第36話 誓えるか?

(皆スタイル良いと思ってはいたけど……眼福だな)


健全な男子高校生なので、目の前を光景を見て頬が少し緩んでしまうのは仕方ない。

チラッと竜弥の方を見たが……あまり結月たちのビキニ姿を見ても、あまりデレッとした表情をしていなかった。


(随分と余裕そうだな)


とりあえず借りたテントを設置し、それができたら海に入ろうという流れの中……勇夢は度々竜弥の方をチラ見するが、全く同級生のビキニ姿にだらしない顔をしていない。


(す、凄いな阿久津は……でも、逆に陽向たちのビキニ姿を見ても、普段と表情が変わらないってなると……チ〇コ付いてるのか? って思ってしまうな)


全く性欲がないから、同性代の顔とスタイルも整っている異性の水着姿を見ても、普段通りの表情でいられるのか……一瞬そう思ったが、それはないだろうと否定。


(……あっ、そうか。そういうことか)


テントを設置していると、何故竜弥がデレッとした表情をしないのか、その理由がおおよそ断定出来た勇夢。


その理由とは、今まで千沙都と家族ぐるみで海……もしくはプールに行ったことがあるから。

今より若い年齢とはなるが、幼馴染という関係であれば、家族ぐるみで海やプールに行ったという過去があってもおかしくない。


千沙都の水着姿を見ているからこそ、JKのビキニ姿を見ても、あまり心を揺らされることはなかった。


「よっしゃ、行こうぜ!!!!」


テントの設置などが終わり、勇夢たちは一斉に海に向かって走り出した。


結月たちも運動部らしく、ダッシュで海に飛び込んだ。


(今は楽しまないと損だよな)


先程まで何故、竜弥は結月たちの水着姿に目を奪われないのかと考えていた勇夢だが、ある程度理由も解ったので、もう深く考えることは止めた。


あまり顔より下を見るのは失礼だと思い、なるべく結月たちの顔を見ながら海で遊んだ。


泳ぎ疲れれば、次はビーチフラッグやビーチボールなどを使って遊び、昼過ぎまでノンストップで海を楽しんだ。


「だは~~~、さすがに疲れたな」


「そうだね。そろそろ昼ご飯にしようか」


海には海の家があり、そこに行けば何かしらの料理が食べられる。

勇夢を除いて、全員両親から小遣いは貰っているので、昼食分ぐらいは余裕で帰る。


荷物を取られない様に二人だけテントに残ってもらい、後のメンバーで海の家に向かった。


「何食べよっか」


「やっぱり焼きそばじゃね?」


「とうもろこしがあったような……がっつり肉もありだと思うけど」


「どうせ皆で食べるんだし、色んな飯を買えば問題無いだろ」


「それもそうね」


とりあえず、美味そうな料理を全部買えば問題無い。

そういう結論に至り、勇夢もその結論に文句はなかった。


だが、海の家に向かう途中……一つの集団が気になった。


(あの人たちって、もしかして……俺の眼が悪くなってなければ、多分そうだよな)


勇夢が気になっていた集団に、友人たちも気付いた。


「な、なぁおい、あれって……」


「あっ、本当だ……」


何を思ったのか、桃馬たちはダッシュでその集団の元へ向かった。


勇夢は桃馬たちが何を考えているのか直ぐには解らなかったが、走っている途中になんとなく理解した。


(そういう事か。当然と言えば、当然の考えか)


とある集団の前に到着し……ひとまず、竜弥たちはその集団に挨拶した。


「「「「「こんにちは!!!」」」」」


「げっ、お前ら……はぁ~~~」


「こんにちは。お前たち、休みでも怠けてないか?」


「あちゃ~~、見つかったか」


そう……勇夢が気になっていた集団は、勇夢たちが通う高校の若手教師たちだった。

その中には当然、教師二年目の千沙都もいた。


(なるほどな……こんな姿を過去に見てたら、JKの水着姿に興奮したりしないか)


黒のビキニを身に纏い、結月たち以上のスタイルを持ちながら……更に大人の色気も持ち合わせている千沙都。

まだまだJKの結月たちからすれば、チートとしか言えない存在が目の前にいる。


「大内先生、昼飯奢ってくださいよ!!!」


「お願いしゃす!!」


男子バスケ部のメンバーは一斉にバスケ部の顧問である智之に昼飯をたかり始めた。


そしてそれは女子バスケ部の顧問である千沙都にも同じことが行われていた。


「ふ~~む……私としては構わないが、お前たちが今日の話は他の生徒に絶対に話さない……そう誓えるなら、奢っても良い」


「九条先生の言う通りだな。言っとくが、この事がバレたりしたら、最悪俺たちがクビになってしまう」


首を切るような真似をする智之だが、それは決して冗談ではない。

学校にバレれば、クビになってしまう可能性は十分にあるのだ。


「「「「絶対に言いません!!」」」」


「「「「同じく!!」」」」


「……なら、仕方ないか」


「大内先生、俺たちも出しますよ」


「おっ、悪いな……って、鳴宮じゃないか」


「どうも」


全員の後ろに隠れていた勇夢を発見した智之は、嬉しそうな表情で声を掛けた。


理由は……宣言通り、しっかりと体を作っているからだった。

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