俺達は「砂漠の稲妻竜の十三人」
フェスリーの怒りは頂点に達していた、その炎は強大になり周りを灼熱地獄に変えていった。
「なんだ、この暑さはベアラの結界と温度調節が効かないのか。ベルトガ、魔法に問題ないのか?」
ベルトガも汗を拭きながら必死で調整していた。
「精霊石からのエネルギーも問題ありません。逆に結界を超えて灼熱地獄のようなこのような温度になるのは想定外ですので対処できないのでしょう」
汗が止まらなくなっていたクレストは冷却を最大限にするように言った。
「馬鹿目、あのフォグレスの炎の温度にロザリアも耐えられまい。それが証拠に蹲ったまま全く動かん。ロザリアは今頃丸焦げになっているだろう。所詮制御できない魔獣などに乗っていたのが運の尽きだ。ともかく逃げる準備をしろ」
ツクヨミに手を掛けたロザリア、その目には決意が満ちていた。
その決意を示すためだろうかロザリアは大きな声で叫んだ。
「『ツクヨミ』お願いです、みんなの未来のために悪意を刈り取って下さい、責任はすべて私が持ちましょう」
ロザリアは灼熱のフェスリーの怒りの炎の中に立ち上がった。
『我が
そしてロザリアの手に持った刃の無いツクヨミは、長く伸び始める。
それはロザリアの伸長を超える棒状になった。
やがて棒の先に弧を描くように刃が現れた。
『
その大鎌を感じ、お預けを食らっていた子犬状態であるフェスリーは最後の命令を待っていた。
すべてを見ていたクレストとベルトガは口もきけないほど恐れを覚えていた。
大きなフォグリスの灼熱地獄のような炎の中に立つロザリア王女。
その顔には表情は無かったが、あえて言うなら悲しみを隠し持った顔であるかのようであった。
そしてその手には大鎌が顕現した。
「「死、死を司るヤムニ神の持つ大鎌『サバズグル』ではないのか?」
「俺たちは間違っていた、本当に恐ろしいのは。。。本当に恐ろしいのは。。。ロザリア王女だったんだ」」
クレストとベルトガは恐れと絶望という感情が渦巻いていった。
◆ ◆
丸いボール状になったイーグレット。
散発的に攻撃をしてくるが大したことはない。
「お前たちの負けだと認めて出てこい」
返事は無い、何らかの大きな攻撃を準備中なのかは不明だ。
イーグレットの最大防御なのだろう、こちらの攻撃も全く効いて無いようだ。
もっと究極の攻撃を仕掛けた方が良さそうだ。
俺はラミアに貰った剣を空高く飛ばした。
剣はやがて空を超えて成層圏を超えて宇宙に達していった。
最後通告を奴らに向かって大きな声で叫ぶ。
「最後通告だ、後5分待つ。五分経って降伏しない場合君たちの命は保証しない」
だが奴らは全く何も返答をしなかった。
(みんなのところに応援でも行こうかな?)
もっとも隙を見せるとどうなるか分からないのだ、俺はその場で五分が経過するのを待つことにした。
◆ ◆
ゴーズは第一騎士団のストレーンに命じた。
「砂漠戦闘が得意な部隊があっただろう。奴らをすぐに編成し、このドングルの配下としてすぐに出陣させろ」
次の出陣は少し後で、順番として第一騎士団だと思っていたストレーンは驚いた。
「
ゴーズはいちいち答えることに気が立っていた。
「そうだ、その13とか言う奴等だ、ロザリア王女捕獲部隊として出陣だ、5分以内に準備をしろ」
そう言うとゴーズはドングルを連れて作戦会議だとその場を離れた。
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セグリア王国には、第一騎士団と第二騎士団、それと第三騎士団までは王族、王城、王都という防衛区分を持つ騎士団である。
それ以外に王都以外の各領土を守る騎士団や辺境警備任務を持った騎士団があり、やはりナンバーで呼ばれていたが、占領後この騎士団は雑兵扱いで一つに纏められていた。
その中に第十三特殊騎士団として編成された砂漠戦闘部隊エス・ティー・ディー・サーティーンが存在していた。
砂漠特化のバリーブという砂漠馬を操る彼らは、セグリア王国があった時には、砂漠の暴走族とも言われていた。
なお、STD13(エス・ティー・ディー・サーティーン)それは稲妻(雷)を纏う竜(サンド・サンダー・ドラゴン)の名を持つ十三人衆という意味である。
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ストレーンは急ぎSTD13(
その途中ヤグ(ロレッタ侯爵)から夢通信が入る。
(ストレーン、ロザリア王女が現在戦闘中のようです、それもザガール軍のデザート基地での戦闘だということです)
ストレーンは信じられなかった。
(えっ?、そんなことは信じられません。敵の真っただ中ですよ、数千人もの相手と戦闘中なのですか?王女はどんな戦力を持っているというのですか?確かあの拠点にはゴーレム使いが5名以上いるはずです)
