第37話 しっかりしてくれよ、先生

「「「「「いただきます」」」」」


勇夢たちは若手教師の千沙都たちに昼飯を奢ってもらい、昼食だが浮いたこともあり、全員良い顔で焼きそばやフランクフルトを食べ始めた。


「運動部なら、あれぐらい食って当然だよな」


「そうですね。まぁ、ちょっと財布が悲しくなりましたけど」


千沙都たちも昼食は食べるので、教師全員で分けたとはいえ……やはり予想外の出費。


「でも、飲み会の出費よりは全然安いでしょ」


「「「「……それはそうだな」」」」


智之の言葉に、若手教師全員が頷いた。


大学生になり、社会人になってからも呑む者は呑む。

頻度は個人によってバラバラだが、一回の食事でそれなりのお金が飛んでしまうのが飲み会。


焼肉チェーン店の食い放題の方が安いと思える金額がかかるが……それでも大人になれば酒を呑んで色々忘れたいという時もあるので、出費が大きいと分かっていても呑んでしまうのが大人。


本当は智之たちも昼食時にはビールを一杯は呑もうと思っていたが、生徒の前ということもあり、自重した。


「先生、どうせなら俺たち一緒に遊ぼうぜ!」


「……しょうがない。それもありだな」


こうなっては仕方ない。

そんな表情をしながら、智之たちは桃馬たちの提案を了承。


ビーチバレーのコートに向かい、日が暮れるまで何度も何度もゲームを繰り返した。


「……ヤバいな」


「おう、ヤバいな」


隣で休憩中の友人二人が、何に対してヤバいと言っているのか。

勇夢は二人の視線の先に目を向け……なるほど、と理解した。


(そうだな。確かにヤバい……うん、ヤバい)


ビーチバレーなので、当然跳んだりボールを追いかけたりするので、女性はその際に……胸が大きく揺れる。


そしてこの場にいる女性陣の中で最も大きなバストを持つ人物は……女子バスケ部顧問の千沙都。


結月たち女子バスケ部の一年組もナイススタイルを持っているが、成熟したアダルトスタイルを持つ千沙都にはやや敵わない。


「なぁ、勇夢もヤバいって思うだろ」


「そうだな。ヤバいと思う」


友人の言葉に、勇夢は速攻で返した。

別に下ネタが苦手という訳でもなく、本当に……ちょっと、この後自分の番が回ってきた時に、すんなり立てるか心配になるレベルで……ヤバいと思ってる。


(……彼女を他の異性からこんな感じで見られてるのは、彼氏的にどんな気持ちなんだろうな)


現在竜弥はコート内でプレーしており、素人ながらに頑張って楽しんでいる。

一見、本気でビーチバレーを楽しんでいる様に思えるが……少し考えれば、友人たちが恋人の乳揺れに興奮してるのは直ぐに察せる。


だが……そこにはやはり、恋人という立場から生まれる余裕があった。

その余裕のお陰で、勇夢たちのような恋人にいやらしい視線を向ける友人に対して、怒りの気持ちが湧くことはない。


寧ろ、千沙都が色々と魅力的なのは知っているので、そうなって当然だよなという思いすらある。


「はぁ~~~、むっちゃ動いたな」


「そうだな。砂の上って超動きにくいし……意外と疲れた」


「そりゃあれだけ動き回ったんだから、疲れない方がおかしいって」


「ねぇ、思ったんだけどさ……昼食食べてから、一回も海に入ってないよね」


「「「「……あっ」」」」


確かにビーチバレーは楽しかった。

教師たちも混ざってのゲームだったので、普段は体験できない楽しさがったのは事実。


とおはいえ、折角海に遊びに来たのに、海に入ったのは午前中だけと……少し悲しい気分になった。


「……今からでも入るぞ!!!」


バスケ部の一人が急に走り出し、海にダイブ。


「よっしゃ!」


それに竜弥も続き、結月たちもどうせならと思い、一緒にダイブした。


「元気だな~あいつらは……鳴宮は飛び込みに行かなくても良いのか?」


「……ちょっと眠気がヤバいんで、あまり動く気力がないんですよ」


「はは、そうか。でも、練習にはしっかり付いてこれるんだろ」


ポロっと零した智之の言葉に、バスケ部全員が勇夢たちの方に振り返った。


「先生、今なんて……」


「あっ……鳴宮、もう言っても良いか?」


「はぁ~~……まぁ、良いですよ」


鳴宮としては、その事は夏休みが明けるまで秘密にしておいて欲しかった。

しかし、バスケ部でもない自分に男子バスケ部顧問である智之が「練習にはしっかり付いてこれるんだろ」なんて声を掛けてしまっては、どうやっても隠せない。


「夏休みが終わってから、鳴宮は男バスに入部するんだよ」


「「「「「え~~~~ッ!!!???」」」」」


割と鍛えている、という話は竜弥たちも聞いていた。

勿論、親友である桃馬もその話は聞いていた……だが、そんな話、勇夢の口から一言も聞いていない。


「な、何で黙ってたんだよ勇夢。てか、なんで夏休みが明けてから?」


「いや、ほら……別にどっきりって訳じゃないけど、なんとなくその日まで秘密にしておきたかったんだよ。後、夏休み明けてから練習に参加するのは、桃馬たちに迷惑掛けない為だ」


普段の練習に付いてこれなければ、部員たちの迷惑になる。

その考えは竜弥や桃馬たちにも解らなくはなかった。


「な、なぁ。ポジションはどこを狙ってるんだ? やっぱりパワーフォワードか、もしくはセンターか?」


どちらも勇夢のこれからを考えれば、妥当なポジションに思えるだろう……しかし、勇夢の口から出たポジション名は、桃馬と智之を除く全員を驚かせた。

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