第43話 正解はない問題

(どうやって聞き出そうか……)


男子バスケ部に入部し、それなりに竜弥とも仲の良い関係になれた……と思うが、まだそこまで踏み込んだ話が出来るほど仲が良い、とは思えない。


(歳の離れた美人系の女性が好き。それが事実なんだろうけど、勝手にそれを伝えたら伝えたらで、後々問題が起きそうだしな)


学校に向かう途中、授業中も殆どそこら辺について考えていた勇夢。

しかし、中々良作が思い付かない。


(……誰かが、そういう話を出してくれたら良いんだけどな)


男子学生が恋バナをするのは珍しくない。

その場面で竜弥に探りを入れることが出来れば、とりあえずの情報は手に入る。


(他人任せなのは良くないかもしれないが……いや、俺が勇気を出すのが一番手っ取り早いよな)


なんて考え事をしながらシュートフェイクをかまし、先輩のディフェンスを躱してミドルシュートを決めた。


「ナイッシュー!」


「うっす!」


ゲームが始まれば絶対に片方のチームに参加し、そつなく仕事を果たす。

先輩たちも新人戦で勇夢がレギュラー入りするのは確定だと思っており、パスを貰いたいタイミングなどを伝えていた。


「……」


その光景を羨ましい目で見る竜弥だが、その目に腐りはない。

ゲームに全く参加出来ない訳ではなく、少ない機会で自分の有能性を示そうとチャレンジを続ける。


「はぁ~~、今日も疲れた~~~」


練習が終わり、帰り道のコンビニで買い食いをしながら集団で道を歩く男子バスケ部一年。


「勇夢はそうでもないって感じだな」


「いや、そうでもないよ。家に帰ったら眠くなるし」


体力的には問題無い……と思っても、実際に家に帰れば疲れが睡魔に変わって襲ってくる。


「……そういえば、竜弥……また告白されたんだっけ?」


「おっ、そういえばそうだったよな!!」


偶然、偶々耳に入った情報。

その話をしていたのは男子ではなく女子だったため、それなりに信憑性があると思い、話題の一つとして本人に確認。


勇夢以外に一人だけその話を知っている者がいたが、他の部員は桃馬も含めて知らない話題だった。


「マジか、またかよ……やっぱ色男は違うな」


「クソ、少しでもそのモテ成分をくれよ!!!」


いかにも男子高校生らしい言葉が飛び交う中、桃馬が核心について問うた。


「それで、付き合うのか?」


「いや、断ったよ」


既に高校に入学してから最低でも五回以上は告白されている桃馬。

しかし、それらは全て断っている。


この行動に、勇夢以外の者たちは理解出来なかった。


「またかよ。全部知ってる訳じゃねぇけどよ、顔面偏差値そこそこ高い女子ばっかだろ」


「とりあえず付き合ってみよう、って思わないのか?」


「そうだね。そりゃ、告白されるのは……嬉しいと感じるよ。でも、殆ど関りがない人に告白されても、って思って」


実際の理由とは違う。

だが、その言葉自体は嘘ではなかった。


しかし……勇夢と、竜弥の中学からの友人だけは、それが実際の理由ではないと気付いていた。


「ばか、それこそ付き合ってから知っていけば良いんだよ」


「その通りだぜ。俺だったら、とりあえず付き合ってみるな」


それが良いが考えなのか、モテないからこそ出てくる考えなのか……正解がない問題かもしれない。


「……竜弥はさ、付き合う理想の人っていうのが、結構固まってるのか?」


「あっ、だからどんなに告白されても、今まで断ってきてるのか!」


「なるほどなぁ~……でもよ、それだとちょっと理想が高過ぎねぇか?」


「確かに。なぁ、どんな女性なら付き合いたいって思うんだ?」


同級生全員からの視線が集まり、竜弥は目をあちこちに泳がせながら、ゆっくり話し始めた。


「え、えっと…………一緒に居て、幸せって思える人……かな」


体の良い言葉。

そう思えなくもない内容だったが、少し違うと何人かが気付いた。


「一緒に居て楽しい人、とかじゃないのか?」


「うん、そうだね。幸せだと感じる人が……理想の人かな」


本音かどうか疑わしいと思う者もいたが、竜弥が嘘を言っているようには思えなかった。


「幸せってことは……えっ、既に結婚を見据えてるってことか!!??」


「いや、そういう訳じゃないよ!! ただ、その……そう思える人こそ、本当の意味で一緒に居て楽しい人……なのかなって思ってさ」


慌てて「既に結婚を見据えている」というワードを否定する竜弥だが、真実を知っている勇夢からすれば、少し胸焼けしそうな気分だった。


(ちょっとお腹一杯な気分だ)


自分からそういった話題を出し、悪くない情報を得られたが……非リアにはダメージを食らう状況になった。


「……解らなくもねぇけど、俺らまだ高校生だぜ。もっとこう、色んな人と付き合って、本当にそう思える人を見つけるのもありなんじゃねぇの」


「だよな~~、って言いたいところだけど、竜弥みたいにモテモテじゃない俺らが言ったところで、完全に負け惜しみだよな」


「うっ! そ、それを言うなよ!!!」


二人の会話に他の部員たちが笑い出し、竜弥の表情から少しずつ恥ずかしさが引き、途中で殆どバラバラになって解散。


元気良く別れを告げた後、勇夢は早速得た情報を結月に伝えた。

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禁断の恋にカオスをぶっ込む? 期限付きの男子高校生と美人教師の危ない関係 Gai @shunsuke3144132000

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