第17話 オールラウンダーが強いのではなく、強い奴がオールラウンダーになるのだ
「壱成。お前さん、鍛える属性は決めてるのか?」
休憩中に、オリヴィアが聞いてくる。
この世界の魔法は、
これには、魔術師間の実力差……つまりは
この世界の魔法は、全ての人間が使うことが出来る【基本属性】。
基本属性を鍛えることで使えるようになる【派生属性】。
二つ以上の基本属性を鍛え、組み合わせることで使用可能になる【複合属性】。
このの三つに加え、ほんのひと握りの、『天賦の才』を持った人間だけが使える【特異属性】。
この四つで成り立っている。
そして、それぞれの属性には能力値とは別に、『属性値』と呼ばれる、他のゲームで言う『熟練度』のようなものが存在する。
この属性値は、同じ属性の魔法を使えば使うほど増加していくようになっており、属性値が上がれば魔法の効力も上がる仕様になっている。
そして、オリヴィアが言っているのは、どの属性を主属性にするのかということだ。
先程、属性値は、同属性の魔法を使えば使うほど伸びていくと言ったが、当然複数の属性に手を出せばそれだけ成長も遅くなる。
更に言えば、魔法は使えば使うほど、その属性の魔法に合わせて魔力が変化していくため、多くの属性を極めることは困難になっている。
その為、最初の段階では主属性を一つ、副属性にもう一つと言った具合に、多くとも二つか三つの属性に絞ることになる。
最初に決めるのは、基本属性の火・水・風・土の4種か、特異的に全人類が使える特異属性、無属性の中から、自身の主属性を決めなければならない。
無属性の魔法は、属性のプロセスを挟まない分、全ての属性でトップの発動速度を誇る。
しかし、無属性を主属性として行使する魔術師は存在しない。
なぜなら、無属性には属性値が存在しないからだ。
考えてみたら当たり前のことで、『無』属性に、属性値が付くわけがないのだ。
その為、属性値分威力が劣り、10年鍛えた無属性魔法より、3年の属性魔法の方が強い、なんてことがざらにある。
だから、実質的には基本属性の4種の中から、全魔術師が主属性を選ぶ。
そういった事実からの思考の末、俺は自分の主属性を既に決めていた。
「主属性は、風にしようと思ってる。」
オリヴィアは、すぐにその理由を察したのか、納得顔で頷いている。
「……なんだよ?」
「いや、いい選択だと思ってな。壱成のような、近接型の魔術師にとっては最適解だ。風による速度の上昇やその不可視性、それに何より、風は最も汎用性が高い。どんな場所でも不自由なく使えるし、戦闘以外でも役に立つ。……うん、さすが私の弟子だな。」
……オリヴィアの言う通り、俺が風を主属性に選んだ理由はそれだ。
俺が近接型である以上、敏捷は高いに越したことはないし、離れた的に素早く追いつくことは必須だと言ってもいい。
そして、風の特性上、見え辛いというのもプラスだ。
戦闘中、武器に気を使わなければならない相手に、不可視の魔法はやり辛いはずだ。
戦闘以外でも、風の流れでの索敵や、拡声、風の膜による防音などなど、今考えつくだけでもその汎用性の高さはピカイチだ。
それに……
「火や水、土と違って、その威力が減衰するような地形が存在しないのも良い。どんな場所でも強いってのは他の属性にはない強みだ。」
魔法は、地形による影響も受ける。
例えば、火山の近くなら火の属性が強まり、海の近くなら水の属性が強まる。
地形の影響は確かに大きく、その地形にあった属性を使えるというのはひとつの強みと言える。
……しかし、地形の影響を受けるということは、何も強くなるだけでは無いのだ。
火山の傍では、水は弱まり、海のそばでは火は弱まる。
風にはそういった影響がない。
それも、主属性に風を選んだ理由の一つだ。
「なら、副属性も決めてるのか?私としては水を押したいんだが。」
「水か。……風とも相性はいいし、ありだな。回復できるまで鍛えれれば最高だけど……。」
水は、基本属性で唯一回復関連の魔法が使える属性だ。
これは、水に対する
「属性は風と水で。あとは、俺のスタイルのことなんだが……。」
「なんだ?現時点でそこまで問題は無いだろ?」
そうオリヴィアは言うが……
「何かが起こってからじゃ、遅いだろ?遠距離の敵に牽制できるようになりたい。銃か弓、どっちの方がいい?」
「……今の壱成は、刀の生成で近距離戦、魔法で中距離の牽制をしている。……オールラウンダーにでもなるつもりか?」
「オールラウンダーが強いのは、強いひとがオールラウンダーになるからだよ。俺にはとてもじゃないが無理だよ。あくまで牽制用だ。そもそも、魔法での牽制は、初手の近くに誰もいないような場合じゃねぇと使えねぇ。フレームが足りねぇからな。その為に、遠距離武器を教えてもらいたいんだけど。得意だろ?」
「確かに私は、武器は全て扱えるが、教えるつもりは無いぞ?」
そういったオリヴィアは、こちらを見てニヤリと笑う。
「……なんで?俺あんた以外に宛がねぇんだけど……。」
オリヴィアは、煙草をふかし、ニヒルに笑いながらこう告げた。
「そりゃあ、もっといいもんがあるからに決まってんだろ?」
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