第12話 本人の資質と就いている職種は一致しているとは限らない
「皆さん初めまして。私の名前は、マニヤ・アンタレス。このFクラスの担任を任された魔術師です。」
マニヤ・アンタレスは、優秀な魔術師である。
その実力は、全魔術師が属する組織【魔術協会】により制定された階級でも、上位に位置する【
「あの、先生?」
「なんですか?」
では何故そんな優秀な彼女がこのFクラスに、この学園の最底辺であるこのクラスの担任になっているのか。
それは、彼女以外にも優秀な教師が存在していることも理由として挙げられるが、それ以上に……
「なんで、黒板の方を向いて話しているんですか?」
彼女が人前に立つという事に、ほんの少しの適性も持ち合わせていないからである。
「そんなこと、今はどうでもいいじゃないですか。さ、まずは前の列から自己紹介をお願いします。」
おれはそう結論づけ、生徒の質問を無視したこちらに後頭部を向けながら話す
なんで教師になった?と言いたくなるほど教師の適正がない彼女が教師になったのは、彼女の家がそう言う家だったからとしか言えない。
彼女にとって、裕福で不自由のない生活を送らせてくれる家とはいえ、教職につかなければならなかったのは不幸としか言いようのないことだろう。
(最も、彼女にとって1番の不幸は耳目を集めるのが苦手な彼女が、
と、そろそろ俺の番か。適当に注目を集めないように少し前の席の自己紹介をに耳を傾ける。
「私はエイベル・バンデーです。楽しいことが大好きです。よろしくお願いします。」
そこで聞こえた声の主が
ドジっ娘は最初Fクラスだったってのは覚えてたしまぁ、関わることもないだろうし問題は無いか。
俺はそう考え、意識を次に進んでいる自己紹介に向け……
「アタシの名前はラウラっす。壱成さんとは友人関係っす。よろしくおねがいするっす。」
天井を仰いだ。
その情報いる?絶対いらないよね?ほら、周りの女の子みんな俺の事見てるよ。どんな手を使ったんだみたいな、ありえないものを見るような目で。
いやそりゃ男は基本見下される存在ですし?それがエルフともなれば男と仲良くするなんてありえないですけど?そんな目する?明らかに犯罪者に向けるような目じゃない?それ。
「ほら、次は壱成さんっすよ。」
この野郎その頭顔陥没させてやろうか?
……いや、俺が嫌われる分にはいいのでは?むしろ最高では?うん、最高だ。
よしラウラ、後でなんか奢ってやろう。
「あー、俺は無道 壱成だ。よろしく頼む。」
俺は無難に自己紹介を済ませ、これからの行動を考える。
まずは、今月にあるオリエンテーション合宿での班をどうするかだな。
五人で一班だったはずだが、誰と組むべきか。
まぁ、このクラス内で選ぶ必要がある以上誰でも変わらないか。
ここにいるのは基本的に、魔法初心者だけだしな。
となると、俺はラウラとエイベル以外にで四人見つけて班を組む必要があるのか。
…………あれ、無理ゲーか?
ん〜、俺が男である以上女の子との班はマズイ。
しかし、このクラスの男子は俺を含めても四人。班の人数には届かない。
男同士で集まれば、女の子が一人だけになってしまう。それはまずい。
それに、このイベントで起きることを考えると俺は基本自由に動きたい。
どうするか……。
「はい、それでは自己紹介も終わったところで早速ですが、今月末にある合宿のための班を作って貰います。五人一組なので、班ができた人たちから先生に言いに来てください。」
俺が合宿について考えている間にそこまで話が進んだようで、マニヤ先生がそう言った……
「壱成さん、アタシと組むっすよね?」
「無道さん!私と組んでくれませんか!?」
直後に、俺は
あれ、いきなりチャートが崩れそうだな、これ。
「あ〜、ラウラの阿呆はまだ分かるが、バンデーさんはなんで?」
「阿呆って酷くないですか?阿呆って。」
「今俺が質問してるでしょうが、ステイしときなさい。」
俺は取り敢えず片方を放置して、エイベルに疑問を投げかける。
「えっとですね、無道さんが、一番強そうだからです!」
…………。
「オイオイ、俺は男で平民だよ?強いわけないでしょ。」
俺は少しおどけながらも警戒レベルを引き上げる。
やっべぇ、忘れてた。そういえばバンデー家って鑑定持ちだったわ。
いやそれでも場所は考えて欲しかったよね。
このクラス内にいる数少ない貴族達が、ていうかほぼ全員の女の子が俺の事睨んでるもん。
そりゃそうだよね。男より弱いって間接的に言われたようなもんだもんね。
辛いわ〜。何が辛いって、こいつらと組むことの恩恵が割とでかいのが辛い。
ラウラがいれば戦闘面で俺が居なくても班員が危険に晒されることは無いし、エイベルがいれば森の中の探索とか割と楽できるし。
それに、この二人なら俺が自由に動くことを許してくれそうな感じもある。
ん〜。
ん”ーーーー。
…………はぁ。明らかにメリットの方がでかいわ。
「……分かった。一緒に組もうか。」
俺は、二人の提案を受け入れた。
「最初っからそういえばいいんすよ。素直じゃないっすね。」
「この上なく素直だからこうなってんだよ。」
「仲良しですね!」
「当然っすね。アタシと壱成さんはマブっすよ、マブ。」
「記憶の改変があったらしいな。」
「酷くないっすか!?」
俺たちは、クラスメイトの班作りを眺めながら会話を進める。
班員が足りない?エイベル辺りが誰か連れてくんだろ。コミュ強だし。
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