第5話 本当に卒業するまで?
SIDE 千沙都
「……はぁーーーーー。こんな事になるなんて……いえ、私の不注意よね」
勇夢に竜弥とハグしている動画を見せられ、特別な関係になってしまった千沙都は自宅に戻り……操り人形の糸が切れたかのように倒れ込んだ。
(ただでさえ、私は教師で竜弥は高校生……当たり前だけど、学校ではもっと感情を堪えなきゃいけないのに)
元々学校内でハグするつもりなど無かった。
だが、竜弥に分からなかった部分を教えた後……何故か、そういった雰囲気になってしまった。
本当なら、千沙都はそこで竜弥のことを少し傷付けてしまっても、その雰囲気を断ち切らなくてはならなかった。
なのに……恋人である竜弥の愛おしさに負け、ハグをしてしまった。
勿論、数秒ほどで直ぐに離れた。
だが、勇夢に見せられた動画ではどこからどう見ても、教師と生徒がハグしている。
そしてその教師は一目で千沙都と分かり、ギリギリだが生徒も竜弥だと分る。
そんな画像をもし学校側にバレたら?
当然、飛ばされてしまう。
今どきであれば、ネットのニュースに乗ってしまうかもしれない。
(鳴宮君とう、浮気関係なんて考えられない。でも……絶対にあそこで断ったら、動画を学校側にバラされていた)
まだ自身の生徒になってから、一か月も経っていないが……鳴宮のことは比較的手の掛からない良い生徒……と、思っていた。
教師という立場からすれば、問題を起こさず授業中に騒ぐことなく掃除もきっちり行う。
その辺りを考えると、生徒としては好ましい。
だが、現状を考えると……とんでもない羊の皮を被った狼だったのではないかと思える。
「三年間……竜弥が卒業すれば関係を解消してくれるとは言ってたけど、本当に解消してくれるのかしら」
今後の教師生活も不安だが、千沙都は竜弥と勇夢……二人が卒業してからも不安だと思っていた。
「……駄目ね。わるい考えが止まらない」
千沙都はその悪い考えを消すために、夕食よりも前に風呂に入った。
「……………………浮気関係ってことは、鳴宮君とも竜弥と同じ様にデートしたり……しなきゃいけないのよね」
勇夢側としては、当然千沙都とデートする気満々。
寧ろ、思春期の高校生なのでその先まで……なんてピンク色な内容も少々考えていた。
好きでもない相手とデートする。
そんなこと、千沙都は今まで一度もしたことがない。
千沙都の容姿を考えれば中学生から現在まで彼氏が途切れずいてもおかしくないのだが、年頃の女子学生の様に彼氏という存在にあまり興味がなかった。
告白された数で言えば、それこそ全てを考えると……数えきれないほど告白されてきた。
だが、勿論その全てを断ってきた。
時には歳上からも告白されてきたが、それらもバッサリと切り捨てた。
友人からは一度デートしてから決めても良いんじゃないの、と言われても絶対に異性として意識していない男と二人っきりで遊ぶことはなく、異性と遊ぶ際には必ず男女複数人の状態で遊んでいた。
「……竜弥には、絶対にバレるわけにはいかないわね」
千沙都の知る竜弥であれば、千沙都の現状を知れば絶対に自分を責める。
それだけは絶対に避けなければならない。
竜弥のせいにさせてはならない。
あれは大人である自分が誘惑に耐えられなかった故に失敗。
そこまで竜弥のことを思っているのであれば、いっそ別れた方が良いのでは?
そう思う者がいてもおかしくないが、千沙都はあの時……竜弥への認識が幼馴染の弟から異性の男性として変わった時に……一目惚れしていた。
八歳も離れた異性に一目惚れというのは如何なものかと思われるかもしれないが、あれは誰になんと言われようとも……千沙都の中で竜弥に一目惚れした瞬間だった。
故に……そう簡単に今の関係を切り捨てようとは思えない。
この人、千沙都はこの先起こるかもしれない未来について悩まされながら眠りへついた。
そして、衝撃の日から数日後……現状的に勇夢からの要求を断れず、千沙都は自身のラ〇インを教えた。
本来であれば教える必要がなく、寧ろ立場的に教えてはならない。
そんなことは解っているが……断れる立場ではなく、悩ましい表情をしながら勇にコードを見せた。
それから直ぐに、勇夢から送られてきたメッセージに頭を悩ませられる。
「これは……あれよね。やっぱり、私をデートに誘うために送られてきたメッセージよね」
今月空いてる日ありますか? という一通のメッセージが送られてきた。
今まで竜弥意外と付き合ったことはないが、友人の恋愛話はたくさん聞いてきたので、それぐらいは千沙都も理解出来る。
当然、勇夢とデートなんてしたくない。
そもそもメッセージすら返したくない……のだが、そんな訳にはいかない。
女子バスケットボール部の顧問をしているので、それなりに忙しいが決して休みがゼロという訳ではない。
ただ、どういった内容でメッセージを返せば良いのか悩みに悩んだ結果……気付いたらベッドではなくソファーの上で寝てしまっていた。
慌ててスマホを開いた千沙都はとにかく返信はしなければと思い、正直に空いてる人を教えてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます