明日への旅立ち④
ブロス達が会議を始めた時俺は外にいた。
結界の外で飛行船を創造するためのテストを色々していた。
飛行船を作る。
そんな材料はない。
この世界にそんな科学力も無い。
でも魔法はある。
ただし魔法は微力であり二千人もの人を運ぶのは無理だろうな。
世界の理は一つなはずだ。
科学はこの世界でも通用するはずだ。
魔法を切っ掛けに科学で後押しすれば良いはず。
俺は今までそうして来た。
そうさ俺が、今此処に存在する理由はそこにあると思う。
さて、実際に飛行船を作り始めよう。
元はラミアの爪であるこの剣は、思う形の武器になる。
では元の世界の戦車を念ずれば戦車になるのだろうか?
実際にやってみたが本物の戦車には成らなかった。
だが戦車のような形にはなった。
防御力は強いが、戦車ではない戦車の形をした「もの」だった。
つまり、この世界にないキャタピラや砲は思うように動作しない。
結局イメージしたものは別世界では現実のものであっても、そのままこの世界では実現は出来ない。
ならば形だけでもと考えたものの、案外飛行船の旅客室は小さい。
そんな時、子供の時に見たSFアニメを思い出した。
そうだ、二千人の人間を収容できる宇宙戦艦がちょうど良い。
ということで宇宙戦艦のイメージを持って変形させることにした。
これなら居住スペースなんかも充実できると思う。
尤も計算上千キロ程度の距離なら飛行できるほどの速度なら一日も掛からない。
そうだ、今回は旅客スペースは座席程度で済ませよう。
ただし、推進装置はないだろう、別に考えなければならない。
当たり前だけど亜空間飛行とかワープはSFだ。
まだ元の世界でも科学は追いついていない。
当たり前だな、俺にも分からんからな。
大体、剣はこの世界にないものは作り込んでくれない。
それと、戦艦には作り出してくれないだろうから、必要最低限の部屋と食堂、トイレやシャワー等設備を備えることにした。
空調や水は何時も結界の中でやっている方法と同じ方法をになる。
剣が創り出した宇宙戦艦に俺が付け足すのだ。
そして俺の科学力でこれを飛ばすことになる。
イメージが出来たところで俺は剣を戦艦のイメージの形になることを念じた。
それは最初『剣』だった。
(最初はラミアの爪だけど・・・)
剣は地面に転がると伸び始めた。
やがて膨らみだんだん船のような形になって行く。
念じておいてなんだが、本当にこんなに大きくなるものだと驚いた。
やがて、小さな剣は本当に俺が子供の頃見たアニメに出てくる巨大な宇宙戦艦になった。
ただし、巨大な宇宙戦艦の形をしてはいるが宇宙戦艦ではないその乗り物。
もちろんそれはこの世界では誰も見たことが無かったものだった。
「これは船なの?
でもここは砂漠よ?
これ中を見ても良い?」
傍にいたラミアの口から沢山の疑問文が出て来た。
彼女の「知りたい」という知識欲を掻き立てたようだ。
「中はまだ何もないよ」
驚いていたのはラミアだけでは無かった。
ザガール国の多くの者たちが物珍しそうに見に来ていた。
そしてロザリアとサンクスも騒ぎに気付いて出て来ていた。
だが結界の外に大勢いると発見される危険性があるので結界の中に戻って貰うように指示する。
残っているのはラミア、ロザリアとサンクスの三人だった。
彼らは俺の作業を興味深そうに見ていた。
次に精霊石ディスクを取り出し推進装置の作り込みを始めようとした。
「ジェイ様、おおっ、これは大きな船?ですか?」
ブロスとイグルがやって来て俺に声を掛けた。
先ほどから会議をやっていたブロスだ、まさか見物ではあるまい。
「お二人揃ってどうしました?」
ブロスは後ろにいたもの達を手で招き俺達に見せるようにした。
「ロザリア姫と皆様に出発のご挨拶をしようと思いまして」
よく見ると賢者達とザガール国の数名が一緒だった。
「ありがたいことに、この砂漠にて隠密行動が得意なザガールの兵達にご協力をお願いすることが出来ましてね」
イグルがブロスを古い友人のような顔で見ながらザガール国の人たちを紹介する。
「我々も奴等に『特一部隊』へ召集されているザガールの者を連れ戻さねばと考えておりました。
そこにこの作戦です、我々も協力するのは当然です。
この者達は砂漠の隠密行動をすることに長けた者達です。
賢者様達を目的地まで安全にお連れし、その後の作戦を成功させるために支援に尽力することでしょう」
砂漠が多いこの地方では砂漠を制する者が支配権を持つ。
サンブルド王国は色々な所から砂漠の戦闘に長けたものを募り戦闘部隊を創生し試行錯誤を繰り返していたようだ。
その中にはザガール国の有能な者達も含まれていた。
その招集された者達を助けるためにザガール国の有志が集まったという訳らしい。
本当に不思議なことだ。
今は共同戦線で戦う二つの国。
いつから、こんなに仲が良かったのだろうか?
いや、本当は仲など悪いはずなど無かったのだろう。
少数の支配層により多数の人がいがみ合わされる世界。
「そうか何処にでもあるんだ」
なんとなくだがそんな言葉が口をついて出た。
暫くするとロザリア王女の前に賢者達が膝間着き並んだ。
その後ろにはザガール兵の十名が並ぶ。
「ロザリア王女様、我々は奪われた民を再び誰一人欠けることなく貴方様の前にお連れいたします」
その言葉を聞きロザリア王女はにこやかに微笑み、だが心配そうに返答する。
「期待しております。
ただし誰一人欠けることなくと言うのは其方たち『賢者』を含めてです。
私には其方たち『賢者』の力が必要なのです。
必ず無事に帰ってきてください」
その言葉を聞くと八人の賢者たちは頭を下げた。
「「はっ!!」」
ブロスが出発の合図をする。
「野郎ども蟲どもを全滅させ、お前らの力を思い知らせてやれ」
こういう時はブロスも野蛮ともいえるような言葉で話す。
そう言えばブロスは仲間たちを愛情をこめて呼んでいた。
「STD13」
それは稲妻を纏う竜の名を持つ十三人衆
勇敢で知恵ある者達。
やがてザガール兵と彼八賢者はダバハに跨った。
彼らは大きな計画を遂行するため走り始めた。
そして彼等は砂の中に沈んで行った。
砂の中を進む彼らを目で追うことは出来なくなった。
作戦によると八賢者たちは二つに別れる予定だ。
一つのグループはサンブルド王国内のサンバンカ領へ向かいグレン達を攻略する。
もう一つはサンブルド王国外れの抵抗軍クラバスの拠点に向かい民の救出を目指す。
彼らによる大きな長期間に及ぶ作戦が開始された。
さて、今度は俺達の番だ。
出発を急ごう。
だが俺の索敵に反応があった。
あいつらだ。
俺をこの世界に召喚した者達・・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます