第4話 早速お誘い
「……よくよく考えれば凄いよな。生徒の中で九条先生のラ〇イン持ってるの俺だけ……じゃなかった。もう一人だけいたか」
丁度良いタイミングで千沙都に声を掛け、勇夢は再び指導室に案内。
千沙都も勇夢が質問がありますと言いながら、絶対に授業についての質問をしてきたのではないと解っているので、わざわざ二人になれる場所へ移動。
そして案の定、勇夢からの言葉は他の生徒や先生がいる場所で聞かれれば、一発で誤解される内容だった。
ラ〇インを教えてほしい。
どう考えても、周囲に誰かがいる状況でそんな発言をすれば、こいつ頭おかしいのでは……と、勇夢が白い目で見られる。
連絡先を教えてほしいと言われた千沙都は十秒ほど目を瞑って考え……そっとスマホを取り出し、ラ〇インのバーコードを見せた。
本日の二人のやり取りはそれで終わり。
ただ、一応勇夢と浮気関係である千沙都にとっては、とてつもなく肩に何か思い物が圧し掛かり、息苦しい時間だった。
自分と勇夢との関係を考えれば、ラ〇インを教えるか否か……そんなの、教えるという選択肢しかないのは分かり切っている。
だが……それでも、常識的に考えて……特に親しくもない者に教えたくない。
毎日無駄にメッセージが送られてくるかもしれない。
そういった事を諸々考えると、頭と胃が痛くなる。
そんな千沙都の気持ちも知らず、勇夢は非常にルンルン気分だった。
(毎回学校内で二人っきりになれる場所に入って、色々と決めるのも怪しいしな。連絡先があるに越したことはない)
なんて思いながら、既に千沙都のラ〇イン画像を眺めている時間が五分が経過した。
ただのラ〇イン画像かもしれないが、勇夢にとっては気になっていて……特別な関係へと発展した人のラ〇イン画像。
それを見続けると、思わずだらしない表情でニヤニヤしてしまう。
「さて、連絡先をゲットしたんだし……やっぱりデートに誘うべきだよな」
人それぞれかもしれないが、恋人になればまずは二人っきりでデートに行きたいと
思うものだろう。
チェリーボーイである勇夢にとっては、まずセ〇クスするよりも、そっちが頭に浮かぶ。
しかし、千沙都をデートに誘おうにも……上手く指が動かない。
「ッ……だ、駄目だ! なんてメッセージを来れば良いか分からない」
今まで一度も彼女がいたことがない……どころか、一回も女の子と遊んだことがない勇夢にとっては、ただメッセージを送るだけでも大きな試練。
「……ダメだ。良い内容が浮かばない」
とりあえず思い付いた誘い言葉をノートに書いたが、どれも良い内容だとは思えなかった。
「こういう時の為のネットだよな」
自分の力では無理だと思い、勇夢は直ぐにネットの力に頼った。
サラッと調べたところ……あまり高校生の勇夢が使うには、背伸びしている言葉が多く、大きなため息をついた。
「高校生の俺がこんな言葉使っても……九条先生からしたら、背伸びしててダサいガキって感じだよな」
好感度が明らかにマイナスのは理解しているが、なるべくこれ以上下げたくない思いはあるので、下手にカッコつけて失敗はしたくない。
「……ストレートに聞くしかないか」
これ以上考えても仕方ない。
覚悟を決めた勇夢はまず、千沙都に今月空いてる日はありますかと、そもそもデートに行ける日はあるのかと尋ねた。
「ふぅーーーーーー!!! とりあえず、返事を待つだけだな」
たった十数文字のメッセージを送っただけで、何故かやり切った感を出す勇夢。
傍から見ればヘタレすぎるかもしれないが、碌な経験がなく相手がそれなりに歳上……プラス、自身の学校に在籍する教師という事もあり、勇夢はメッセージを一つ
送るのすら一苦労。
そしてメッセージを送ってから数十分……ジーっとメッセージ履歴の画像を見続ける勇夢だが、一向に返信は帰って来ない。
それどころか、既読すらつかないという絶望的な状況。
「……ダメだ。緊張し過ぎて胃が痛くなってきた」
これはダメだと思い、一旦スマホを閉じて今日の授業で習ったところの復習を始めた。
そこからいつも通りの勉強して遊んでのルーティンを繰り返し、寝る前に風呂に入る。
そしてのんびり湯に浸かってから髪を乾かし、スマホを見ると……まだメッセージは帰ってきていなかったが、意外にもその日の内に既読が付いていた。
「ッ!!!!! これは……期待しても良いのか?」
経験ゼロの勇夢は既読が付いただけで、若干テンションが上がってしまった。
普段は風呂から上がれば一時間以内には寝るのだが、返ってきた返信を直ぐに返す為に持っていると……余裕で風呂から上がってから二時間は経った。
だが、未だに「今月空いてる日ありますか?」の返事は返って来ない。
しっかり睡眠は取りたい派の勇夢は、もうさすがに無理だと感じ……布団の中に入った。
翌日……目覚まし時計の音で起き、ラ〇インを確認すると……なんとメッセージが返ってきており、一気に眠気が吹き飛んだ。
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