肉球の勇者~子猫、異世界に転生しました!

ひとえあきら

paw-01 コロコロ - 01

 あっ、と気付いた時には遅かった。

 車が急停車するブレーキ音。身体中に走る鈍い衝撃。反転する風景。暗転する意識。

 いつも彼が捉えようとして為しえなかった鳥のように空を飛んでいる、と思う間もあらばこそ。

 とん、と軽い音を立てて道路に落ちたその小さい身体は僅か3ヶ月の生を終えていた。


=^・×・^= =^ΦωΦ^= =^・△・^= =^◎ω◎^= =^・△・^= =^ΦωΦ^= =^・×・^=


 ボクの名はコロコロ。

 身体が丸まっちくて転がるように走るのでこんな名前になったらしい。

 可愛い盛りの今は良いけど、オトナになったらイケメンな名前に変えて欲しいところである。

 茶虎の短毛短尾という、まぁ何処にでもいる感じの猫だ。

 鯖虎のママとは毛色を除けばそっくりだとキキぃは言っている。先がちょっと鈎型になった尻尾まで。

 キキぃはもう1歳のオトナなので、身体はママより二回りくらい大きい。今のボクより小さい頃にここに流れ着いてきて、ママに育てられた。黒毛の短毛長尾で鼻の下から下顎の裏と爪先だけが白い。ちょっとお洒落よね、とはママの評。一見コワモテだけど、ボクを育ててくれたイクメンさんだ。

 あー……もっとキキぃとも遊びたかったなぁ……ぃは長い尻尾を自在に振り回してボクの遊び相手をしてくれたものだ。

 それに、ここの家のご主人の"わしゃわしゃ"は絶品で……お腹を"わしゃわしゃ"されているともう何も考えられなくなるくらいの快感なのだ。キキぃなんて、ご主人の声がすると飛んでいって足下でお腹向けて転がるくらいお気に入りだもんね。

 その"わしゃわしゃ"も、もうしてもらえないのかぁ……


 ――そういえば、ボクは今、何処にいるんだっけ?

 さっきまでの道路とも、いつもの家の軒下とも違う。

 そもそも今は昼間なのか夜なのか。

 周りには何も見えず、何の気配も感じない。

 さりとて真っ暗という訳でもなく、目は薄ぼんやりと見えている。

 車に撥ねられた筈の身体も、特に異常は無いようなのだが……

 じーっ=^◎ω◎^=と目を凝らしていると、ずーっと先の方から光が差している。

 取り敢えず、あっちへ行ってみよう。

 あぁ……ママやキキぃやご主人にまた会えるかなぁ……。


=^・×・^= =^ΦωΦ^= =^・△・^= =^◎ω◎^= =^・△・^= =^ΦωΦ^= =^・×・^=

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