第3話 夫と妻。親友から見た『お盛んですね』
さあ、今日からテスト期間だぞ。
僕たちは学校に向かって歩いていた。
うう、太陽が黄色い…。
なんだろうなあ、ちょっとしたそよ風で体を押されてる気分。
ちょっと体幹に揺らぎを感じつつ、それでも、この早朝に健気に学校に向かう僕に、
「ほら、ちょっと大丈夫? フラついてるよ」
って一花に言われる。
うん、まあ、そうだね。
思わず、僕は一花をジッと見てしまう。
すると一花、
「なによ?」
とか、ちょっと怒ってる口調で言われる。
「いや別に…」
って、それでも言葉を濁すと、一花は、二人きりなので言葉も選ばす、
「昨日は悪かったわよ、ちょっと私もその気になっちゃってて……、でも仕方ないじゃない、私だって止められない時はあるの 一樹にムラムラするの! 愛してるんだもん、しょうがないでしょ?」
って言うんだよね。
まあ、いいけど、テスト受けながら、眠っちゃいそうだけど、僕だって一花は好きだからいいんだけどね、でもちょっとあの回数は無いかなぁ…。
なんて口には出さずい思う僕は、どうって事のない歩道の小さな突起に躓く。
いつもより足、上がってないなあ。って、これ転ぶなあ、なんて考えてると、
「おっと!」
って言いながら、僕を抱きとめるたくましい腕。
「おいおい、よそ見か? あぶねーな」
なんて声をかけてくれるのは、声でわかる。僕の親友の
「あ、悪い、助かった」
って僕は姿勢を治す。
すると、
「ありがと」
って一花はまるで翔の手から僕を奪う様に、自分の横に引っ張る。まあ、自然な感じだけど、この翔と一花、言葉は交わすものの、まともに互いの目を見ようとはしないんだよね。
まだ、あの中学2年生の頃の事を引きずってるのかな?
この二人、結構、この界隈(通っていた中学校)では割と有名な事件を起こしてるからなあ『デットエンド事件』。教師すら巻き込んでるから、この手の話題ってなかなか消えないよね。
でも、まあ、それでも、平和になっているんだから、今はそういうのいいんじゃないんだろうか? って僕も思うけどね。
もちろん、僕も当事者さ、でもだからといって、その話題の起因にも作用もしてはなくて、無理やり傍観者な立ち位置だったから、その当時の話はしない事にしてる。
だって、当時をちょっと振り返っただけで、一花も翔も本気で怒るから、怖くて話題すら振れない。
「なんだよ、顔色も悪いぞ、奥さん、旦那の健康管理どうなってるんだ?」
なんだろうな、翔の言葉に若干の刺を感じるんだけど気のせいだよね。
「いや大丈夫だよ、病気ってわけでもないからさ」
って言うと、僕よりも一回り太い腕にバンバンと背中を叩かれる。
こいつ、普通に力あるんだよなあ。陸上とかやってるしね。普通にマッチョだけど、割と顔はイケメンで女子には人気あるんだよなあ。
「ちょっと乱暴にしないでよ、一樹はあんたと違ってデリケートなんだから」
って、まあ男子同士の叩き合い? 挨拶みたいな暴力を一花が咎めると、
「いや、大丈夫か? 今、軽く叩いただけで、倒れそうになったぞ」
って割と心配そうな、っているか本気で心配し始める翔。
「いや、平気だよ」
って普通に安心してもらいたくなった言葉に、翔は何かを思いついたように、ちょっと意地悪な顔してさ。
「なんだよ? お前らテスト前だってのに頑張ってたのか?」
って言うんだよ。
結構ヤラシイ顔してニヤって笑う翔。
僕としては、
「…………………………」
そして、一花としても、
「…………………………」
ってなってしまう。
一花については気まずそうな顔して、僕の顔も翔の顔も見ない様にしてる。
なんだろう、とっても気まずい空気が漂う。
いたたまれなくなったのか翔は言うんだ。
「なあ、頼むよお前ら、嘘でもいいから否定してくれよ」
学校まで、あと5分ほどだ。
この空気のまま行こう。
いや、だって、もう、しょうがないじゃん。
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