【挿話】イグルの回想 ガリアとマグリ④
ガリアを失ってからの俺はマグリへの思いもあって何もできなかった。
奴らが我がザガール国王クラバト王を倒し国を手中に収めてから、俺達の隠れ家に襲ってきたとき何もできず降伏するしかなかった。
奴らは俺を恐れていた、いや正確には
だが俺がガリアの一件から何も出来なくなったことを知ると俺を操るためにマグリを人質に取った。
マグリもグレスを人質に取られて結局奴らの言うことを聞くしかなかった。
そして奴らは俺を残った者達を束ねる役に据えた。
力がありながら奴らの言うことを聞く俺の言うことなど誰も聞くはずは無いと思っていた。
その時、俺は誰もが諦めていたと思っていた。
だが残った者は俺を慕ってくれた、それは彼らが見た
だから誰も希望の光を手放しはしなかったのだろう。
そしてあの日マグリが亡くなった。
情けないことに俺は知っていたが何も言えなかった。
奴らはマグリを夜になると弄んでいた。
そしてそれがエスカレートしてグレスの前で弄ぼうとしたのだ。
この時マグリは全てを捨てることにしたのだった。
マグリが死んだ・・・・
その時、俺は何をしているのだと自分を呪った。
ダメだ仲間を、いやグレスを巻き添えにするかもしれない。
俺はやはり腐ってしまったのだろう。
皆の希望には成ることは出来ない。
グレスは母の死を涙をこらえ凝視していた。
グレスは
その理由はマグリが一度だけ話してくれたことがある。
グレスは闇の属性も持ってはいるのだが、マグリから光の属性を受け継いでいるというのだ。
だからグレスの闇の属性と光の属性が打ち消し合って素直に変身(メタモルフォーゼ)出来ないのだという。
そしてマグリはグレスの光の属性を伸ばし、光属性の戦士を誕生させることが出来るかもしれないと考えていた。
そのためグレスには怒りや悲しみではない力で変身(メタモルフォーゼ)することを強いていた。
つまりグレスはマグリに闇の力を発現させることを禁止されていたのだ。
それはグレスにとって不幸なことだった。
だが、王族の末席であるグレスが力の無い子供であることで、俺を抑制する人質に適していたことで殺されずに済んだのだ。
それから数年、グレスはリョウ・ハリマに会う。
魔法を習ったことで光の力から変身(メタモルフォーゼ)出来るようになったがその力は闇の力には及ばなかった。
それでもグレスは研鑽を止まず今の力を得ている。
今では
その中身は決して闇の力に負けない新たなザガールの勇者なのだが誰も気が付いていない。
マグリお前が生きていれば本当に喜んだことだろう。
◆ ◆
クルーラは魔法で外部に声を響かせた。
「聞こえるか、イグル、お前の女房は本当に柔肌で忘れらん、今でも思い出すだけで本当にヒヒヒヒ」
「下衆が、お前たちにマグリを渡した俺は。。。」
「王族はすべて処刑が当然の扱いなのだがマグリだけは特別扱いだったのだ感謝してもらわんとな、そうお前たち親子のために特別に生かしておいたのだ」
「生かしておくだと・・・お前たちの慰みものにしておきながら」
言葉が続かないイグル、その表情は暗く、そしてまるで背伸びをするかのような仕草をし始めた。
父の様子がおかしいことに気が付くグレス。
「父さん落ち着いてください、どうしたのですか」
もう良いだろう、そうさ俺の役目は終わった。
マグリの望むようにグレスが新たな変身を遂げた。
これからはグレスがザガールを良い方向に向かわせてくれるだろう。
さあ、誰にも迷惑を掛けない方法で俺の決着をつけるときだ。
「いかん、イグル様は
「父さん止めるんだ、そんなことをしても母さんは喜ばない」
分かっているよ・・・
「マグリは、マグリは・・・・そうさ、マグリはそんなことを望んではいないだろう。
マグリ、本当にすまない、でも最後にお前の力を貸してくれ」
必死に叫ぶグレスの言葉は聞こえていたはずだった。
イグルはマグリ髪飾りを握ると自分の腹に差した。
(今までの全ての思いで負のエネルギーとして
そうさ今度は間違わない。
ただ一つ、ただ一つのことを思えば良いのだ。
『グレスのため』そう思うのだ。自ら争うことなど望まん。ただグレスとザガールの未来のため)
やがてイグルは大きく変身を始めた。
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