いたくなるくらいの完璧な女の子がいるの。
その子がね、午後の休み時間にいうのよ。
「ご主人とセックスフレンドになりたいので、お願いしておきました」
って、本当にいい笑顔で言うの。
え? どういうこと?
たった、それだけの疑問で、その日の午後は過ごせたわ。
何がおこってるかわからないくて、気が付いたら放課後で、そして気が付いたら、家に帰って、一樹の襟首ひっつかんで、叫んでたわよ、ずっと思ってたことがやっと口に出せたよ。
「え?! どういうこと?!」
優の事があったばっかじゃん。
それに白井先生にも聞いたよ、一樹ってよく綾小路さんと一緒にお弁当食べてるって、「あれ? 一花君じゃないんだ……」
目撃されてるよ、浮気現場。
もう、今日という今日は許さん!
怒りに震えたのね。
でもね、襟首持って、怒り心頭の私を前に、何か言って、とか、違うなら釈明しなさいよ、って言うだけど、一樹ってこういうシチュエーションって本当に苦手なの。
基本的に、私が怒ると、めったにないけど、たまに母さんと大きな喧嘩して今う時もあるけど、そんなプリプリしてる私を心配することはあっても、口を出して来ないのよね。
基本的に女性が怒ってると、何も言わなよね、一樹。ただ黙って嵐の通り過ぎるのを待つ感じなのよ。
だから一樹がいい感じに私を避けてくるときって、『え? もしかして、私、今、怒ってる?』って気が付ける指標でもあるのよ。
でも、今、私に襟首つかまれてるから、一樹、逃げられない。
すっごい困った顔して、首をひねって、私の顔を見ないようにするのね、アクティブに視線をそらしてくるのね。
かわいい……。
こういう時って、怒ってても好きなんだよね。笑っちゃうんだけど、イラっとしても、暴君になっても、私の中の一樹へのの好きは途切れることがないのよ。
節操とかないわね、自分でもどうかしてると思う。
「回想は終わったかしら?」
ってりっちゃんに言われる。
ああ、そうだ、今は一樹のかわいいところを思い出してる場合じゃないんだ。
私は、思い切って聞いてみた。
もう、優の事だってあるし、美子ちゃんもそうだわ。
文句を言ってるわけじゃないけど、一樹って、いい意味でも悪い意味でも、本当に普通の男の子なんだよ。
スポーツとかできで、成績よくて、顔が良くて、そういうタイプじゃないの。
平凡で、当たり前で、どこにでもいそうでいなくて、ご飯とか作るの上手で、掃除とか洗濯とか好きで、で、私を大切にしてくれるの。
普通の人から見れば目立つところなんて何もない、ちょっとかわいいだけの男の子なんだよ。
でも、
なんで?
どうして?
「なせ一樹ばかりがモテる?! 妻帯者じゃん、彼女どころか私って奥さんいるんだよ?」
思わず叫んでしまったの。
そしたら、りっちゃんがいうの。
「どうしてモテるかって、そりゃあ、結婚してるからでしょ?」
ここ最近、本当にこの一言に尽きるわ。だから、もう一回言うね。
え? どういうこと?
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