【挿話】イグルの回想 ガリアとマグリ②

 ガリアの領地は大半が火の海となり多くの犠牲者が出た。

 そしてガリアの居城は崩れさり彼の家族は犠牲になっていた。


「すまないリガル、もっと早く帰って来ていれば」

 ガリアの涙にイグルはかける言葉が無かった。


 ガリアは気を取り直しイグルと今後の話を始めた。

「イグル、直ぐに残った者達を非難させよう」


「そうだな、大規模遠隔魔法による攻撃は絶大だが連続攻撃は出来ない。

 今のうちに避難させよう」


 ザガールの戦士な勇猛だから反対派もいる、サンブルド王国軍を迎え撃つという者達も居た。

 反対派もガリアは熱心に説得して行く、やがて全員が避難することになった。


 その夜のこと、マグルが避難する人々を支援するために来ていた。


 崩れたガリアの居城に手を合わせるマグル。


「マグル姉さん来てくれてありがとう、でもこんな危険な所に来ることは無かったのに」


「あなた達に異変が迫っているとお告げがあったのよ」


「あなた達?」


「ガリアは既に感じているんじゃないの?」


 イグルには何のことか分からなかったがガリアには分かったようだった。


「イグル、実は知りたかった力の根源が分かったかもしれない。さっきから聞こえるんだリガルの言葉が・・」


 マグルは心配そうな顔になると少し強い言葉を使う。


「その力は使ってはいけないわ、騙されないであなたに聞こえている言葉はリガルの言葉ではないのよ」


「そんなことは無い、リガルしか知らないことも俺に話してくれるんだ」


「お願いその言葉に耳を貸さないで」


「姉さんだってお告げを聞くことが出来るんだろ、俺にも同じ力が授かったんだよ」


「違うのよ、私の力は『光の力』あなたの力は『闇の力』なのよ」


 イグルはその言葉を聞いて途切れたピースを見つけパズルを組み上げたかのように呟いた。

「そうか、エレメントとは異なる魔法力『闇と光の力』。そうか変身(メタモルフォーゼ)系の魔法の力ではなく闇魔法の力なのか?そうか怒りの力というのはマイナスの力だから『闇の力』を元にしていたのか」


 マグルはその力を必死に否定しようとする。

「そうよ、でも『闇魔法の力』は禁忌の力、だから使わないで」


 マグルの言葉にガリアは彼女を安心させるように言葉を繋いだ。

「分かったよ使わないようにするよ、イグルも使わないよね」


「というか私はまだ何の声も聞こえないけどね・・・マグル本当は根本の魔法力が『闇の力』だと知っていたのか」


「ええ、知っていたわ。私は王族の中で光の力を持つシャーマンの地位を持つもの『お告げの力』により理(ことわり)を教えられるのです。

 魔法力と言ってもその発生要因が複数あります。

 エレメントが物質の力であるのと異なり光と闇の力はそれぞれ意思を持つ力なのです。

 もともとの『闇の者』が『闇魔法の力』を使うのであれば普通に魔法力として機能するのです。

 でも私たちのような通常の人が使う場合は使える力に制限があるのです。

 それは『闇の掟』により決まる力、通常の怒りの戦士アンガーファイターへの変身は怒りの力により制御が出来る魔法力なのです。

 もしもっと強力な力を要求し『闇魔法の力』のリミッタを外した場合、『闇の掟』が働き『闇の意思』が強く出てきます。

 そして使い続けれれば『闇の力』に取り込まれるのだそうです」


 マグルは恐れからか、少し声を震わせる。

「闇の者の意思に乗っ取られ、世界に対する憎悪に支配されるのです」


「マグル姉さん、闇の力に取り込まれるってどういうこと。僕はリガルの声を聴いた程度だよ」


「それはリガルの声を借りた魔の者達の声、彼らは人間の一番弱い心の隙間を付いてくるのです。あなたが最も欲しいと思っているものを提供してくるのです。騙されてはいけない。それはリガルではないのです」


「分かった気を付けるよ・・・」


 素直に納得するガリアだった。


 その夜テントに眠るイグルとマグリ。

「ああ、恐ろしいこと『闇の力が』ガリアに近づいている」


「ガリアはそんな力に負けないと納得していたじゃないか」


「いいえ、きっと逆らえないわ。あの力には」


怒りの戦士アンガーファイターは制御できるんだ、大丈夫だ」


「あなたは『闇の力を知らない』のよ、私達ザガールは力を信じ、エレメントの魔法の力を否定した。

 結果、通常の力で変身したように見える『闇魔法』を基本とした魔法力に染まって行ったのよ。

 殆どが使う『闇魔法』、その力は使えば使うほど人を『魔物』にする力だった。

 それとは逆に王族の中の敬虔な神に仕える者の中からシャーマンが生まれた。

 私たちは『光魔法』により光の意思の伝達者となった。

 光の意思は見守る意思だから何も出来ない。

 でも『お告げ』により『闇魔法』を制御できる程度に使うように民衆を指導してきた。

 今恐れているのは怒りの巨人アンガージャイアント、あの力はシャーマンでも制御できない。

 怒りの巨人アンガージャイアントはとっても危険な変身です

 もしガリアが変身してしまったら誰も止められないでしょう」


「ガリアはそんなことはしないだろう」


 マグリは悲しそうな顔になり声を震わせた。

「いえ、もうリガルの声を聞いてしまっています。闇の力が聞かせているのは分かっても、逆らうことは難しいと思います。リガルを愛していれば愛していたほど」


 イグルは口には出さないが少し心配していた、マグリは来た時に「あなた達に異変が迫っている」と言ったのだ。

 それは、今までの話を総合すると自分も『闇の力』の顕現が待っているということだと認識していた。


(私も『闇の力』に飲み込まれる可能性があるということなのか?)

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