第14話 廊下を走ってはいけません
今日はホームルームのみということで、自己紹介と班決めを終わらせると直ぐに帰らされた。
そのため俺たちは、まだ昼前だと言うのに学園から帰ることになったのだが……
「お待ちしておりました、
「今なんか馬鹿にされた気がする。」
学園の正門前にルシアが佇んでいた。
「おっ、ルシアさん。お久しぶりっす。」
「えぇ、お久しぶりです。うちのアホがお世話になってるようで。」
「いえいえ、このアホにはいつも助けられてるっす。」
なぜこいつらは本人の目の前でディスを続けられるのだろうか。
「……で、なんでここにいんの?ルシア。」
家で待ってるように言ったはずなんだけどな。
「
何故だろう。一見主人至上主義に見えるのにそこはかとなくバカにされていると感じるのは。
「そうか。だが残念ながらお前のご主人は犬と同レベルの知能を持ってるからな。家に帰る位はできるんだ。だから次からは家でゆっくりとしているといい。」
「
「今多分本音と建前が裏返ったな。」
「
段々化けの皮が剥がれてきたな、こいつ。
「あっ、そうだ。収入の当てが出来たから給料の心配はしなくていいぞ?」
「してませんが?」
「そっか。」
「お二人とも仲良いっすね〜。」
「当たり前じゃないですか。私と馬鹿主はズッ友ですよ、ズッ友。」
「ズッ友とか死語じゃね?」
「は?現役バリバリですが?ついでに私はピチピチですが?」
「知ってるし聞いてない。」
「それならいいです。」
「……相性抜群っすね。」
うん、俺もそう思う。
打てば響くというかなんというか。ボケを拾ってくれるどころかオーバーヘッドで蹴り返してくるこの感じ、悪くない。
「そうでしょうそうでしょう。私たちは前世からの主従関係ですからね。」
「え?そうなの?」
「ええ、そうです。」
そっかぁ、そうなんだぁ。
「話は変わりますが、収入の当てというのは?」
「エルフの姫様に、俺がとった素材を売ってもらう。」
「は?」
「報酬は査定額の五割。俺的にはもうちょい持ってってもらいたいんだが、ギリギリ納得してくれそうなのがここら辺だから五割にした。」
「は?」
ルシアは今世紀最大の阿呆を見るような顔で俺を見たあと、ラウラに視線を向ける。
ラウラは若干目を逸らしながらも口を開いた。
「あ〜、壱成さんが譲らなかったんすよねぇ……。」
それを聞いたルシアはやはり信じられないようなものを見る目で俺を捉え、口を開いた。
「やっぱりアホじゃないですか!なんですか五割って!五割って半分ですよ!?分かってるんですか!?!?」
「ついでに言うと査定額の5割だから実際にはもっと減るがな。税とか手数料とかで。」
「はぁぁぁぁぁ……っ!!!」
「あぶねぇぇ!!!?!?」
拳を固め殴りかかってきていたルシアを避ける。
「アホっ!アホアホアホアホ!!!!アホぉぉぉぉぉぉ!!!」
るしあは こわれてしまった!!
「命を懸けた冒険者家業で正当な報酬を投げ捨てるとか何考えてるんですか!?!?」
横でラウラが頷きながら同意してくる。
「全くっす。壱成さんはアホっす。間違いないっす。」
「いやいや、本来は受け取れるはずのない金を受け取ることが出来るだけでもプラスだろ。どう考えても。」
「裏でも何でも売れるとこで売りゃあいいでしょうがァァ!!!」
「元大公爵家のメイドとは思えない言葉だな、それ。」
「そんな肩書きに糞の意味もねぇでしょうがァァ!!!」
デスヨネー。
……怒り狂ったルシアは止められない。ラウラは既にルシア側。俺に味方はおらず孤立無援状態(それは今更)。
と、なればっ!!!
「三十六計逃げるに如かず!!!」
腰元から引き抜いた
「あーばよぉぉぉぉ!!!」
「逃げたっす!?!?!?」
「待てコラアホ主ぃぃぃぃ!!!」
ふはははは、何も聞こえなーい!!!俺は風だァァ!!!
そのまま二人を無視して俺は近くのダンジョンへ向かう。
この近くなら【水連過風の中迷宮】がいいか。素材的にも
その後に師匠に会いに行ってみるか。いるかどうかは分からんけど。いなけりゃいないでいいしな。
合宿はまだ先の話だし。そこまで急ぐ必要も無いだろ。焦らず今まで通り地盤を固めて強くなっていこう。
俺は走りながら懐からロンピを取りだし火をつける。
「この体でも煙草を吸うのに慣れてきたなぁ。」
……え?
この短期間で?
早すぎじゃね?
ていうか吸いすぎじゃね?
「……きっ、気の所為だな。きっと結構時間が経ってるんだそうに違いない。」
俺は思考を振り払い更に足を速めた。
「誰にも俺は止められねぇぇぇぇ!!!」
……街中での過剰な魔法の使用により厳重注意を受けた。
すいませんでした。
もうしません。
……土下座で済んで良かった。
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