第25話 お互いに心配

勇夢は事前に八月の間、千沙都がいつ休みなのかを訊いていた。

丁度お盆が始まる前に空いている日があるようなので、その日にデートに行きませんかという内容のメッセージを送った。


「……服、買っておいた方が良いよな」


初デートの時に服は買ったが、あれ以降……千沙都とデートする予定がなかったので、全く新しい服を買っていない。


季節も春から夏に移り変わっているということで、朝にメッセージを送った勇夢は午前中の間に日課のトレーニングなどを終わらせ、午後からは一人で服などを買いに向かった。


千沙都とのデート代などの為に派遣バイトでそこそこの金は溜まっているので、服や靴を買うぐらいの金は溜まっている。


財布には諭吉が二枚ほど入っており、準備万端。

普段は行かない服屋に向かい、店内をグルっと回るが……何が自分に合うのか、さっぱり分からない。


加えて、自分のセンスが良いのか悪いのか……やはりそこで悩んでしまうため、店員に上から下まで自分に似合う物を選んでもらった。

それを試着室で試着した結果……悪くない。寧ろ良いと思った勇夢は、一度選んでもらった服の値段を確認し、購入を即決。


店員さんのセンスに感謝し、諭吉を消費。


その後は駅の周辺を少しブラッとした後は、どこにも寄り道せずに自宅へ帰った。

そしてモ〇ハンで一狩りしてる最中、千沙都から返事が返ってきた。


『分かった。行く場所はどうする?』


速攻で一時停止をし、送られてきたメッセージを確認。

断られることなく了承され、今回も渾身のガッツポーズを浮かべた。


(良かった~~~)


断られずに済んだ嬉しさで、数十秒ほど嬉しさを噛みしめ……既にデートプランは決まっているので、場所の詳細を伝えた。


集合時間なども決めているので、さらっと集合の流れなども決まった。


勇夢はデートの日まで楽しみで楽しみで仕方ない状態となり、当日までのトレーニングや派遣のバイト、勉強などが一切苦とは感じなかった。


そして二回目のデート当日……勇夢は集合時間の三十分前に品川駅に到着。


今日の勇夢は白のTシャツに紺のスラックス。

白黒のスニーカーを履いており、肩には小さな黒色のショルダーバッグを背負っている。


(……変じゃないよな)


部屋で着替えて鏡で見た時、家を出てから品川駅に到着するまで何度も同じことを考えた。


しかし、もう店員に選んでもらった服を着たのは仕方なく、今更変えることは出来ない。

それに一般的に見ても、その服装は勇夢に似合っていると言えなくもない。


同年代の者たちが勇夢の格好を見ても、一先ず変だとは答えない。


ただ……そこら辺には本当に疎いので、相変わらずの心配性。


「あっ……綺麗過ぎないか」


勇夢が待ち合わせ場所に到着してから十分後、約束の集合時間のニ十分前に千沙都が到着した。


「今回も早いな、鳴宮君」


「そりゃ、千沙都さんとのデートなんで、早めに到着しようと思いますよ」


桃馬たちと休日に集まる時も、基本的に集合時間よりも早めに到着する勇夢だが、千沙都とのデートとなれば……絶対に遅刻できないので、かなり早めに到着するように心がけている。


「……あの、今日も似合ってますね」


「そうか。そう言ってもらえると嬉しいよ」


ブラウンのタンクトップの上に白のジャケットを羽織り、下はグレーのスカート。


少々予想外の服装ではあるが、勇夢的には……超似合っている、としか言えない。

なにより、今回の服装は前回の服装と比べて大人感が増していた。


(悪くない反応だな……やはり店員にアドバイスを貰うのが、一番良い選択だ)


千沙都も勇夢の様にあまり自分のセンスに自信がなく、今回の服装は店員に選んでもらった物。


夏という事もあり、若干布の面積が薄い気がしなくもなく……思春期真っ盛りの勇夢としては、少し刺激が強い。

だが、今日は久しぶりのデート。


そんな事で台無しにして良い筈がなく、少し時間は早いが合流したので、目的の場所へと向かった。


道中……久しぶりに二人っきりで話す時間という事もあり、特に会話には困らなかった。


夏休みは何をしていたのか、クラスメイトと上手くやれているのか、相変わらず勉強は頑張っているのか等々……千沙都からも話題を振り、目的地に到着するまで良い雰囲気のまま到着。


勇夢はそれだけで既に気分上々だが、本日のメインはこれから。


今回のデート場所である水族館に到着し……入場料はささっと勇夢が二人分出した。

当然、千沙都は自分の分を財布から出そうとするが、それは阻止。

勇夢は代わりに昼食を奢って欲しいと頼んだ。


基本的に千沙都があまり奢られるのを良しとしないということは、既に脳に刻んでいるので、予め対応を考えていた。


そして、千沙都もそれなら仕方ない、といった表情で了承。


夏休みという事で人はそれなりに多いが、自由に歩けるスペースはある。

二人はゲートを通って中へと入り……最初に見た物の存在に驚いた。

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