第26話 類は友を呼び、不良品は不良品を集める
いよいよ、入学の日が近づき今日は俺の誕生日。
つまり、俺の廃嫡の日が来たということだ。
少し前に、俺に招待状が送られ、東青家に来いと言われたのだ。
今は、その準備を終え東青家に向かっている最中である。
今日の俺は、スーツに身を包んだ正装で決めている。
……まあ、彩晴を体に貼り付けてはいるが。
今日のイベントは、東青家主催の立食会で始まり、立食会が終わった後に、本家のババア共から俺の廃嫡が告げられることで終了する。
立食会は、本家の連中の
大人しく壁の近くで待機することになるだろう。
本番はその後、別室にて廃嫡の件についての話だ。
俺の廃嫡は随分前から決まっていることで、この前の峰華の件等から、根回しも既に済んでいるだろう。
俺は気楽に構えて、廃嫡を受け止めればいい。
なんせ俺にとっては願ったり叶ったりなんだしな。
東青家から籍を外すことは出来ないが、継承権が無くなるだけで神輿にされることは無くなるし、俺の継承権が破棄されれば峰華の対抗馬はいなくなり、順当に次期当主の座に座ることが出来る。
そうすりゃ、俺と峰華は関わりが無くなるし、原作との乖離は減る。
ついでに、俺が東青家の問題に関わることも無くなるしな。
「まあ、出来れば勘当されたかったってのが本心ではあるんだが……。」
継承権を剥奪されようが、俺が東青家の人間であることに変わりはなく、それだけで厄介な目に遭うことは確定している。
なんせ大公爵家って言うビッグネームだ、その苗字だけで相当の力を誇っちまう。
「色々やってみたんだけどなぁ……。」
実際、勘当される為に出来ることはやった筈なのだ。
峰華の件にしても、真っ向からババア連中に歯向かったのだから、奴らにとって俺がマイナスにしかなり得ないと認識付られた筈だ。
勿論、峰華を助けたかったと言う気持ちに嘘はないが、あの行動が俺にとってプラスになると感じたからこそあそこまで大仰に動いたというのも否定はできない。
なのにどうして、本家からの動きがないんだ。あんなことされたら、ババア共も普通切れるだろ。てか切れてたじゃん。どうしてだよォっ!(どこぞの竜也)
……まあ、希望を捨てるのはまだ早い。いきなり、お前は勘当だと告げられる可能性も残っているのだ。
何故なら、招待状には本家に来いとしか書かれていなかったのだから。
本命で廃嫡、対抗で政略結婚、大穴で勘当って感じかね。
あのババアどもが前言を翻すとも考えずらいので、本命は廃嫡。
先代の血を利用しようとしている奴らがいることもあって、対抗に政略結婚。
暴れ回ったことや、制御出来ないこと、あとは俺の希望で、大穴に勘当。
まあ、廃嫡の一択だったことを考えれば、十分だろ。
どうなるかねぇ……。
東青家に着き、時間になると立食会が始まった。
俺は当初の予定通り、壁に張り付き適当にとったドリンクを飲んでいた。
……これうめぇな。なにこれ?……えーと、サンペレグリノ イタリアンスパークリングドリンク アランチャータロッサのブラッドオレンジ、か。
長ぇよ、スタバの呪文みたいに長ぇよ。なに、オシャレな飲み物ってみんな名前長いの?
いいじゃん短いので。コーラとかたった3文字にあんな美味さが詰まってんだぞ?長けりゃいいってもんじゃねぇのよ。
ドリンクを飲んでいると尿意を催したので、トイレに向かう。
「……ふぅー、スッキリ。」
トイレから帰る道中、声が聞こえてくる。
「あんた、なんでまだいんのよ。さっき辞めろって言われてたわよね?」
「……はい、ですので荷物を纏めている最中です。」
「ならさっさと出ていきなさいよ、
「……はい、申し訳ありません。」
……まあ、気分がいいもんではねぇよな。
声の方へ歩いていくと、デカい声を出していた方の女はどこかへ行ったのか、暗い顔をしているメイド一人だった。
……見覚えあんな、コイツ。どこで見た?
「あー、大丈夫か?」
俺の言葉に反応して、慌ててこちらを見上げ、佇まいを直す
「失礼しました。お見苦しい所を。」
「いや、いいんだけどさ。それより、ここ辞めるって?」
そう聞くと、少し驚いた顔をしてこちらを見つめるメイド。
「どこで……?あっ、いえ失礼しました。確かに、大奥様にここを辞めるよう仰せつかりました。」
大奥様……?
『大奥様方は、大変多忙な方々です。もう少々お待ちを。』
「お前、あん時のメイドか!」
いきなり大きな声を出してしまい、メイドはビクッと体を震わせる。
「は、はい。大奥様との会合の時、お会いしましたが……。」
……コイツなんでこんな殊勝になってんの?持っと生意気じゃなかった?俺の事を鼻で笑うようなやつだった気がするんだけど……?
まぁ、いいか。
「ここ辞めるんだったら、俺ん所来ねぇ?給料はちゃんと出すけど、どう?」
その提案に驚いたのか、目を見開き俺に問いかけるメイド。
「何故、私なのでしょう。私は欠陥品で、私以上の方はいくらでもいますけど……。」
いきなりこんなことを言われて、困惑しているのだろう。なんの脈略もなかったしな。
俺は彼女に向かって、1つずつ説明していく。
「一つ目、俺はメイドを1人も雇っていないから。一応貴族の人間として、一人は雇っておきたいからな。
二つ目、東青家のメイドならレベルが高いと思ったから。雇うにしても、コネがない以上、レベルの低い奴を雇うことになるかもしれない。それなら、君を雇う方がいいだろ?
三つ目、君が先天性の魔力欠乏症だから。ちょっとその病状について、詳しく調べたいと思ってたからね。」
そう言った時、彼女は先程よりも大きく驚愕を、顔に出す。
「……何故……それを……!?」
「君から魔力を感じないから。最近魔力感知の制度が上がってきてね。わかるようになってきた。まぁ、それは置いといて、最後四つ目、」
そこで区切り、息を吸い、自分を大きく見せるように、言い切る。
「傍に置いておいておくと、面白そうだから。」
あたかも当然のように。それが、本来あるべき条件のように。そう、言い切った。
「そんな……ことで……?」
俺は言う。
「そんなことでだ。俺にとっちゃ、それは重要な事だからな。一緒にいて面白くない奴を、メイドだろうと雇いたくないんでね。」
メイドは目を見開き、笑った。
そして……
「東青家を首になった程度の腕で良ければ、このルシア、雇っていただけないでしょうか。」
俺の手を、取った。
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