ツクヨミに願いを②

 ここは何処だ?


 ・・・・・


 そうだ、我は魂の輪廻に還った筈だ。

 では、なぜまだ過去の魂の記憶があるのだろう?


 この魂の記憶・・・


 ある日、我はあるじとなる者と出会った。


 始め何の目的もない我はあるじと共に歩む内にあるじの願いを知った。


 その願いを叶えることが面白そうだった。

 そこで主の願いを叶えるためにあるじと共に旅を続けた。


 最終的に多くの辛苦を乗り越え、やがてあるじは願いを叶えた。


 叶ったのはあるじの願望だが我は幸福だった。

 我は、その時はっきり分かった我の願望も叶ったのだと。


 だがそれは別れの時だった。

 唐突にあるじは神になり地上から消えたのだ。


 話すのを忘れたが、旅の始まりにあるじは我に名前を付けてくれた。


 『ツクヨミ』という立派な名前だった。 


 あるじの願いを叶えた達成感とあるじを失った消失感からか、我の役割は終わったと感じ自然に還ろうと考えた。


 あの時、我の体は錆て土に還り、魂は魂の輪廻に還ったはずだ。


 不思議なことにあの時と同じ我が・・・今ここに在る。


 我の手を掴む者、お前は誰だ・・・・


 なんだよく見ると、まだ少女ではないか。


 お前が、我をまたこの世界に転生させたのか?


 お前も願いを叶えたいのか?

 お前が望むなら、お前の望みを叶えてやろう。


 何故って?

 簡単なことだ。


 我には分かるのだ。

 あれから幾年月経ったかは知らない。

 だがお前の願いを叶えること、それが神となったあるじの願いなのだろうから。


 ロザリア、お前の願いを言うが良い。


 我の名は『ツクヨミ』、お前の願いを叶えるものだ。

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