第6話 師匠キャラは弟子(を強くする)の為だったら何でもする


「彼氏とはロリボで話してるとか……。」


「イヤァァァァァァァァ!!!!」


「ドロドロの恋愛が好きなんだよな?自分で書いちゃうぐらい。」


「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!」


フロレシア・インディアン、リザベラ・レチクル撃破。


「キレッキレのポエム集、何時発売するの?あんなに綺麗にまとめちゃって。」


「うわぁぁぁぁ!!!」


「BL、好きなんだって?」


「ノぉぉぉぉぉぉ!!!」


「好きな人の声で目覚めるのってどんな気持ちなの?」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


サリナ・エルダヌス、ミルヤム・アンドロメダ、ラビ・オリオン、撃破。








「……ふぅ、これで全部か。」


いやー、死ぬかと思った。


なんつーバケモンとやらせてくれてんだよ。入学前に死ぬとこだったわ。


死亡フラグすら立たずに死ぬとこだったわ。


まぁ、なんにせよ。八人全員終わったし、あとは……、








「師匠、見てんだろ?出てこいよ。」








クソ師匠に問い詰めるだけだな。


ガサガサ


俺が呼びかけた瞬間に、俺の視界の先にある草むらが揺れそこから気だるげな顔をした咥えタバコのかっこいい系の美女が出現した。


「よくも可愛い弟子にエルフの精鋭集団何ぞけしかけてくれたな。」


「ごかいだーわたしはなにもしらにいぞー。」


「白々しいにも程があんだろ精神メンタル幼稚園児……。」


バレない方が無理があるってのに……。






「あ〜、いつからバレてた?」


「【影成弓士ヘカテイア】が襲ってきたところから。」


「最初っからじゃねぇかよ……。あんまヘマしてないと思うんだが、どこで気づいた?」


どこで?


はっ、よく言うよ。


俺に気付かせるために


「そもそも、【影成弓士】が俺を襲った時点で異常だろうが。そこから思考を進めれば誰でも気づく。」


「そうか?姫様に関わった何処の馬の骨ともわからん男を護衛が試す。よくある展開だろ?」


「俺が一般人ならな。俺は、元とはいえ東青家の人間だぞ?いくら姫のためとはいえ、他国の大公爵家に喧嘩をふっかけるような真似を護衛がやるか?」


「お前の出生を知らなかったとか……。」


「確かに俺は廃嫡されたが、たかだか数日前のことだ。俺の10数年の歴史を消し着るには時間が足りなさすぎる。付け加えるなら、そもそもあんたのせいでシュエルは俺の事を知っている。」


「……なるほど。」


「いや、そこら辺は最悪どうでもいい。もっとでかい問題があるだろうが。」


「あ?なんだそれ。」


「俺は、【蓋世】と呼ばれる世界で十指に入る実力者の一人、オリヴィア・ラートゲ・ヌバ・テュケオーベの弟子だぞ?普通、そんな奴に喧嘩売らんだろ。」


「……あ。」


「ノリで動きすぎなんだよ、あんたは。」


ちゃんと頭回せばいいのに。別に馬鹿って訳じゃないんだし(つーか、滅茶苦茶頭いいし)。


ノリで動くせいで、穴だらけの計画でも突っ走っちまうのが玉に瑕だが……。


「しかも、戦闘中に殺気まで送ってくるしな。」


「あれな、私が知らせなきゃ死ぬと思ったからな。」


「……確かに、エステルの撃った矢に気づかなかった俺も悪いと思うが、あの場面であのレベルの殺気とか咄嗟に動けなかったかもしれんだろ。加減を知れ、加減を。」


「む、私は壱成が出来ると思ったことしかしないぞ?加減はしてる。」


「俺が死ぬ寸前まで追い詰められて、火事場の馬鹿力でギリギリクリアできるような加減をか?」


「……<( ˙³˙)>~♪」


「……イラァ。」


こいつ、マジで殴ってやろうか?


……効かなそうだな。上空1万メートルからの紐無しバンジーでも、身体強化無しで生き残りそうだもん、この幼女精神400歳児。


なんせ、人間のくせして魔力が多すぎてエルフ並の寿命保持してる化け物だからな。


面構えからしてたとは一線を画すよ。


「大方、俺をさらに強くする為にけしかけたんだろうけど、修行のためなんだったら俺に言えよ。」


「……すまん。」


「これが師匠にとって俺が強くなる為に必要な事だったんだろ?そう言われれば、俺だって拒否することはないってのに、ノリで動きやがって。」


「いや、いざやれって言っても壱成は逃げるだろ。」


「ソンナコトナイ…ヨ」


「声ちっちゃ、嘘くさっ。」


いや、入学前に死ぬわけにはいかないし?そんなことになったら本末転倒だし?


……仕方ないことなんだ。俺の目的のためには逃げることも必要なのだよ。


「……ゴホン。兎に角、これからは修行メニューは必ず俺に伝えること。これは、絶対に守ってくれ。」


「断る。」


「あぁぁぁぁぁん!?」


「……なんでもない。」


……絶対こいつまたやるわ。賭けてもいい。


……はぁ、いやいいんだけどさ。強くなれてるし。師匠の教育方針に異存は無い。


けど、やっぱり何を考えてそのメニューを作ってるのかとか、こっちで勝手に結論出しても間違ってる可能性もあるんだし、言って欲しいんだよ。


その間違いが、その後にどれだけ影響があるのかも分からないんだ。


最善の道を歩んでいるつもりになってるだけで、全く別の道を歩んでるなんてことにはなりたくないんだよ……。



「……壱成。」


「なんだ?」






「お前は間違いなく強くなるし、する。だから、私を信じてくれないか?」







あぁ、やはりこの人は最高の師匠だ。


普段、どれほど巫山戯ようとも肝心な時には道を示してくれる。


俺の進むべき道を照らしてくれる。


だから、この人を


「信じるよ。」


大切にしたい。


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