国無き王女は再興の夢を見るか①

 五分以上経っていたが降伏してくるのを待っていた。


 今また大きな音がした。

 ほかの所で魔導ゴーレムが破壊されているようだった。


 皆頑張っているのだろう、でも案外簡単に破壊されているな・・・

 魔導ゴーレムは外観とは裏腹に弱いのだろうか?


 しかし、奴等はいくら待っても降伏はしないようだ。

 つまり、このまま待っていても埒が明かないということだ。


「最後通告の時間が過ぎた、ではさようなら」

 最後通告も終わっているので攻撃開始の言葉を掛けた。

 これで降伏しなければ奴等は終わりだ。


 同時に準備していた「神の雷」に最後の呪文を追加し地上に落とし始めた。


 その頃魔導ゴーレムの中ではギアナが震えていた。

「バグラ様、『さようなら』とか言ってますが大丈夫でしょうか。降伏しましょう」


「ゴーズ様も応援をこちらに向かわせてくれているのだ、もう少し頑張るのだ」


 ギアナは待ち時間が永遠の如く感じていた。

「本当に応援は来るのでしょうか?」


「大丈夫だギアナ、お前も心配性だな。

 奴はもう五分などとっくに過ぎているに何もしないは何故だと思う。

 我々のこの防御に手も足も出ないのだ。

 もう少し我慢すれば応援が来て我々は逃げることも出来るだろう」


 その時空の上から大きな爆発音がした。


「来たか」


 『神の雷』が落ちて来た。


 元は宇宙に投げた剣だ。

 その剣は宇宙空間にて加速をさせていた。

 何もない真空空間、重力すら影響は少ない。

 そんな場所で加速を続ければ簡単に地上でのマッハ二十程度には簡単に加速する。


 ロケット推進もないのに加速できる理由は重力カタパルトという重力を利用した加速を繰り返させたのだ。


 今頃、計算上は地球にマッハ三十以上で突っ込んでくる位には加速されているだろう。

 剣は大気圏に突入時するとき、大気との摩擦と断熱圧縮による恐ろしいくらいの温度上昇をして、纏っている衝撃波は計り知れないものになるだろう。


 ただ一つの問題は「俺の剣の耐久性」だが、元はラミアの爪だから地上に激突するころには何も残っていないかもしれない。


 大気圏に突入し、やがて大きな大気の圧縮された衝撃波を纏った高温高密度の塊が落ちてくる。


 俺は結界を展開しながらその場から逃げた。


 ズゥ~~~~ン


 もの凄い光が放出され音は響き渡った。

 その後落下地点を中心に熱い圧縮された空気というか熱風と水蒸気などが広がって行った。


 数分後落下中心点はマグマのように溶けた溶岩が中心に溜まった大きなクレータが出来ていた。

 たぶん魔導ゴーレム・イーグレットは跡形もなく消し飛んだだろう。


「あ~~あ、やっちゃったかな・・・」


 結構周りに被害が出ているような気がした、なんとなくラミアが怒っていそうな気がした。


 ラミア達と合流しようとクレータの上をサンダーボードで通りかかると俺の剣が突き刺さっていた?


