第16話 きれいなお姉さんってなんか知らんけどエロいよね
「壱成」
いつもの如く修行の開始を告げる師匠の声。それが今日は普段とは違う言葉を形成した。
「なんですか、師匠。」
「……お前は、空間系の素材を加工するんだよな?」
「……そうするつもりだけど。」
「なら、一つだけ約束しろ。今から私が渡す素材は、誰にも見せるな。」
誰にも見せるな?
誰かに見られたら不味いような素材?
あるいは「見る」ことに何らかの意味がある?
いや、ここで考えても仕方ないか。貰ったあとでいい事だしな。
「分かった。誰にも見せないよ。」
「OK。ならこれを使え。特上の素材だ。」
そう言って俺に何かを投げつける師匠。
瞬間、感じる威圧感。
小さな、掌の如く小さなその素材は、そのサイズに見合わない質量を備え、砕けることなどないだろうと言うほどの硬質感を醸し出す。
黒く光る流線型のその物体は、夥しい程の魔力を帯び、まるで我こそが王であると言わんばかりの存在感を放っていた。
「こ、こいつは、竜、鱗?」
俺はそれに見覚えがあった。
画面の外からでも分かる圧倒的な存在感。かつて、俺が
一体の竜、群れの中でも若手と呼ばれる成竜になったばかりの、最下層に位置する
……だが、この威圧感。あいつよりも更に……。
「それは希少だからな。1枚しかない。注意して使えよ。」
こんなもの、何枚も使えるか。
一枚加工するだけでも、俺の魔力で足りるか分からんってのに。
「こんな極上の素材を渡されるとは思ってなかったよ。後が怖ぇ。」
師匠のことだ。俺にこんな素材を渡した以上、とんでもない試練を用意しているはず。
いや、竜レベルのハードルとかどうやってこえんだよ。主人公でも三年近くかかってんだぞ?
「今はまだいいさ。それを有意義に使ってやれ。」
今はまだ、の怖さが俺の人生史上いちばん怖いタイミングなんですが。あとから何要求されるの?師匠と全力のタイマンとか?自殺じゃねぇか。
「……それなら貰っとくけど。あんまり無茶な要求はやめて欲しいなぁって……。」
「^_^」
あっ、これダメなやつだ。
「さて、修行を始めようか。」
……今日は何回死ぬのかなぁ。
所変わって、オリージネ魔法学園研究所。
魔法、魔術、魔導、それに加えて刻魔導体、魔導媒体器、魔闘衣や魔骸布などなど様々なものの研究をする場であり、学生が唯一オリジナルの刻魔導体を作れる場所でもある。
ま、今回は導体ではなく魔道具を作るのが目的だけど。
時間が余ったら、いくつか作りたいものはあるが。それもこれも、魔道具が完成しないと意味が無いしね。
「あら?あなたは、問題児の壱成君ね?」
魔道具作成用のスペースに向かう途中、俺はこの世界で尊敬する人ランキング上位層の科学者に声をかけられた。
「問題を起こしたことはないはずなんですがね、
この世界でも有数の科学者にして、我々男性プレイヤーを歓喜の渦に叩き込んだイカレサイエンティスト。
天御所長の発明は、世界の発展に最も貢献していると言われるレベルで、本人は魔法戦闘もこなすことが出来る天御公爵家の人物。
その研究品の数多くが、世界の発展に繋がっているものの、試行錯誤の分失敗作も多く、その失敗作のほとんどが、理解不能な挙動を起こし主人公に
そんな彼女を、俺たち【楽学】プレイヤーは敬意を込めて
「そうね。貴方は問題を起こさないものね。貴方の周りが起こした問題に突っ込んでるだけで。」
「いやいや、問題がつっかかってくるんですよ。俺は平穏なスクールライフを楽しもうとしてるってのに。」
実の所、彼女が俺に「会いに来た」理由は分かる。
懐に忍ばせた素材。ありえないほどの存在感を持つこの鱗。
いくら俺が全力で隠蔽を施しているとはいえ、彼女レベルの術者なら気付くだろうし、気付いたのなら放っては置けない。
彼女は、この研究所の責任者だから。
「……ところで、あなたの懐。面白いものが入ってるわね?お姉さんに見せてくれない?」
「いやぁ、綺麗なお姉さんのお願いはできる限り叶えてやりたい所なんですけど、誰にも見せるなと言われてるんですよね。」
さて、どうでる。
大人しく引き下がる気はしないな。
力ずく?この場所ならそれも選択肢に入るだろう。
この場所に限るなら、彼女は学園長レベルの力を持っているからな。
「へぇー、お姉さんどうしても気になるんだけどなぁ。ダメ?」
戦闘態勢に移行しながらも、可愛らしくオネダリする25歳。
俺もそれに答えるように戦闘用に意識を作り替える。
「ダメですね。」
迸る魔力。俺を包み込み、逃がす気は無いと雄弁に語る力の奔流。
だが、
「ふっ!」
こちらも魔力での防御を決行している。
さすがに無抵抗で受ければ死にはしないもののかなりの重症をおっただろうし。
「やるねぇ。お姉さん結構力入れたんだけどなぁ。」
「嘘つきなお姉さんだな。あなたにしては随分と
軽い挑発を挟みながら会話を続ける。
「この状況で挑発とか、肝座ってるね。本当に学生?」
「どこをどう見ても純真な学生でしょう。」
「じゅ、純真?」
「何か?」
「いや、なんでもないよ、うん。」
俺たちは会話をしつつも、魔力でその場の主導権を奪い合う。
(つっても、かなり厳しいな。魔力操作は向こうのが断然上。勝てる部分がないし、どうしても時間稼ぎになっちまう。早く来てんくねぇかな。)
「……所長〜。また、問題ですか〜?」
魔力をぶつけ合って数分後、俺の救世主が到着した。
ギャルゲ神のてんせい 碧海 @aomi05
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ギャルゲ神のてんせいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます