paw-08 狩りに行こう! - 03

「さて、狩り場に着いたんだが――」

 いつもは余裕綽々といった感じのハーシィが、珍しく冷や汗を流している。

 モンシャは顔面蒼白で今にも腰が抜けそうだが、彼に引っ付いて(( ;゚Д゚)))しているコロンのお陰でどうにか立っていた。

 ――誰か、この状況を説明して下さい!! 


=^・×・^= =^ΦωΦ^= =^・△・^= =^◎ω◎^= =^・△・^= =^ΦωΦ^= =^・×・^=


「まぁ、ここの森はそんなにデカい野獣も居ねぇからよ。そこの坊主でもまぁ危ねぇこたぁねぇだろ」

「まぁね。初級教室の訓練場みたいなもんだしね」

「訓練場って何ですか、ご主人?」

「あぁ、ここの森はせいぜい野猿や野犬くらいしか居ないから、騎士課程や魔法課程の学生が訓練と食料調達を兼ねて来ることも多いんだよね」

「そうそう。で、俺ら――俺とこいつモンシャとその他合わせて4人のパーティが、当時の歴代最速ノルマ達成記録を出したんだよな」

「あれって、まだ破られてないんだっけ?」

 僅かに蔭のある表情で訊ねたモンシャに、ハーシィは微かに眉を上げて、

「俺が聞いた限りじゃそうみたいだな。つまりだ、坊主、お前の"ご主人"はかなりの腕利きってこった。お前、見る目あるぜ?」

「ボク、ボーズじゃないもーん! でも、やっぱり流石ですー! ご主人は凄い人だったんですねー!」

「……まぁ、学生時代の話だから。今はご覧の通りだしね」

 たはは、とまなじりを下げて苦笑するモンシャにハーシィが何か言いかけた刹那――彼の雉虎の耳がぴく、と動いた。

「ヤベぇ! 俺としたことが! 囲まれてやがる!」

 え、とモンシャとコロンが辺りを見回すと、鬱蒼とした木々の間から野犬の群れが次々と溢れ出してくる。

 そう。まさに"溢れ出す"としか言いようが無い程の数だった。

「――しかも多いだけじゃない。かなり大型だね」

「あぁ――野犬どころか、あの辺の群れなんざ小型の虎くらいはあるぜ」

「ご、ご主人~……(( ;゚Д゚)))」

 コロンは半泣きでモンシャにしがみついている。

「なーに、いざとなりゃ坊主くらいはなんとかするさ。不幸中の幸い、お前の"ご主人"もいるこったしな!」

「それにしても、こんな大型の野犬の群れなんて――」

「だな。こんなのがウロついてりゃ、ギルドにも情報が回ってなきゃおかしいんだが」

「何処か遠くから移動してきたのかな」

「だとすりゃ、俺らが名誉ある一番槍ってこったな、ははっ!」

 ハーシィに僅かながら軽口が戻ったのは、モンシャの顔つきが彼のかつて知るそれに戻りつつあるからだろう。

 王都のそれに比肩すると言われたこの地方の訓練学校、その魔法課程で歴代最強と言われ、ハーシィ達とのパーティでは今後破る者は出ないとまで言われた卒業試験のノルマ最速達成記録を打ち立てた、その頃の彼に。


=^・×・^= =^ΦωΦ^= =^・△・^= =^◎ω◎^= =^・△・^= =^ΦωΦ^= =^・×・^=

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る