召喚失敗者、妖女を愛して生きていく。
茶猫
一章 妖女と社畜
異世界召喚①
ブラック企業に勤める日々、今日もIT土方で頑張る俺。
まだ童貞、しかも彼女無し、おまけに収入と労働時間を考えれば結婚は難しいだろう。
おいおい、若者に夢がなさすぎるだろう、異世界ものが流行る理由が分かる。
生きるための仕事が全てを支配するこの世の中とは大違いだからね。
気の合う仲間とと自分の自由な時間、そして面倒なことは魔法で解決して、夢の自立生活。
そうだ狩りをやって食べ物を得て、後は仲間と女の子と一緒の時間なんだ。
しかし現実はというと悲惨な現実だった。
流石に徹夜三日ともなるとなんか怪しくなってくる。
「うふぉ!!、画面がZで覆われた……、3時間の努力が……」
中島が大声を出す、どうやらキーに手を振れたまま意識を失ったようだ。
眠気と戦い納期と戦う俺たちIT土方の日常だ。
このくらいで意識を持って行かれるなんてまだまだ修行が足りない。
そんな中、小林が気分転換だとか言って話をしてくる。
「この状況は異世界転生の主人公に近い、そうだ、俺たちはやがて異世界転生するんだ。
なあ、水神はどんな世界に転生したい?」
「考える余裕が無いな、強いて言えば美女が沢山いるハーレムな世界が良いな」
「そうそう、それそれ、そうでなくちゃ異世界では無いよな。
よし俺は、今日夜食を買いに行くときにトラックに撥ねられて異世界に直行だ」
「小林、お前な、明日納期なんだぞ、そんな時に居なくなるなんて無責任じゃないか?」
「いや、そんなことは無い俺は十分戦ったさ、もう十分だ、明日からハーレムに行くぞ」
小林がここまで追い込まれているのは珍しいな、とは言えこの一か月まともに家に帰った者は居ない。
そうだよな、想像の世界くらいは自由に行かせて欲しいと思うよな。
そうか、だとすると俺は転生ではなく召喚が良いよな、この世界には両親も居るんだ。
だから自分の都合がいい時だけ召喚されて、通常はこの世界に戻って来る生活をする。
「異世界の美少女が俺を召喚してくれないかな……」
「おっ、水神もスケベだな……」
「なんでそうなるんだ……」
「美少女というところかな?」
「いや、それはお前も同じだろ」
「そうだ、だからスケベだと言っている」
「そうか小林もスケベだったな」
「うるさいぞ、今必死なんだ静かにしてくれ」
さっき画面を[Z]で埋めた中島が怒っていた。
「そうだな静かにするわ、俺、夜食買って来るわ、お前ら何が良い?」
「ミソラー、ブラックも一緒に」
「ヤキソバ、オレンジ」
「キツネ、あと豚まん、デッカビタミンALL」
「了解、買って来たら集金するから、待っていて」
そう言うとビルを出て行った。
夜はまだ肌寒く、近いはずのコンビニまでの距離が遠く感じられる。
世間の働き方改革なんて知らない、結局この業界の働き方は変わらないようだ。
あいつらが頑張っているから俺も頑張れるんだろう。
こんな仕事でも、いつか報われるときも来るのだろうか?
コンビニまでの道のりを急いでいると、足元が丸く光り、その後体全体が光に包まれた。
耳には呪文のようなものが聞こえていた。
「何だよ、これ?」
光の色は青色だった、だがその光は眩く目を開けては居られない。
大勢の歓声のような声が聞こえたかと思うと、光が消え始めた。
そのまばゆい光は消えると目が慣れてくる、そして見えてきた風景は広間のようだった。
そこにはローブを来た者が5名、昔の中世の甲冑を着込んだ者が数十名。
それより、俺の立っているところが大きな魔法陣だった。
「おいおい、本当に召喚されたのか?」
その時再度歓声が起こった。
俺の横に赤い光が噴き出し?
その光の中から人が現れた……
というか人では無く、蟻の頭を持った
魔法陣を取り囲んでいた者達は話を始めた。
「陛下、成功です、同時に二名の召喚に成功しました」
「でかしたぞ、それで、言葉は通じるのか?」
「召喚の儀式を通過した者たちです間違いなく通じる筈です」
「
まるで偉いコックであるかのような、高さのある王冠が目立つ王様らしき者が俺たちの前にやって来た。
「あなた方を召喚したクレスト国王のバンクスです、さて
そうそう褒美の品は望みのままです、何なりとお申し付けください」
召喚されたのは間違いなさそうだ、しかし、どうするんだよ明日納期だぞ。
とりあえず今日は、帰えれるように話し合おう。
そう考えて話をしようとした時、騒がしい女が入ってきた。
女はケバイ衣装を着てタトゥーを体中に入れていた。
お友達にはなりたくない感じの女だった。
「お父様、お父様、人型の
人型?俺のことか?
王を「お父様」と呼ぶと言うことは王女と言うことか……
「そうであったな、人型の
王とか自称していた奴はそんなことを言っていた。
とりあえず質問をした。
「ここは何処ですか?」
そう質問をするが、誰も何も答えず王女が近づいてきた。
「あなたは
私に凄い
「いや、魔法は使えません」
「魔法が使えない?なんの冗談なのかしら?
人である以上、魔法無しで生きて行けるはずが無いから使えるでしょ?
それとも人型でも人では無いの?」
「人ですが魔法は使えません、俺の世界では魔法などありませんから」
「そんな、貴方どうやって生きてきたの?
そうそう、でもたとえ貴方の世界に魔法が無くとも、世界を渡る時に
「何のことか分かりません、魔法は無理ですから」
「こうやればできるでしょ」
女は手を交差すると少し腕を振るようにした、そうするとフワッと炎が上がった。
「やって見なさい」
そんなことを言われてもできる筈がなかった。
とりあえず真似してみたが何も起こらなかった。
目が点になる王女、そして馬鹿を見る目で俺を見ていた。
「これは
とうとう、俺は「これ」呼ばわれされ始めたよ。
王の傍に居た魔導士らしく者が反論していた。
「そんなはずは、間違いなく
「分かった皆の者エレメントをこのお方に見せてあげなさい」
周りに居た魔導士が全員同じ格好をし始めた。
「さてこの中で誰がフレイムの使い手かしらね、エレメントが見えないと避けられないわよ」
「さあ、全員で攻撃するのよ」
おろおろする召喚した魔導士
「王女様お止め下さい、もしものことが有った場合次の召喚が出来なくなります」
王女は全く気にしなかった。
「大丈夫よ、エレメントが見えるならちゃんと避けられるから」
そうは言われても見えないのだ。
「危険なことはやめろよ、見えるわけ無いだろう」
「残念ね、フレイム・スラッシュ」
ガガガガ~ンと俺の頭の上を大きな炎が通っていた。
幾分髪の毛が焦げたようだ。
「はっはははは、まるで猿ね」と王女は笑い出した。
状況を見ていた王も怒り始めていた。
「魔法が使えないのか…
やはり複数の
「いえ、調べれば分かります、本人は気が付いていないだけなのです、大丈夫です
魔導士らしき男はおどおどしながらも俺に質問をして来た。
「どうじゃ、そこの男、おおそうじゃ名前をまだ聞いていなかったな、名前は何という?」
「
魔導士らしき男は焦り出したのか何か手を動かし始めた。
「お前はまだ気が付いていないだけだ、世界を渡る時に
魔導士が手を動かしている以外何も見えない、俺には何をしているのか分からなかった。
「やっぱり貴方はポンコツね、
その様子を見ていた蟻の
「ギギィギィギィギィ」と蟻の
「こちらの蟻の
「ジャーギルよ、その男の処理をしておけ」
「もう一晩だけ、もう一晩だけ様子を見させてください、間違いなく召喚石が呼んだ者です」
「好きにするが良い、ただし一晩だけだ、違うと分かれば、その男を始末し、直ぐに本当の
「とりあえず、その男を牢に入れておけ。
蟻の
それとは対照的に、俺は囚人のように腕を掴まれて暗い牢屋に連れて行かれた。
「明日納期なんだよ、帰らせてくれ」
そう叫んでも誰も反応はしなかった。
牢に入れられて、牢の外に居る魔導士の男を睨んでいた。
「牢から出たければ、
「俺をどうするんだ、不要なら返してくれ」
「それは出来ない、第一にお前は帰る方法が無いのだ。
第二にもし
だが、我々が始末すれば次の召喚が出来ないので、我々以外の者に始末されるか病気で死ぬことになるだろう」
「帰れない?そんな筈はない魔法で呼んだんだ、帰れるだろう」
「帰れないのだよ、そう言う決まりなのだ召喚石が決めたことだ」
「少しでも生きて居たければ
魔導士はそのまま帰って行った。
「帰れないとか、明日の納品はどうすりゃ良いんだ!!」
完全に頭が混乱していた、そうでなければ納期なんか気にしないよホント。
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