だがストレーンはSTD13への支援要請があったことを思い出した。
(私にはSTD13の出陣要請がありました辻褄は合います。戦闘中なのは間違いはなさそうです、)
(そうですかSTD13に出陣命令ですか、私にも今はどういう状況かは分かりませんが、現在も戦闘が続いているようです。STD13にまで要請があるということは逆に王女は優勢ということですね)
(ただSTD13は正義感が強いのです、王女を目の前にすると助けに入るかもしれません、だからSTD13に蟲が紛れ込んでいると内部からの裏切りに遭うかもしれません、それが心配なのです)
(確かに前回の追跡の失態から今のところ二匹の蟲に寄生された者が現在も判明していませんが、STD13への蟲の可能性は低いとは思います)
そしてブロスのところへ着いたストレーン。
「ブロス、出陣だ、準備しろ」
「ふん、今更、俺達に何をしろと言うんだ。どうせ俺たちは雑兵なんだぜ」
「ロザリア王女捕縛命令だそうだ」
傍にいたSTD13のメンバーも驚いた。
「「「ロザリア王女!!」」」
ブロスはドスの利いた声でストレーンに対して脅すように言う。
「やり方は俺たちに任せてくれるんだろうな」
「やり方って?ドングルも居るんだぞ?命令なんだぞ?・・・」
少し考えてストレーンは気が付いた。
「そうか、お前は・・・、もちろんだ、だが家族のこともある無茶をするなよ」
ブロスには蟲が取りついては居ないことに気が付いたストレーンはヤグ(ロレッタ)に夢通信する。
(ブロスは蟲には侵されていないようです、ロレッタ侯爵様、彼に一度お話しいただけませんか)
ブロスはカーマインを呼ぶと準備を命じた。
「おい、カーマイン、バリーブの準備だ、野郎どもも準備にかかれ」
その時、突然ヤグからの夢通信がブロスに繋がりその瞬間ブロスの顔が強張る。
「なんだ、声が頭に響く・・」
(ブロス聞こえますか?、ヤグ、いいえロレッタです、驚かせて申し訳ありません。あなたは考えるだけで話が出来ます)
(こりゃ驚いた、聖魔法ですか・・、俺はこの任務は絶対に受ける、そうさ俺たちはロザリア王女を助けるんだ、たとえ家族がどうなっても、そうさ妻や子供たちも分かってくれるさ、唯一蟲が仲間の誰かに取りつかれていないかだけが心配だ)
(なぜ家族を危険に晒してまでロザリア王女に尽くしてくれるのですか?)
ブロスの頭の中には、国を復活させるために、多くの昔の仲間が反乱軍として今も戦っていることが思い出された。
(国を復活させるため、それだけは誰にでも出来ることではないからです。国は一人の勇者や一組のパーティなんかでは復活できない。だって国は多くの役割を持った人で出来ているからです。王族の存在意義はそれほどに大きいと認識しました)
そこには反乱軍がいくつかの戦い勝利するが国を復活させるまでに至らない状況が何度もあった、どんなに優勢でも国を復活させるための何かが足りなかった。
(ロザリア王女には未来を託せる、つまり俺達の命を掛けるだけの価値があるのです)
ロレッタにはロザリアを思うブロスの心が嬉しかった。
(決意は固そうですね、分かりましたあなた達の家族のことは私が何とかしましょう。ただ確率は少ないのですがあなた達にもの中にも蟲が取りついている心配もあります、無理をしないでください)
(確率か少ない、そうでしょうねこんな雑兵など・・・、でもありがとうございます、それだけでも分かれば百人力です、ロザリア王女は、お任せください)
五分で準備というのもクリアし、準備完了したSTD13のメンバー。
ドングルは出発の合図をした。
「行くぞ!!」
ブロスは全員に合図する。
「グアロルド!!」
サーティーン全員が驚いたそれは「歌うぞ」という彼ら十三人だけのスラングだ。
そしてその歌は彼らだけの隠語で歌詞が作られており彼ら以外に意味は分からないがセグリア王国賛美の歌である。
蟲は呪術者に従順だった、つまり蟲に取りつかれた者にはそんな歌は歌えないだろう。
「ガウア~サ~ダ~バ~♪」と歌い始めるブロス。
その後からメンバー全員が歌い始めた。
「サバルゾ~グアイカ~♪」
全員での合唱になった。
「うるさいぞ!!」
そうドングルが叫んでも「「「これが無いと砂漠を爆走するための調子が出ないんだ」」」などと言って、誰も止めなかった。
(ロレッタ侯爵様、行ってくるぜ、そうそう全員蟲には取りつかれておりませんでしたぜ。そう確率が少ないと言われたそのお言葉のおかげです。俺達はSTD13、
ブロスが片手を上げると、全員が片手を上げる。
「「俺たちゃ!!STD13、誰にも負けない十三人の稲妻竜さ!!」」
その十三人はバリーブに跨り勇ましい歌声を響かせ砂漠の入り口があるザーケンへ疾走していった。
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