第33話 余裕を持って強くなろう

中間テスト、体育祭、期末テストが過ぎ……あっという間に夏が訪れた。


(今年はまだ無理だったか)


夏になるまでに、当然高校に入学した竜弥にとっては初の……三年生にとっては基本的に最後の大会が始まった。


竜弥はまだ入学したての一年生だが、それでも中学三年最後の大会終わってからも欠かさず練習は続けており、一年生の間から本気でレギュラーを狙おうとしていた。


ポジションはポイントガード。

それなりにパスやドリブルにも自信があった竜弥だが、結果的に一年生の間にレギュラーを……スタメンを勝ち取ることは出来ず、夏の大会が終わって三年生が引退した。


しかし、男子バスケ部の顧問である大内智之は竜弥の頑張りを認識しており、新チームのスタメンとなった二年生のポイントガードが何かしらの事故で出場できなくった場合、竜弥を使おうと考えている。


一年生としては、努力と実力が認められ、スタメンへの道に大きく前進している。

だが、竜弥の目標はあくまでスタメン。

レギュラー入りできるのは勿論嬉しいことだが、少しでも早くコートに立てるようになって活躍し……彼女にカッコいいところを見せたいという思いがあった。


夏になれば当然、熱さで練習がきつく感じる時期だが……少しでも早くスタメンになりたい竜弥は、そんな環境程度で弱音は吐かない。


そして夏と言えば……そう、合宿がある。


バスケ部、バレー部、バトミントン部の三部活が合同で移動し、合宿が行われる。

この合宿中に顧問である大内に頑張りと結果を見せれば、一年生でも新人戦での起用を考えさせることも可能。


(パスも大事だけど……やっぱりドリブルを磨くの一番の課題かな)


バスで目的地へと移動する道中、竜弥はこの夏の課題について考えていた。


勿論、パスやドリブルなどの技術以外にも、身体づくりについても考えている。

今はまだ平均身長に届いていないが、背を伸ばすことを諦めてはいない。


「おい、竜弥。何険しい顔してんだ?」


「……そんな変な顔してた?」


「別に変な顔じゃねぇけど……これから合宿だぜ。今からそんな気張ってたら、最後まで持たないぞ。だからほら、トランプしようぜ」


「そうだね」


同じ部活のチームメイトの言葉のお陰で、竜弥の張りつめていた心が少し和らぎ、余裕を取り戻した。


合宿は三泊四日。


この合宿の最中に絶対に成長しようという思いは悪くないが、頑張りすぎはオーバーワークになる。

チームメイトのお陰で、竜弥がオーバーワークで倒れる心配はなくなった。


バスでの移動中、普段の竜弥に戻り、笑顔でチームメイトたちとトランプなどで楽しんでいたが……練習が始まって数時間後、一年生どころか二年生も疲れ切っていた。


「お前ら、しっかりと水分は取っておけよ」


「「「「「「「はい!!!!」」」」」」」


全員がスタメンになれるわけではない。

だが、一試合を走り切り……試合中に考えを止めない。

それを実行する為には、絶対にスタミナは必要。


「少しでも怠さを感じたら報告するんだぞ。やる気と無茶は違うかならな」


「「「「「はい!!!」」」」」


女子バスケ部も普段より過酷な練習を行っているが、今のところ脱落者はいない。


決して強豪校という訳ではないが、それでも部内には良い雰囲気が漂っていると智之と千沙都は感じ取っていた。


(あぁ~~、やべぇ~~~~……スポドリ飲んでも回復してる気がしねぇ)


勇夢の友人である桃馬も当然合宿に参加しており、練習はサボらず全力で挑んでる。


(そういえば……なんか、勇夢も頑張ってるんだったよな)


中学からの友人は最近バイトやら運動やらで頑張っているという話を本人から聞いた。


その話を聞いて、もしかしたら……という考えが浮かんだ桃馬のやる気は復活し、まだ休憩中ではあるが……自主練の為ボールを持ってコートに向かった。


「……負けてられないね」


そんな桃馬の姿に触発され、竜弥もボールを持ってコートへ向かった。


それから疲れで何度も気落ちしながらも、自分を奮い立たせ、スタメンを勝ち取るために頑張り続けた。


練習詰めの数日……という訳ではなく、午後の練習を終えた後は自由行動。

限られた時間まで自主練を行う者もいたが、基本的に就寝時間までは自由に過ごせる。


一つの部屋に集まり、年頃の高校生らしい会話を行ったりなど、合宿などでしか味わえない楽しさというのもあり、リフレッシュ出来る時間もあった。


そして合宿の最終日である四日目……その日は軽く準備運動とシュート練習など、軽く動きの確認などを行った後は……男女交互に十分区切りで試合を行っていく。


勿論、一年生たちも試合に参加。


顧問である智之と千沙都は二年生の新チーム内容についても考えているが、一年生たちそれぞれ、どのポジションが適性なのかを考えながら試合を観察。


「っしゃ!!!!」


試合の中、普段の表情からはあまり予想出来ない声と表情が、ドライブでマークを抜いてからシュートを決めた竜弥から飛び出した。


(良いぞ、良い調子だ!!!)


今みたいなドリブルからのシュートだけではなく、パスなどの面でもここ最近で一番のパフォーマンスを発揮できていると確信。


こうして合宿は竜弥にとって、……チームメイトや先輩と仲を深め、土台や技術を向上させる良い機会となった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る