 なんということだろう、あの状況でも何ともないラミアの爪ってなんでできているんだろうかと思った。

 だがそう思うとラミアって本当は恐ろしい妖女なのではとか考えてしまうのだった。


 その少し前、ラミアはサンクス達と合流していた。


 ◆   ◆


 「サンクス!!」


 その声にサンクスは振り返った。


「ロザリア王女様!!ご無事でしたか」

 もちろんサンクスはロザリア王女がラミアと一緒だということも知っていた、だから大丈夫だとは思っていた。


 そしてラミアが居ることに気が付くと大きな声で叫んだ。


「ラミアさん、イグルさんを直ぐに処置しないと危ないんです、それとグレスさんも大変なんです」


「任せておきなさい」

 そうラミアは答えるとロザリア王女をサンクスの傍に下ろしてイグルの元に向かった。


 ロザリア王女の腕でぬむるフェスリーを見たサンクス。

「あれフェスリーは?」


「戦い疲れて眠っているようです。というか出産準備だとラミア様が言っていました」


「出産準備って、子供が出来るの?」


「そうだと思うけど、良く分からないわ」


「あとジェイは?」


「ラミア様は、まだ戦っていると言っていたわ」


「ジェイは一人でゴーレムを相手にしているのか、凄いな」


「本当にそうね」


 ラミアがイグルに回復措置をしていた。

「私はもう良いのです、グレスをお願いします」


「ジェイと約束したはずよ、誰も死なないのが約束、その約束を破るつもりかしら?」


「でも私の役目は終わりました」


「そんなことは無いわ」


「父さんその通りだ、まだ父さんも沢山のことをしなければならない。

 ロザリア王女に対しても我々がやって来たことの償いをしなければならないんだ」


「今となっては何も思いつかない。

 本当にロザリア王女にはどう償いをすれば良いのだろうか」


 そこにロザリア王女とサンクスが近づいてきた。


「大丈夫ですかイグル様」


「イグル様などと敬われる訳には行けません、私は王女様の国を・・・・

 なのにあなた様は私達をお助け下さる。

 私の罪は深い・・・・」


 その表情は苦渋に満ちていた。

 たとえ命令されたにしても前の少女の国を、親を親戚を・・・多くの者の命を奪う命令を出していたことが心苦しかった。


「そうだ、今ここでロザリオ王女様の手で・・」


「何を言っているのか私には分かりません。

 王女とは誰のことですか、国の無い王女など存在しないも同じ。

 私はロザリア、ただの女の子です。


 今の私を敬う必要も恐れることも、ましてや詫びる必要もありません。

 私は子供でしたザガール国の人たちのことも何も知らずに誤解していました。

 今の私は、私の信じる生き方をしたいと思っているだけです。


 今までを反省するなら、今からの生き方を考えていけばいいこと。

 全ての戦いが終わった時に全てを清算するときも来るでしょう。

 それまでは自分に恥ずかしくない生き方をするだけで良いのではないでしょうか?」


 イグルは何も言えなかった。

 その年に似合わない言葉こそ、彼女が王族である証拠であると思った。


「イグル、これで大丈夫だ」

 ラミアが処置が終わったことを伝えた。


「まさか、そんなに早く・・・」

 驚くことに火傷も腹の大けがも治っていた。


「おお!!本当にあなたは女神なのか?」

 いくら魔法があると言っても、この世界でここまでの回復能力を持つものは稀である。

 驚くのは無理もなかった。


「さてグレス君、では治療に掛かろうか」

 ラミアはグレスの悲惨な腕を持って治療に掛かろうとしていた。


「よく頑張ったわね、ちゃんと動くように治療してあげるから。

 そうそうご褒美は何が良い!!」


 そう問いかけるラミアはグレスの顔ギリギリに顔を寄せた。

「えっ?ご褒美?」


「そう、皆を良く守ったわ。

 だからご褒美をあげる!!」


 ラミアはそう言いながら唇を近づけて来た。


 真っ赤な顔になるグレス、こういうシチュエーションには慣れていないようだった。


 そこへミザカが割り込んできた。

「私がグレスにご褒美を上げますから、大丈夫です」

 そう言うとグレスに口づけをした。


「ふふふふふ」

 笑うラミア・・


「ラミア様もお人が悪いです・・」

 ミザカは真っ赤な顔になりながらラミアに恨み言を言っていた。


 ほぼ壊滅的なグレスの腕を治すには少し時間が掛っていた。


「応急処置はこんな感じね、どうかしら?」


「信じられません腕が動く、ありがとうございますラミア様」


 それを聞くとラミアは安心したような顔になった。


「さてグレス君、では私から貴方にご褒美を上げましょう」


「えっ、これ以上は頂けません」


「駄目よ、受け取りなさい。こんな無茶をしなくて良いように、良いものをあげるわ」


 ラミアが取り出したもの・・・

 それはグローブだった。


「このグローブは周りに結界が出来るのよ。

 貴方がちゃんと火炎魔法を飛ばせるようになるまでこのグローブを付けて魔法を使いなさい。

 どんなに強い魔法を出しても腕は守られるわ」


 グレスはグローブを付けると魔法を使ってみた。

 大きな炎を出す魔法を使っても全く腕には影響はなかった。


「凄い、これで俺も魔法で戦える、ありがとうございます」


 だがその時空が大きく割れて大きな火の玉が近くに落ちた。


 その後、熱い熱風が吹き荒れた。

 火の玉が落ちた辺りは真っ赤になって高熱を発していた。


「あれってジェイ様が戦っていた当たりじゃありませんか、ジェイ様は大丈夫でしょうか?」


 ロザリア王女が心配そうな声を出すと。


「そうじゃないわ、ジェイが遣ったのよ・・・、相変わらずね。」


「えっ、そうなんですか?

 でもジェイ様がやったってどうしてわかるんですか?」


「だって爪が・・・、いえ彼の剣がそう伝えてくるのよ」


 理由は分からないがラミアがそう言うならそうなんだろうとロザリア王女は思った。 


 ◆   ◆


 それとは別にその音や光、熱を受けたもの達が居た。

 ゴーズより派遣された、ドングルとSTD13(砂漠の稲妻竜サンド・サンダー・ドラゴン)を連れた支援隊だった。

 だがドングルと数名の部下は彼らはその空から落ちて来たものを恐れ、直ぐにその状況をゴーズに報告し始めた。


 STD13(砂漠の稲妻竜サンド・サンダー・ドラゴン)は火の玉にも驚くことなく、ドングルと部下の様子を見ていた。


 ドングルたちのあたふたした様子を見たブロスはその時思った。


(チャンスだ・・・)

 やがてブロスはSTD13へ命令を出すのだった。

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