エレメント・ヒーロー戦②

 ジャーギルは薄笑いを浮かべながら俺の方を見ていた。

「動けないだろう、プランツ元素エレメント勇者ヒーローの蔓に拘束された者は抜け出すことは出来ない」


 なるほど俺の体に巻き付く植物の蔓状の縄。

 驚いたことに植物性の蔓なのに、蟻頭の攻撃を食らっても蔓は焦げる程度で燃えない。

 また引き裂いてやろうと力を籠めるのだが伸びはするが切れなかった。


 これが元素エレメント勇者ヒーローの力なのだろうか?

 そういう意味では蟻頭は強力な攻撃が出せるようだが、その攻撃が単調だった。


 そうか、蟻頭は召喚されて間が無いため力の使い方がまだ分からないということなのでは?

 よって今、攻撃するなら蟻頭と言うことになる。


 俺は結界を多重に張りなおす。

 体の外の防御結界以外に蔓と俺の間にも結界を張る。


 結界をだんだん広げていく、そうすると蔓と俺の間に空間が出来てくる。

 そのまま蔓は俺の体から抜けて落ちて行った。


 結界を張れる俺は拘束なんかできないということだった。


「なんだ、どうして蔓の拘束を抜けられるのだ?

 グレーブ、蔓が切れたわけでもないのに、あれはどういうことなんだ?」


 ジャーギルは驚きながら横のプランツ元素エレメント勇者ヒーローに問い詰めていた。


 プランツ元素エレメント勇者ヒーローはグレーブという名前なのか?

 そんなことが分かっても嬉しくないけどね・・・

 うっとおしい火の玉攻撃もうんざりして来た。

 フレイム元素エレメント勇者ヒーローの蟻頭にこちらの攻撃をお返ししようか?


「フェザーウイング」

 技名は今付けた、内容は何時もの技だが、技名を叫ぶなど俺も中二病だな・・・

 いつものように小さな羽根の結界に圧縮した酸素と水素を入れた羽根フェザーを多数準備した。

 その後俺の周りに多数の羽根フェザーが作り出され鳥のウイングのような形に広がる。

 これが羽根フェザーウイング、そして俺は鳥人のように見えるだろう。


 一番外の結界を解除すると一気に羽根フェザーを発射する。


「シュート!!」


 そう叫ぶと羽根フェザーは蟻頭を目掛けて一機に目標に向けて飛んで行った。

 そして羽根フェザーは次々に補充されている。


 ドドッドドッドドドッドドドッドッドッ

 圧縮された水素と酸素の爆発によるすさまじい音が長い時間響き渡る。

 俺の今の目標は蟻頭だけだった。

 そして索敵に蟻頭が分かる間攻撃を続ける。


 今なら経験値が少ない蟻頭を倒すことは容易なはずだ。

 案の定、索敵にも蟻頭が見つからなくなり爆発音が止んだ時、そこには焼け立たれた蟻頭の躯が転がっていた。


 召喚されて間が無い蟻頭はアッサリと倒すことが出来た。

 だがこの間にも蔓で攻撃してくるプランツ元素エレメント勇者ヒーローは厄介だ。

 先ほどから蔓の攻撃は魔法力を追加してきているのか炎や雷を纏い始めていた。

 つまり奴は俺を倒す方法を色々と試行しているのだ。


「なんだ、今の攻撃は・・・

 フレイム元素エレメント勇者ヒーローが火で葬られるなんて」


 ジャーギルは驚いていたがグレーブは冷静に俺の方を見て攻撃を繰り出していた。


 目的通り蟻頭は葬ったが、グレーブは手ごわそうだ。

 さっきから、奴はジャーギルにすら気づかれないように根を広範囲に張っているようだった。

 危ないところだった、俺も索敵を強化して初めて分かった用心しておかなければ。


「奴はアクア元素エレメント勇者ヒーローはずだ・・・

 フレイム元素エレメント勇者ヒーローを倒せるほどの火属性を持っているのは何故だ?」

 ジャーギルは遠目からでも分かる程震え、冷静さを欠いていた。

 それとは対照的にグレーブは冷静だった、そしてグレーブは一心に何かを詠唱しているようだった。


 簡単すぎた蟻頭と同じに考えてはいけないようだな、

 そうグレーブは何かを企てている、そう考えておく方が安全だ。


 やがて詠唱が終わると周りの地面からグレーブの根っこがまるでタケノコのように付きあがって来た。

 その根はやがて人型になると数百数千のグレーブとなって根であるにもかかわらず地面から離れる。

 やがて、奴らは手に鞭や剣を持ち、俺に襲い掛かって来た。


 再度俺は羽根フェザーウイングを使う。

 纏うウイングから発射される多数の羽根フェザー、その攻撃により多くのグレーブmp分身は消えていくが分身の数は数千に及び終わりのない状況だった。


 多くの分身への攻撃に意識を奪われていた俺は、不意に後ろから蔓の攻撃に襲われた。


 奴の本体が地下を通り、後ろに現れたのだ。

 即座にそちらに攻撃を集中するが瞬間的に奴は分身と入れ替わっていた。


 俺は索敵を最大にし奴の最も有効な攻撃目標を探していたが、奴の長い蔓が何かを縛り付けてこちらに見せつけるよう押し出されてきた。


「ジェイ!!、ごめん」


 その声、それは聞き覚えのあるはサンクスの声だった。

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