第24話 とんでもない無理難題も、頼む相手によってはそうでもなかったりする
「いや〜、まさか君が東青家の人間だとは思わなかったよ。」
そんなことを言いながら、ソファーに据わり、寛いでいる
「あんな仮面をつけていたのに、名家の出とは予想外でした。」
と、若干失礼な物言いの
「どうだ? 私の弟子はすごいだろ?」
酔っ払っているのか、二人にウザ絡みをしている
「……どうしてこうなった……ッ!?」
膝から崩れ落ち、涙を流す
「どうしても何も、私があのまま終わらせるわけがないだろう?」
にやにやしながら、そんなことをのたまう師匠。
「……あのまま逃げ切れれば、俺の存在を立証できずに、報奨の件も有耶無耶にできたかもしれないじゃん。」
そういう俺に、更にニヤニヤする師匠。
……やっぱ、俺の師匠はクソだわ。
「……つーか、何してくれてんの? 人の家に勝手に他人あげんなよ、そんなんだからクソ師匠とか、生きる迷惑行為とか言われんだよ。」
「……そんなこと思ってたのか。あんなに頑張って鍛錬見てるのに、そんな風に思われてたのか。あーあ、なんかやる気なくなってきたなぁ。鍛錬とかどうでも良くなってきたなぁ。」
「すんませんっしたぁぁっ!!」
俺は即座に土下座を敢行する。
時には、プライドなんて邪魔でしかないと気があると思うんだ。人間誰しも間違いはある。それを認められない様な人間はろくでもない結末をたどるようになると思うよ。
てめぇのことだぞ壱成っ!
「それで、さっきの話のことなんだけど……」
シュエルが話始める。
「表向きには、オリヴィアさんが助けてくれたことにして、貴方の事は内密にするってことでいい? 貴方が帰ってくる前に、これならオリヴィアさんもいいって言ってくれてるんだけど……。」
「……師匠。あんたってやつは……あんたってやつは……うう……っ!」
「感謝したまえよ、壱成。だが、覚えておけよ。今回は仕方なくだ。お前にもなにか事情があるようだし、それは汲んでやる。」
後光が眩しすぎて、直視出来ねぇよ……っ!!
あんた以上の師匠なんかいねぇ……っ!
「それで、何か欲しいものはある? 君の要望は最大減聞くとこになるから。」
欲しいものねぇ、ぶっちゃけ無いんだよなぁ。
家も廃嫡までとはいえ、でかいのを渡されてるし、その後も寮があるから必要ない。
金は当てがあるから要らないし……。
ほんとになんもねぇな。
俺ってば実は無欲……!?ガンジーよりガンジーしてるよ、間違いない。
どうしよっ……いや、そういえば一つ、欲しいのあるじゃん。
「……無茶振りでもいいの?」
「はい、我々にできることであればなんでも。」
正直、こんなタイミングで、あれの入手ルートが確立できるとは思わなかったが、もし、ここで手に入れられたら今あるアドバンテージを更に確実なものにできる。
……いや、でも国家レベルだからって行けるか?あれ結構、高等技術だしなぁ。
そもそも、シュエルとルナリヤを救ったと言っても、大したことをした訳でもない訳で、そんな奴がこんなん言っても聞いてくれんのかね?
……うじうじ悩んでも仕方ないか。
男は度胸。一発かましてやろうや。
「時間遅延結界の魔道具が欲しい。」
「なんだ、そんなこと。良いよ、その程度なら幾らでも。」
「……へぁ?」
………へぁ?
「言いにくそうにしてたから、何を言われるのかと思ったけど、それぐらいなら全然許容範囲よ。寧ろ、それだけでいいの?」
「……ファッ?」
……ファッ?
「なっはっは! 壱成、お前すごい間抜け面だぜ!?」
え?いいの?幾らでも?
……どういうことだ遅延結界の価値はそんなに低いもんじゃねぇだろ下手したら一つで城建つレベルだぞそれがなんで『その程度』とか言われてんのwhat理解不能だぜこのお姫様さては俺の事を嵌めようとしてやがるなHAHAHA俺はそんなもんに騙される男じゃあねぇぞやってやるよ全面戦争だ真っ白な花畑を嫌いな赤色で染め尽くしてや
「戻ってこーい。」
バキッ!
「あべふっ!」
……はっ!俺は何を。
「良かったな、壱成。遅延結界貰えるってよ。」
あ……ああ……なんだよ、夢じゃなかったのか。
「……いいのか?ほんとに?」
未だに半信半疑な俺に、シュエルは呆れ顔で言い放った。
「確かに遅延結界は、そこそこいい値段するけど、私これでも一国の姫だよ?その程度なら全然問題なし。て言うか、国をくれとか結婚してとか以外なら大抵聞くよ。命の恩人なんだから。」
やべぇ……やべぇよ。背後に金のプールが見えらァ。俺ァ、とんでもねぇ
ちなみに今のは、金持ちのリッチと魔物のリッチをかけたダブルミーニングだ。
……どうでもいい?あ、そうですか。はい、すいません。
時間遅延結界は、その名の通り、結界内の時間の流れを遅くする魔道具だ。精神と〇の部屋みたいなやつだ。
特異属性たる時属性の適性を持つ魔道具士という、とてつもなく希少な人材を必要とし、又その魔道具の作成難易度の高さも値段を釣り上げる要因になっている。
原作では、その詳細な値段こそ語られなかったものの、一つで城が建つとか、国が傾くと言われる程の超希少魔道具なのである。
……まあ、シュエルの反応を見る限り、国が傾くというのは大袈裟だったのだろうが。
それでも、高価なことには変わりない。
シュエルやルナリヤ、
この魔道具を、きっちりと利用して、もっと強くなっていこう。
決意を新たにし、意気込んでいると、シュエルとルナリヤが立ち上がり
「今日はお邪魔しました。ちゃんと結界の事は伝えておきます。改めて、助けていただきありがとうございました。」
シュエルの言葉に合わせ、ルナリヤも頭を下げる。
「やりたいようにやっただけだ。気にすんな。」
その言葉に、もう一度頭を下げた二人は
「それでは、失礼します。」
そう言って、俺の家を出ていった。
入学前のイベントはもう無いはずだ。
やることはもう少ない。少しずつ、前に進んでいこう。
入学まで、あと一月。気合い入れていこうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます