ああ、憧れの・・・

 子供のころ見たアニメに出て来た巨大ロボット。

 それが本当に俺の前に現れ始めた。


 ただのブロックを組んだようなゴーレムはバグラの掛け声で変形する。

 バグラとギアナはタンデム型の複座に座っているかのような体制になり光の球体に包まれた。

 そしてその球体は変形するゴーレムに吸い込まれていった。


 やがてゴーレムは曲線の美しい赤いロボット?いや、ゴーレムに変形した。

 全身に金属のアーマーを着こんだようになっているのだから外観はロボットと呼んでも良いと思う。


「わハハハハハ、見たかこれこそゴーレムスーツだ。我々魔道戦士が長年研究し完成させた『ゴーレムを着こなすように操作する』魔法術式だ。このゴーレム名前は『魔道ゴーレム・イーグレット』という、冥土の土産に覚えておくが良い」


 憧れのロボットが現れ、ぼや~とした雰囲気の中で俺はバグラの言っている話に聞き入る。


 だってそうだろう、俺はワクワクの予感は当たったんだ。

 俺の目の前にあるもの、そう今見ているものはゴーレムではなくカッコ良い赤いロボットだ。


(もしアニメで題を付けるなら『魔道戦士ゴーレム』だな、タンデムシートに座る二人が動かす機動兵器。魔道ゴーレムという兵器の名前、それも全身赤(下半身一部白だ)で個体名が鷲(イーグル)みたいで主役機だよ、文句なしじゃないか)


 少なくとも俺はそのロボットから見た場合敵であるという事実すら忘れ、子供の頃に戻りそのロボットに見とれていた。


「どうだ、先ほどまでの木偶の坊とは違うぞ、人の頭脳を加えた時ゴーレムは英知を持った魔人となる。そして二人の魔法と精霊石による膨大なパワーを持つ。その力は結界防御、身体強化、身体高速化と魔法強化武器、攻撃魔道まで可能になった最強の存在となる。言うなればイーグレットは神にも等しい力を持っている!!」


 その説明を聞いているとロボットアニメの主題歌を思い出させるのだ。


 俺の頭の中には、あの頃聞いた主題歌『魔人だ~♪、マシンだ~♪、魔・神・だ・ぞ~♪』と何度も再生されていた。


 やがてそのロボット、いやゴーレムであるイーグレットは俺に対し攻撃態勢になった。


 奴らはそのためにワザワザそんな変形をしたんだから当然だな。


「この魔力の籠った拳に潰されるが良いわ」

 まずはロボットでは大道のジェットパンチらしき攻撃が放たれる。


 子供の頃の憧れのロボットが俺に襲い掛かってきた。

 そうだった初期目的を思い出した俺は戦闘準備に入った。


 ただ、子供の頃を思い出すと寂しかった。

「俺がカッコ良いロボットの敵役なのは納得いかないな」


 攻撃はロボットアニメではおなじみのジェットパンチだ。

「おおおお、本物ジェットパンチ!!」


 そうだ魔法で魔道ゴーレムの拳が飛び出したんだけど・・・


「えっ?手だけ?」

 驚いた、拳だけが飛んできた。


 なる程、科学的な設定が必要ないのだからジェット推進機構も必要ない。

 設定上は魔法で飛んでいるという理由ですべて解決する。

 よって拳だけが飛んでも不思議はない。


 ただし飛んでいる間、拳はグー、パーしているのが不気味で、興ざめだ。


 シュッ、ドス、ドス、ドス、シュ~ッ

 拳がグー、パーしながらもどんどん攻撃してくる。


 襲い掛かる拳に、俺はサンダーボードで避けながらフェザーを作り出す。

 それを拳に発射し応戦していくのだが、イーグレットの防御は普通のゴーレムより強力になっている。

 よって拳は同じ固い結界に守られているフェザーも効果はないようだ。


「ははははは、どうだ、普通のゴーレムとは違うのだよ!!、魔道ゴーレムを舐めるなよ!!」


 とりあえず剣で打ち返してやろうと思った。

 ラミアの剣は持ち主の思い通りの形になるので、剣を少し太くするとジャストミートする。


「ヤ~ッ」

 あれ?あっさり切り裂かれた。

 ラミアの剣って凄すぎだ

 (実は爪なのだが・・・)


 これでイーグレットは手が無いだろうとイーグレットを見ると既に手が生えていた。

 (流石の再生力だ・・・)


「生意気な!!、ではこれではどうだ!!」

 なんとジェットパンチ連続発射を始めた。


 シュッ、シュッ、ドス、ドス、ドス、シュ~ッ、シュッ、シュッ

 俺に襲い掛かる多数の拳、どの拳もグー、パーして飛んで来る・・・不気味だ。

 多数の拳に、俺はサンダーボードで避けながら考えた。


「どうだこの数、防戦しか出来ないようだな!!、無様だな!!」


 奴らには防戦一方に見えるようだ、結界を破ればフェザーも効果があるだろう。

 それは結界を中和しても良い訳だから、フェザーを形作る結界で相手の結界を中和させれば良い。


 ということで襲い掛かる拳に、俺はサンダーボードで避けながらマクロを少し修正する。


 拳の数が多いので避けながらというのは少し忙しい。


 新たなフェザーを作り出し拳に発射し応戦していく。 


 ドドド、ドド、ドド~ン

 次々と拳にフェザーが当たり消えていく。


「なんとジェットパンチが・・・」

 驚くような声が聞こえる。

 (おいおい、外部に中の人の声が漏れているぞ)

 

 手を両肩のボタンのようなものに置くイーグレット。


アックスブレイカー」

 そんな技名を叫びながらイーグレットの大きさに合わせた斧が両肩から二本出現した。


 見ている俺に向かってその斧を振り下ろして襲ってくる。

 イーグレットは身体高速の魔法の効果があり、さっきの愚鈍な動きではなく高速の攻撃だ。


 ただし、斧による攻撃は俺の身体高速化とサンダーボードの併用で簡単に避けられた。


「このチョロチョロと逃げ回りよって」

 バグラはイラついて来たようで、斧をアッサリ仕舞う。

 次に俺に激しい火炎弾の攻撃を始めた。


「わははははは、どうだ膨大な力を持った精霊石の力を借りた攻撃だ。威力が違うだろう威力が!!、お前など欠片も残さず消えるが良い」


 なる程、そうか二人分の魔力で強力な防御や攻撃ができるのかと思っていたのだが、どうやら精霊石の力だったようだ。


 ゴーレムを動かす原動力でもある精霊石。

 前回のゴーレムに使われていた石の大きさから考えるとこの程度の攻撃は容易いのだろう。


 イーグレットは火炎攻撃を打ち続けて周りが爆煙で見えなくなるまで打ち続けた。

 そして俺を倒したと思ったのだろうか、背中からは大きな赤い羽を広げた。


「えっ、もしかしてイーグレットは空も飛べるのか?!」

 

 そしてイーグレットは王女の居る方向に向けて大きな羽を広げ飛び立とうとした。

 だが攻撃の爆煙が消えると俺は元の場所に立っていた。

 当たり前だ、強力な結界で守られた俺には攻撃は効かなかった。


 俺の姿を確認したバグラは最早、俺など眼中にないように捨てセリフを吐いた。

「もともと、ロザリア王女が目的だからなお前などどうでも良いわ、悔しかったら空を飛んで来るんだな」


 何と言うことだろう、空中戦の挑戦状を頂いてしまった。


 俺は空と飛ぶゴーレム・イーグレットとの空中戦を開始することになった。


 ◆   ◆


 ロザリアは迷いながらも自分の為すべきことを必死で考えていた。

(私はどうすれば良いのでしょうか。フェスリーも私の命令を待っているように防御に徹している。こんな時に一人では何もできない、本当に私は今まで何を見て何をして来たのでしょう。今は自分が本当に無力だと思い知らされている)


 クレストとベルトガもゴーレムスーツ術式の構築を終わり黄色い『魔道ゴーレム・ベアラ』が現れようとしていた。

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