第13話 男は辛いよ


「じゃあこの五人で班を組みましょう!」


ということで、俺、ラウラ、エイベル、そしてエイベルが連れてきた二人、ニテとキシリアの五人で班を組むことが決まった。


この二人は原作には出てこない(Fクラスは本来エイベルしか出てこない)ので、俺は初めてあった。


そのため自己紹介から始めることになるのだが……


「私は男と仲良くする気はないわよ。」


「あはは、僕もちょっと、ね?」


だって。


全面的に肯定するよ。俺と仲良くする必要とか全くないし。ていうか嫌われてる方が動きやすい迄ある。


「じゃあ最低限の会話だけってことで。」


「構わないわ。」


そうと決まると、その二人はこの場から去り、エイベルは先生に班員を伝えに行った。


……今でいいか。


「ラウラ。」


「なんすか?壱成さん。」


俺はラウラに向き合い前々から考えていたことを伝える。


「ちょっとお姫様に伝えといて欲しいことがあるんだが……。」


「いいっすけど、重要なことなんすか?」


重要かどうか?決まってる。


「超重要。下手したら俺が死ぬ。」


俺のその言葉に一気に真剣な顔つきになったラウラに俺は話を続ける。


「俺は男だ。」


その宣言に、ラウラは不審そうな顔をする。


「知ってるっすけど……?」


まぁ、うん。そりゃそうだ。この期に及んで、実は女でしたなんて展開はそうそうないだろう。


女の子っぽい男の子だと信じていた女の子の友達がいる難聴系主人公なら知ってるが。


「そう、俺が男なのは周知の事実。そして、この世界において男の立場は驚く程に低く、その実力もそれに見合ったレベルのものしかない。」


男は蔑まれ侮蔑の対象となるこの世界で、俺は大きなディスアドを背負っている。


「それ故に、男の仕事場での起用は相当に優秀でなければされることはまず無い。」


となれば……


「俺が金を稼ぐには、ダンジョン等で魔物からのドロップ品の売却が主なものになるわけだ。」


「そうっすね。そして、壱成さんの実力なら問題は無いはずっす。」


そうだな、その通りだ。


確かに俺の今の実力があれば、それだけで十分に食っていける。ルシアにも十分以上の給料を渡せるだろう。


ドロップ品を売ることが出来たのなら。


「俺は男だ。そのドロップ品を、生活に困らないレベルの稼ぎになる程のドロップ品を、俺が取ったと信じてくれるものがいるか?」


「それは……。」


これで、ラウラには俺の言いたいことが伝わったはずだ。


俺は正当な手段では、魔物のドロップ品を売れない。そして、それをエルフの姫に伝えて欲しいということは……


「シュエル様に、後見人になって欲しいってことっすか?」


という結論に辿り着く。


……が、


「違う。」


「え?」


そうでは無い。なぜか?


「男である俺がエルフの姫に手を貸されてみろ。在らぬ疑いをかけられるのが関の山だ。」


「むぅ……。」


「だから、俺がとったドロップ品をシュエルの名前で、なんなら影成弓士でもいいが、売って欲しいんだよ。」


とはいえ、タダでやってくれなんて厚かましいことをする気は無いがな。


王族やその護衛を顎で使うなんて恐れ多くて出来たもんじゃねぇ。


「報酬は、売却額の五割でどうだ?」


「……?はぁ!?」


「うるせぇ。」


俺がすべてを言いきった後に、いきなりラウラが叫び出した。


「壱成さん、本気で言ってんすか?本気で五割とかいってんですか?」


「本気と書いてマジと読むぐらいには本気。少ないか?なら八割位までなら持ってって文句は言わねぇけど?」


「多いっつってんですよ!?」


「落ち着いて良く考えろ。俺はお前らがいなければ、その金は一銭も俺の懐に入らなかった可能性すらあるんだぞ?そう考えれば、多くはないだろ?」


「多いに決まってんでしょうが!」


文句ばっかだなこのやろう。


「我シュエルの命の恩人。いいからさっさとその条件で決めてこい。」


「いきなり横暴だなこの人!?」


なんだ?何が不満なんだ。あれか、土下座でもすればやってくれんのか?


いいだろう。俺にはもうプライドなんて残ってないからな。それぐらいやってやろうじゃねぇか。


俺が土下座の体勢に移行し始めたところでラウラが折れた。


「分かった、分かったっすから!!土下座は勘弁して欲しいっす!」


「そうと決まればさっさと伝えてきなさい。そしてこれ以外の条件は認めないと伝えておきなさい。」


「……やっぱこの人頭おかしいっす。」


「あ?」


「なんでもないっす。」


さて、これでルシアの給料について悩まなくて済むな。


今までダンジョンに潜って取っておいた素材や魔石をシュエルに渡したらお釣りが来るレベルで溜め込んでるからな。


あ、忘れてた。


「ラウラ。」


「まだなんかあるんすか?」


「俺、大体のドロップ品の査定額知ってるから、五割以上渡そうとしても分かるからな。姫様にも伝えとけ。」


「……はいっす。」


よし、これでここで出来るのは全部終わらしたかな。


あとは師匠に、空間系の素材のおすすめ聞いたり、新しく導体作ったりするぐらいだな。




さて、寝るか。


やることを終わらせた俺は、未だに続いている班決めの声をBGMに眠りについた。

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