第24話 やるからには本気
体育祭を終えてから、勇夢の生活は普段通りに戻った。
変わったところと言えば、以前よりも少しだけ勉強に費やす時間が増えたこと。
そのお陰で期末テストでは、また高得点を取ることに成功し、千沙都からお褒めの言葉を貰った。
期末テストまでは、また前回のメンバーで勉強を行い、バスケ部の面子たちはみごとに赤点を回避した。
桃馬以外のバスケ部の面々と少し絡むように、高校での生活も悪くないと思い始めたていた。
だが……一つ、不満がある。
「これからも勉強はある程度頑張るけど……やっぱり、栄養不足だな」
千沙都と一緒にいられる時間が殆どない。
当たり前といえば当たり前なのだが、それでもその時間の無さに栄養不足を感じていた。
特別な関係を持ち、一度デートに行って以降……勇夢は千沙都と二人っきりにはなれていない。
特別な関係になったまでは良いが、仕事の忙しさにやや遠慮してる部分がある。
「もっと会いたいけど、教師ってかなり忙しいって聞くしな~」
少しでもネットに関わっていれば、そういった話はよく耳に入ってくる。
千沙都は好きで女子バスケ部の顧問を担当しているが、それでも忙しいことに変わりはない。
「……やるしかないな」
少しでも千沙都と同じ空間にいるための手段として、勇夢はとある決断を下した。
翌日には直ぐに行動を開始。
そして時は直ぐに夏休みへと突入。
勇夢は特に部活に入っていないので、宿題を終わらせてしまえば忙しくない。
やりたいことを、思う存分やれる期間。
宿題に関しては、教師たちが常識の範囲内で出してきたので、勇夢は体育祭の時と同じく、猛烈に集中して三日で宿題を終わらせた。
日記の様な宿題はないので、よろうと思えばやれなくもなかった。
ただ、テスト期間の時以上に頑張った為、その翌日だけは基本的にだらだらと過ごした。
それからは……予定していた通り、高校生でもやれる単発のバイトを入れまくった。
デートするとなれば、当然お金がかかる。
千沙都の性格上、何度目のデートであっても費用を全額奢ってもらう……なんて対応を受け入れるわけがなく、勇夢にそこまでの負担は掛からない。
だが……相手が憧れている人、好きな人であれば……男はカッコつけたい時がある。
勿論、勇夢も千沙都に少しぐらいそういった面でカッコつけたいという想いがある。
なので、今年の夏休み……勇夢は両親が少し心配になるぐらい、色々と頑張った。
「はぁ、はぁ、はぁ……つ、かれた~~」
そしてバイトや勉強以外にも、運動に力を入れている。
理由は至極単純……男子バスケ部に入ろうと思ったから。
ちなみに、既に入部届自体は出している。
男子バスケ部の顧問、
ただ、勇夢の方から基礎的な体力を現役時代まで戻せるようになってから、練習に参加したいと申し出た。
部活に入部したい動機はとても不純だが、それでもやるからには本気で努力し……少しでも千沙都の関心を引きたい。
という訳で鈍った体を鍛え直し、長時間動ける体に仕上げていく。
家の近くにバスケットゴールがあるので、マイボールを持っていけばシュートやドリブルの練習は可能。
しかし、パスやその他の練習は他の人がいないと厳しい。
バスケ部にはいる為に練習してるという内容は、なるべく秘密にしておきたいと思ってるので……学校関係以外の人を頼るしかなかった。
そこで勇夢は勇気を振り絞り、それなりに人が集まるバスケットコートへと向かった。
そこには初めて向かったが……ネットの情報通り、人が多かった。
時期が夏休みという事もあり、練習相手には事欠かない。
ただ、誰かとプレイするという事は……見知らないバスケボーラーに声を掛けなければならない。
勇夢は超絶コミュ障という訳ではないが、そこまでコミュニケーション能力は高くない。
しかし、来てしまったからには諦めて帰る訳にも行かず……勇気を振り絞ってなるべく歳が近そうな男性に声を掛けた。
「おう、良いぜ!! 三対三やるつもりなんだけど、それでも良いか?」
「は、はい。よろしくお願いします」
声を掛けた男性は大学生であり、あっさりと勇夢の頼みを聞き入れてくれた。
それから今バスケコートを使っている面子と交代し、二分ほどシュートタッチを確かめたら直ぐに三対三を始めた。
中学では当たり前だが、基本的に五対五でしかプレイしてこなかった。
だが、三対三という形式ではどう動けばいいのか、大体は頭に入っていたので問題無く動ける。
とはいえ、相手は大学生。
それなりにバスケをやってきているので、勇夢が勝てない部分も多いが……体格では割と負けてない。
必死に食らい付き、実戦での感覚を取り戻す。
そのコートに通い続けたのは夏休みの間だけだったが、皆勇夢に対して優しく、勇夢は練習相手に困ることはなかった。
並みの学生より忙しい日々を送る勇夢だが……せっかくの夏休み。
さすがに一度は千沙都とデートしたいと思い、行動に移した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます